龍使い〜無間流退魔録外伝〜

枕流

第漆拾玖話 伯仲(脚本)

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〇見晴らしのいい公園
雀松司「それが貴様の本体か」
  司は三郎を睨みつける。
  正確には、その体表面に浮かぶ紋様に、だが。
三郎「なかなか鋭いですね、流石は四神の一柱」
  拘束を解かれた三郎も立ち上がり、司を見る。
  その全身に浮かぶ紋様は、光を放ち、微かな唸りを上げ、蠢いていた。

〇見晴らしのいい公園
竹村茂昭「どういう事だ・・・?」
  茂昭は司の言葉の意味を測りかねていた。
  三郎の全身を覆う紋様。
  その紋様が動いたのは茂昭にも見えた。
  一瞬の内に、胸にあったはずの顔が額まで移動した。
竹村茂昭(気持ち悪い紋様なのは確かだよな・・・)
  あのような代物はみたことがない。
  おそらく、呪術や魔術的な代物なのだろう。
  そういった手合いの使い手に出会うのは今回が初めてだ。

〇見晴らしのいい公園
姫野晃大「めっちゃキショいの見たんだけど!?」
竹村茂昭「・・・」
  感想を素直に口にする晃大を見て、茂昭は何となく安心感を覚えた。
  戦いの中にあって、感情の揺れ動きを相手に悟られるのは得策とは言えない。
  本来なら、目の前の信じがたい出来事を目一杯感じきりたい。
  そして、全身で感情を表現したい。
  そんな年頃である。
  が、それが命取りになるのが戦場だ。
  冷静に、真剣に、己を御し、状況に対応しなければいけない。
  そんな中で、
姫野晃大「どういう仕組みだ、あれ!?」
  晃大は何の億面も遠慮もなく、思ったことを素直に口にしている。

〇見晴らしのいい公園
三郎「この紋様、そんなに不思議ですか?」
  三郎が晃大に声をかける。
姫野晃大「当たり前だろ」
  晃大は素直に首を縦に振った。
姫野晃大「どういう仕組で動いてんだよ、それ」
三郎「わかりません」
姫野晃大「ちょ!?」
  即答で返ってきた言葉に、晃大は思わずコケそうになった。
三郎「わかりませんが、できるんですよ」
姫野晃大「答えになってねえ・・・」
  ガクリと項垂れる晃大。
雀松司「『そういうもの』なんだよ、姫野くん」
  横合いから司が口を挟んできた。
雀松司「彼の『饕餮紋』はね」
姫野晃大「トウテツモン?」
雀松司「そう」
  司は頷く。
雀松司「この、三郎と名乗る、」
  彼の、力

〇見晴らしのいい公園
三郎「さて、そろそろ本気を出しますか」
  右手の紋様が一際強い光を放ち、伸びていく。
  それは一本の剣となり、三郎の右手に収まった。
  やや幅広の剣身に、分銅にも似た鍔、そして柄頭は円盤状になっている。
  その剣は、古代中国の剣の形に似ていた。
三郎「ぶつ切りにしてあげますよ」
雀松司「やってみろ」
  対する司は素手で構えを取る。
三郎「素手で良いのですか?」
  剣道三倍段、という言葉がある。
  武器を持った相手に素手で対抗するには相当な技量が必要だ、という意味の言葉だ。
  武器を持てば、素手の時よりも強度や間合いが強化される。
  それだけで有利になるのである。
  とはいえ、その細腕に剣を手にして、三郎は扱えるのか。
三郎「ふっ」
  軽く一息、神速の数閃。
  腕を突き出し手首を回し、剣閃が縦横に輪を描く。
  鋭い風切り音は、切っ先までよく力が届き、無駄な力みも無い事を示している。
  そして剣先をピタリと止めて司に突きつけ、
三郎「串焼きが、良いですかね」
雀松司「!!」
  速い。
  そして無造作。
  一直線に間合を詰める。
雀松司「ちっ!」
  右斜め後ろに下がりながら腕を振り、剣を握る三郎の右手首を取ろうとしたが、
  空いている左手に阻まれた。
雀松司「!!」
  強い握力が司の右前腕を締め付ける。
  三郎は手首を返して切っ先を司に向け、突き立てようとしたが、
雀松司「はっ!」
三郎「おおっ!?」
  三郎も驚いた。
  司は左足を真上に蹴り上げ、足で三郎の剣を防いだのだ。
雀松司「そらっ!!」
  更に軸足をも蹴り上げての二段蹴り。
  司の右手を掴む三郎の左手が緩む。
  司は右手を大きく振って三郎の手を振りほどき、
雀松司「だあああっ!!!」
  空中で連続蹴り。
三郎「お、お、お、」
  剣の峰でそれを受ける三郎に、
雀松司「せいやあっ!!」
  両腕に炎を纏い、着地しながらの打ち下ろし。
  が、まだ司の攻撃は終わらない。
雀松司「おおっ!」
  打ち下ろし交差した腕を上へと開き振りながら勢いよく立ち上がる。
雀松司「捉えた!」
  司の左手は三郎の右手を掴み、右手は三郎の鳩尾に当てられている。
雀松司「朱雀、」
  司の全身から真紅の炎気が舞い散り、
雀松司「劫炎翔!!」
  大きく左右に振り抜かれる両腕に合わせて炎の嵐が三郎を包み込む。
雀松司「やったか!?」
  炎の嵐が収まった時、
三郎「朱雀の炎、やはり凄まじいですね」
雀松司「なに!?」
  そこには無傷の三郎が立っていた。

〇見晴らしのいい公園
三郎「朱雀の奥義、お見事です」
雀松司「無傷、だと!?」
  炎の気を纏った手で思い切り掴み、そして朱雀の奥義を至近距離でぶつけたはずだ。
  なのに、三郎には傷一つ付いていない。
  耐えたというのか。
  しかし、
三郎「流石に、ヤバかったですよ」
  顔から余裕の笑みは消えている。
  その言葉に嘘偽りは無さそうだ。
三郎「この剣にも頑張ってもらいましたよ」
  そう言って剣を見せる三郎。
  剣身は赤熱し、音を立てて煙を上げている。
三郎「さあ、今度は私からいきますよ!」
  赤熱の収まらない刃を振りかざし、三郎が切りかかる。
  司がそれを紙一重で躱すと、三郎は続けて二度、三度と振るう。
三郎「どうしました?反撃しないのですか?」
  さらに続けて斬りつける三郎。
  司は三郎の剣撃をかわし続ける。
雀松司(こいつ、)
  思っていたよりも遥かに強い。
  朱雀の闘技、そして奥義。
  攻撃を正面から受けても動じない頑丈な身体と精神力。
  穏やかな態度とは裏腹に、敏捷性と剛力を兼ね備えた容赦のない攻撃。
  しかし、その攻撃に殺気や闘志を張ることはなく、余りにも無造作。
  力を振るうのは、彼にとって至極自然で当たり前とでもいうのか。
  その顔に騙されると痛い目に遭う。
雀松司(だが!)
  だからといって負ける訳にはいかない。
  かつて四神が放逐に成功したのだ。
  今再び退けることも不可能ではないはずだ。
雀松司「貴様を、ここで、倒す!」
  司は全身に気を漲らせた。

〇見晴らしのいい公園
姫野晃大「で、饕餮紋って何よ?」
  晃大の疑問に答える前に、司は三郎と戦闘を再開してしまった。
  残された疑問を抱えざるを得ない晃大だったが、
梶間頼子「それって何よと聞かれたら、」
橘一哉「答えてやるのが情けというもの」
姫野晃大「ふおあ!?」
  そんな晃大を左右から挟み込むように頼子と一哉が素早く寄ってきた。
橘一哉「饕餮っていうのは、中国に昔から伝わる怪物の名前」
梶間頼子「何でも食べる性質の持ち主だそうな」
橘一哉「で、そんな性質から魔除けなんかにも使われたらしいよ」
「以上、説明終わり!」
  謎のポーズを決めると、一哉と頼子は離れていった。
姫野晃大(説明は有難かったけど、そのポーズは何なんだ・・・)
穂村瑠美「要するに、その紋様の力で相手の力を吸収しているのね」
竹村茂昭「そういうことだな」
姫野晃大「司さん、大丈夫かな・・・」

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