渋谷駅前にて謎解きに挑戦(脚本)
〇渋谷駅前
  ここは渋谷駅前。
  巨大な電光掲示板には今売り出し中の歌姫の曲が流れていた。
  「はい、四摩谷です。五叉路になっているスクランブル交差点の中央? そこに宝物が? 駆ける? 走れってこと?」
  捜すなんて、不可能だ。
  五叉路の道、世界で最も混雑していると言われるこの場所に人がいなくなる時間なんて、あるのか。
  「うん、二ノ宮だよ。ハチ公、知っているけど・・・そこにお宝があるって? 駆ける・・・この周りを走るんですか?」
  捜すなんて、無理だよ。
  いつだってあそこには人がいるのに。
  「八潮です。モヤイ像? 昔、ルパン三世に盗み出されたヤツ? また盗めって? あのね、俺はルパンじゃないの。
  え、そこに宝があるって? 駆けてみろって、何で?」
  盗んで走り出すなんて出来る訳ない。
  本物の怪盗でもない限り。
  渋谷・・・この街は昼も夜も多くの人で賑わう。
  若者の街、と言われるがビジネスマンも家族連れもいる。
  昔からある街、そして様々な逸話がある街。
  そういえばほんの少し前、人々の連絡手段がまだ少なかった頃、この街を表す言葉を数字で「428」と書かれた時代があった。
  ポケベルという機械である。
  これは、かつてポケベルも製造していたとある企業が企画した宝捜しゲームのお話。
  そのお宝とは、現在各所で流されているプロモーションムービーで日本中の者が知るようになった
  歌姫「EYE」のファーストコンサートのチケット。
  しかも枚数はたったの一枚。
  EYEは正体不明、経歴が一切わからない、もしかすると精巧なCGではないかと噂される歌姫だ。
  歌い方やしゃべり方までも変化していく。
  もし彼女が人工的に創られた存在だとしたら、彼女を操作している者が次々と変わっているとしか思えない。
  ともあれ、そんな彼女への興味を持つ者は少なくない。
  今回のコンサートチケットが当たるゲームにも多くの応募者があった。
  その中から「428」に関連する名前を持つ者が抽選で三名選ばれ、渋谷に集合させられた。
  それぞれ集合場所を違え、さらにお宝の場所について全く違う連絡が届いた。
  それが先ほどの四摩谷の「スクランブル交差点」、二ノ宮の「ハチ公」、八潮の「モヤイ像」の場所なのだ。
  そんなメッセージが届いた後に、主催者から今まさに電光掲示板に流れているEYEの最新曲の歌詞が彼らの携帯に届いた。
  いちごタピオカ
  キスとさよなら
  昨日の笑顔に負け
  
  明日のてんきを
  待つ夜空
  次はどこに行くか
  わがままな私の
  ちっちゃな嘘
  もう許してくれた
  
  そしてデジタルな時を
  とんでもなく面白く
  動き出していくこころ
  きっとうしろ姿は
  イケてる女になったはず
  だからもっと笑いたい
  捜してじぶんを
  ヤバイほどはしゃいで
  ずっと待ってしんじている
  そのメッセージを受け取った三人は、その歌詞の意味をほぼ同時に理解した。
  そして丁度EYEのプロモーションが流れている電光掲示板向かい、驚愕に震えながら視線を向けた。
  三人が電光掲示板に目を向けたその瞬間、EYEのムービーがバグったように映像が乱れ、意味不明な文字が映し出された。
  じあhrひあhりあふええjねうxぽj7つえいぇ09rたhrあl8んっけぎpkり5じぇいgg93てrkp49rhあか3えは
  るあけtr0いえあ^k3rt9あls8おとうきとくじぇお8いとおきおきまいえいろくおいくいきくぶいおいこえ8r9おい8え
  だ
  さて、ここでひとつこのゲームの謎を明らかにしよう。
  EYEの歌には、不自然にひらがなと漢字が入り混じっている。
  謎の解き方は「428」
  
  この歌に秘められた謎を知りたい、あるいは答え合わせをしたいのならば、次の頁に進んでほしい。
  EYEの歌詞を一行ごとに「4」「2」「8」番目の文字を、以下のように読んでほしい。
  4いちごタピオカ (た)
  2キスとさよなら(す)
  8昨日の笑顔に負け(け)
  さて、どんな言葉が浮かんだかな?
  最後の意味不明な文字列についても解き方を示しておこう。
  四摩谷はスクランブル交差点(五叉路)で駆けろ(かけろ)と言われた。
  
   4×5
  二ノ宮はハチ公のところで駆けろ(かけろ)と言われた。
  
   2×8
  八潮はルパン三世が盗んだモヤイ像のところで駆けろ(かけろ)と言われた。
   
   8×3
  20、16、24.
  一頁に表示されている文字数は「60」
  さて、次は誰が謎を解いてくれるだろうか。
  「ねぇ、知ってる? EYEのコンサートチケット。限定一名だって。最初に謎を解いた人が行けるらしいよ。それでね・・・」
  「EYEのいる場所に『連れて行って』もらえるんだって」



小説の中に暗号文って、ミステリーのようでおもしろい試みだと思います。
数字を当てはめていくあたりが、なんだかパズルのようにも感じました。
小説の中にこんなふうに暗号ゲームを展開するなんて新しい発想で楽しみながら読ませて頂きました。428と渋谷がかかっているのもおもしろいですね。
暗号を解くストーリー斬新で楽しいです。暗号の答えを考えて読み進むのは面白さが倍増します。歌姫のチケットが欲しい人はチャレンジしてね。