第123話 記憶:冠位授与(脚本)
〇教会の控室
1997年 バチカン市国 魔術教会内 審議室
夢を見た。しかし今の私には無いはずの夢
未来なのか?記憶の整理で起きるなら一体『いつの記憶』なのだろう
魔術教会幹部「異端者め!冠位魔術に自力で到達などありえん、嘘をつくな!」
魔術教会幹部2「どうやってコズミックアーカイブに入った!?言え異端者め、答えろ!」
エンチャント魔導法士「嘘など···ついておりません···主に···主に誓って私は···」
エンチャント魔導法士「コズミックアーカイブにも他の不正も致しておりません···」
魔術教会幹部「ええいまだ言うか!査問官を呼べ、異端審問にかけて火刑にしてしまえ!」
騒がしいな···何事か
魔術教会幹部「ほ、法皇猊下!お騒がせして申し訳ございません、今この者の嘘を暴くところですので!」
コーマ魔術法皇「嘘?どういう嘘か教えなさい」
魔術教会幹部2「この者は造形冠位魔術に自力で到達したと言い、実際に冠位級の魔術をして見せました」
魔術教会幹部2「本来法皇猊下のみが知る冠位魔術を使えるのは異常です」
魔術教会幹部2「明らかに不正をしたに違いありません。すぐに処罰すべきです!」
コーマ魔術法皇「ふむ···不正の証拠は?」
魔術教会幹部2「今聞き出している途中です。オラっ、サッサと言え異端者め!」
実に暴力的なプラスチックの棒による殴打。この棒は頂点から加速するごとに姿を変え
並行部分に行く頃には一輪の薔薇に変化を終えていた
コーマ魔術法皇「やめなさい。証拠もなくなぜ悪と決めつける?」
魔術教会幹部2「し、しかしお言葉ですが法皇猊下。自力で冠位魔術に到達するなど···」
コーマ魔術法皇「『前例がない』と?だから異常だと?恥を知りなさい」
コーマ魔術法皇「2人とも席を外しなさい。私が話を聞き判断します。良いですね?」
その言葉に異を唱えたかったが、とても言える様子ではなかった
2人は複雑な表情を見せながら、部屋を後にする
コーマ魔術法皇「さて···造形冠位魔術だったか?見せてみなさい」
エンチャント魔導法士「お言葉ですが法皇猊下、奴らに見せたのは『それっぽい魔術』でして···」
コーマ魔術法皇「ほう?では君は嘘をついたと?」
エンチャント魔導法士「はい···冠位魔術はその様なものではないので···」
コーマ魔術法皇「ではどのような魔術が造形冠位魔術なのだ?」
ひと呼吸おいてエンチャントは語った
エンチャント魔導法士「造形冠位魔術とは···『教義です』」
エンチャント魔導法士「教え習うもので言うと、造形魔術とは1の可能性を見つけ繋ぎ直す魔術と教わります」
エンチャント魔導法士「しかし私は学ぶうちに気がついたんです」
エンチャント魔導法士「『全てのものは繋がっているのではないか?』と」
エンチャント魔導法士「そして様々なことを学び、知り、考えることによって万物が大きな」
エンチャント魔導法士「とても大きな『輪』ではないかと思いまして···それが私が考える造形冠位魔術です」
法皇は目を細め、思考を巡らせた後エンチャントに問う
コーマ魔術法皇「では聞く。我らが教え学ばせた冠位魔術の数々は『嘘』と言いたいのか?」
エンチャント魔導法士「恐れながら···あの程度の魔術なら年月をかければ誰でも覚えられます」
法皇はふぅーとひとつため息をついて頭を抱えた
コーマ魔術法皇「困ったものだ···魔術史始まって以来の大事件だ···」
コーマ魔術法皇「まさか真に冠位魔術に到達する者が現れるとは···」
エンチャント魔導法士「え、し、しかし法皇猊下···冠位魔術にたどり着いたものなら魔術史において···」
コーマ魔術法皇「あれはたどり着いてはいない。かなり近づいただけで君のように本質には届かなかった」
コーマ魔術法皇「掛けなさいエンチャント魔導修士。冠位十階九位の位でたどり着けるとはな···」
エンチャント魔導法士「は、はい···では失礼します···」
ゆったりと腰を降ろす。革のソファがミシッ···と音を鳴らし
やや温かい空気が流れた
コーマ魔術法皇「しかし凄いな···本当に自分の力のみで冠位魔術にたどり着いたのかね?」
エンチャント魔導法士「はい。様々な魔術を学ぶことより、基礎だけ覚えて極めた方が良いかと思いまして」
エンチャント魔導法士「時間魔術や空間魔術はもちろん、伸縮魔術や召喚魔術すら私は全然できませんので」
コーマ魔術法皇「ハッハッハ!なんで魔術師なったのか聞きたくなるレベルのセンスの無さだな」
コーマ魔術法皇「でもそうか···だからこそ得意な造形魔術を極めようとしたのか」
朗らかな笑顔は一転、眉間にシワを作り目を据えた
コーマ魔術法皇「凄い才能だ。だが他の魔術師の手前処罰なしにはできん」
コーマ魔術法皇「かといってこの歴史的偉業を無視して処罰をすれば」
コーマ魔術法皇「他の魔術師は『魔術教会の気分次第で偉業もかき消される』と広まり、魔術師の質の低下」
コーマ魔術法皇「最悪離反者が爆増すると予測する。魔術教会としてはそれは避けたい」
エンチャント魔導法士「では···私を魔術教会から追放なさいますか···?」
コーマ魔術法皇「それも悪手。それにそれっぽいとはいえ、他者が冠位級の魔術を見たのは事実」
コーマ魔術法皇「魔術教会はエンチャント魔導修士の魔術を冠位級と認めたと広まっても困る」
コーマ魔術法皇「そこでだ···私から条件がある」
笑顔。しかし先程まで話していた笑顔とは『粘度』が違っていた
コーマ魔術法皇「『他の冠位魔術も教えるから黙っといてくれ』」
エンチャント魔導法士「法皇猊下!!?そ、そんなことしてもいいのですか!!?」
コーマ魔術法皇「お、私に意見かな?私より上の位になったつもりか?エンチャント魔導修士」
エンチャント魔導法士「い、意見も何もそんな自分都合でホイホイ冠位魔術を教えては···それに前例も···」
コーマ魔術法皇「君は前例の外にいるのに前例を語るか」
コーマ魔術法皇「前例が無いからダメ、事例がないからダメと言うのは挑戦する事を諦めた者の言い訳だ」
コーマ魔術法皇「悪いか悪くないかなんて後からついてくる。まずはやってみ無ければならないのだよ」
エンチャント魔導法士「コーマ魔術法皇··· ··· ···」
コーマ魔術法皇「だがちゃんと魔術教会として見返りも求める。それ良いかな?」
エンチャント魔導法士「無論です。何なりとお申し付けください」
コーマ魔術法皇「君の魔術を『冠位認定する』代わりに君は本来の冠位魔術を『口外するな』いいね?」
私はこれに承諾した。拒否する理由なんてなかった
後に私は魔術師達の前でそれっぽい魔術を行い、その魔術が冠位認定された
名は『星の巨人アトラス』。でもそれはあくまで建前。本当の目的は冠位魔術の教授
それっぽい魔術をその場で教わり、やって見せた。名は『セラフィムの愛』
そして後に私は法皇猊下から真に識別冠位魔術を教わった。
〇怪しげな酒場
2021年 イリノイ州 マディソン郡 イースト・セントルイス ギルド内
エンチャント魔導法士「もう少しでホテル行けると思ったのですが、何がいけなかったのでしょうか···」
鸞「強引が過ぎたな。物腰は柔らかいが、がっつき具合で引いたんだろ」
キング「ハッハッハ!ざまぁねぇな、俺の勝ちだぜ凪園!」
凪園無頼「マジありえねー!つーか、ホテル街行ったら普通相手警戒すんじゃん!分かれよ!」
エンチャント魔導法士「え、だってあそこまで行ったら『同意』では?生殺しもいいところですよ」
斎王幽羅「うわぁ···昭和だなぁ···」
斎王幽羅「あれ?ところで他の人達は?どこにいるんだろ···」
何時もなら雑音の声の群れがギルド内を満たすが、今日はそれが無かった
朝だからなんて理由で片付けられるが、斎王は違和感や不思議さが勝っていた
一匹の狐が扉から現れると斎王達に話した
白鷺姫「斎王様方、こちらに居らしておりましたか」
白鷺姫「東側の広場にお急ぎを。魔術師共がその場に集結する可能性が高いです」
To Be Continued··· ··· ···


