読切(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
「久しぶりに、渋谷に降りた。 普段は、地下鉄の乗換えだけで、 スクランブル交差点まで、 たどり着く事はない」
〇ハチ公前
「ハチ公だ。 懐かしい・・・。 そう言えば、 学生時代、ここで待ち合わせしたな」
〇ハチ公前
野々村めぐみ「こっちこっち。 桜坂さーん! ここにいますよー」
〇ハチ公前
桜坂浩一(過去)「・・・もう、夕方か。 ランチ食べて、映画観よう、なんて約束。 会えないなんて、フラれたんだな。結局」
〇ハチ公前
岡 メグ「桜坂先輩のバカ・・・。 ずっと待ってたのに。 せっかくオシャレしたんだよー」
〇ハチ公前
桜坂浩一「あの日、結局は、メグとは会えなかった。 携帯電話もない時代、 メグの自宅にイエデンする勇気もなくて」
〇ハチ公前
野々村めぐみ「桜坂さん・・・。 どこ見てるんですか? ・・・私は、ここに居るのに・・・」
〇ハチ公前
桜坂浩一「あっ。めぐみ君!」
野々村めぐみ「どうしたんですか? さっきから、呼んでるのに」
〇ホテルのレストラン
桜坂浩一「さっきは、ゴメン。 昔の事、思い出してね。 さあ、食べよう。 デザインコンペ、おめでとう」
野々村めぐみ「昔の事? (今の私は見てくれないの)」
桜坂浩一「昔、ハチ公前で、待ち合わせして、 会えなかった人がいてね。 その事、思い出したよ」
野々村めぐみ「その会えなかった人って、 もしかして、 桜坂さんの好きな人だったんですよね」
桜坂浩一「え」
〇ホテルのレストラン
桜坂浩一「そ、そんな事より、さあ、食べよう。 冷めちゃうぞ」
野々村めぐみ「はい。うん・・・美味しいです! (そんな事って・・・恋話はオジ様世代は恥ずかしいのかな)」
〇シックなバー
野々村めぐみ「・・・今日って、私がデザインコンペに選ばれたお祝いなんですよねー」
桜坂浩一「ああ。 凄い事なんだ。 実は、僕も昔、チャレンジしたけど、 最終選考で弾かれた・・・」
野々村めぐみ「だったら・・・もっと飲んでいいですか!」
桜坂浩一「まぁ。 でも、めぐみ君は、お酒・・・強いなあ」
野々村めぐみ「はい!」
桜坂浩一「でも、飲み過ぎるなよ」
野々村めぐみ「わかってますって! (酔い潰してお持ち帰り、なんて考えないのかな)」
〇シックなバー
岡 メグ「起きて、桜坂君!寝てるよー。 ダメよ、若い女の子、こんなに酔わせて・・・」
桜坂浩一「え。 あれ、メグ・・・⁈」
岡 メグ「桜坂先輩は、もうオジ様世代なんですから、 ちゃんとエスコートしてあげないと!」
桜坂浩一「うん。分かってます。 でも、 あの日は、ゴメン。 会えないまま、イエデンも出来なくて・・・」
岡 メグ「そうだよー。 まったくさ。 今は、良いよねー。 スマホからメールして、 簡単に女の子、誘えるもんね」
桜坂浩一「ち、違うよ。 今日は本当にお祝いなんだよ。 めぐみ君は、凄いコンペ入選したから」
岡 メグ「はいはい。 ちゃんと送るのよ」
桜坂浩一「・・・」
岡 メグ「ねえ! 寝てる! 起きろー!」
〇SHIBUYA109
野々村めぐみ「(お、送られてっちゃってるけど、私、大丈夫かな・・・) 大丈夫ですって! ちゃんと一人で、帰れますって」
桜坂浩一(過去)「せっかく会えたんだから! 今日はどうもありがとう」
野々村めぐみ「桜坂さん? まあ、いつも職場で会ってますけど・・・ 二人っきりは、初めてですし、 ・・・こちらこそ、ありがとうございます」
桜坂浩一(過去)「会えなかったじゃん。づっと。 でも、こうして飲めた! バンザーイって気持ちです!」
野々村めぐみ「ですね。 私もバンザイなんです! 桜坂さんと、お食事出来て。 でも、急に若くないですか! 若い!若返ってる!」
桜坂浩一(過去)「え⁈」
野々村めぐみ「若いですって! まるで青春時代ですよー」
〇渋谷のスクランブル交差点
桜坂浩一「今日は、 僕の失恋記念日。 だから、渋谷に降りて妄想する」
野々村めぐみ「妄想?」
岡 メグ「妄想って⁈」
桜坂浩一「憧れの渋谷では、 結局、好きな女の子には、会えないで、 昔も今も、一人右往左往するだけ」
野々村めぐみ「そうだったの・・・ 私の存在って、桜坂さんの妄想だった? (だったら、ちゃんとモーションかてもよかったな。なんちゃって)」
岡 メグ「桜坂先輩! 私は妄想でも、勝負下着で、気合いれてたんですよ・・・」
野々村めぐみ「あっ。メグさん、それなら、私だって、 桜坂さんの好きな紺色の下着ですよ! (知ってるんだから)」
桜坂浩一「勝負下着に、 紺の下着・・・いいねー! メグにめぐみ君、 本当にありがとう!」
桜坂浩一「円谷町の坂道は、 結局、登った事はないけれど、 今日はとても楽しい時間でした。 ありがとう!」
〇渋谷のスクランブル交差点
岡 メグ「さよなら。桜坂先輩! ずっと好きだから!」
野々村めぐみ「今夜は、 おやすみなさい!桜坂さん! 明日も事務所で会えますもんね!」
桜坂浩一(過去)「また、いつでも、渋谷で降りて、 訪ねて下さい! 過去の桜坂から、今の桜坂へ! お互い頑張ろうぜ!」
固定電話って、同性の友達ならともかく、異性からってかけづらかったですよね。笑
待ち合わせとかも少しずれたらわからなくなったり。
今の携帯電話は本当に便利です。
過去と未来、どちらを取るかって言われてもどちらも捨てがたいです。どちらも大切ですからね。
過去は今を生きる糧として、未来のためにあるものなのかもしれませんね!
私自身青春時代を彼と同じような、スマホがまだないイエデン時代を過ごしたので、読んでいてとても懐かしい気持ちになりました。恋は今よりずっとスローに進んだし、選択肢が少ない分ピュアに想いはつのったな。妄想デート、確かに若返りに良さそうですね。