第漆拾漆話 四神結界(脚本)
〇見晴らしのいい公園
雀松司「報い、か」
雀松司「逆恨みだな」
司は三郎を睨み返す。
三郎「貴様ら四神に追い出されたおかげで、世界の美味を堪能できなくなった」
三郎「食の恨みは、恐ろしいぞ?」
口調は冗談めいているが、目は笑っていない。
双眸には瞋恚の炎が燃え盛り、彼の周囲の空気が揺らめいている。
竹村茂昭「司さん、こいつを知ってるんですか?」
雀松司「ああ、勿論」
茂昭の言葉に司は頷く。
雀松司「最も、直接面識があるわけではないけどな」
司は三郎と直接出会ったことはない。
しかし、司は彼をよく知っていた。
雀松司「俺に力を貸してくれる朱雀が、教えてくれた」
〇外国の田舎町
遥か昔。
人が文化を形成し、文明を築き始めた頃。
人が自然から独立し始めた時代。
人類が、文明によって自然から分かたれ始めた時代。
己を脅かす様々な存在から身を守るため、人類は四柱の神獣に協力を求めた。
即ち。
青龍。
白虎。
朱雀。
玄武。
後に『四神』と並び称される神獣たちである。
人類は彼らを東西南北の四方に配し、邪気や魔性、魑魅魍魎の類を防いだ。
防いだ、といえば聞こえは良い。
実際は、自分たちの縄張りを作り、その外へと追いやったのである。
だが、そうするだけの充分な理由があった。
その最たるものが、
四 凶
〇見晴らしのいい公園
雀松司「竹村くん、君に宿る白虎も知っているはずだ」
竹村茂昭「白虎も?」
初耳だ。
そのような存在の話は、茂昭は聞いたことがない。
竹村茂昭「俺が聞いたのは、四神は人類の守護者たる存在だ、って事だけです」
雀松司「そうか」
茂昭は白虎の力に目覚めてから日が浅い。
まだ、込み入った話をする暇が無かったのだろう。
雀松司「では、改めて説明しようか」
三郎「その必要はありません」
雀松司「なに?」
三郎「あなたの説明は、人類に都合よく改竄された偽りの物語だ」
三郎「被害者である私が、真実をお話ししますよ」
〇外国の田舎町
青龍・白虎・朱雀・玄武の四柱は、人類に最も早くから与した神獣である。
その身に宿す陰陽五行の力を用い、人類にとって都合の悪い存在を排斥した。
人類の社会に入り込めないように、特殊な結界を張り巡らしたのである。
その結界の排斥条件に合致した存在の影響は二つ。
まず、人類社会に入り込めなくなる。
もし入り込めたとしても、人類が対処可能なほど大幅に弱体化させられてしまう。
〇見晴らしのいい公園
三郎「私は、結界の中に全く入り込めなかった」
三郎「四神結界は、力の強さに応じて排斥能力も高まる厄介極まりない仕様でした」
三郎「おかげで、私は外の世界で僅かな粗食に耐えねばならなかった」
遠い目をする三郎。
三郎「満腹はおろか、人心地すらつかない日々を過ごしてきましたよ」
三郎「それが、最近、どういうわけか街中に入り込めましてね」
三郎「久方ぶりに人の食物を口にすることができました」
三郎「やはり、人の食物は美味なものが多い」
ごくり、と喉を鳴らす三郎。
三郎「これで、数千年ぶりに腹を満たせるというものです」
三郎「それにしても、一体何が起きたのでしょうね」
最後に三郎が口にした素朴な疑問に、
姫野晃大「・・・」
「・・・」
「・・・」
皆の視線が、
橘一哉「え?なになに?」
一斉に一哉へと向けられた。
〇見晴らしのいい公園
三郎「黒龍の宿主が何かしたのですか?」
三郎も何となく察したようだが、
雀松司「貴様に答える義理はない」
語気強く言い放ち、改めて司は戦闘態勢を取る。
三郎「それもそうですね」
三郎も全身の紋様を光らせ、闘気を放つ。
雀松司「いくぞ!!」
軽やかに跳躍し、司は三郎へと間合いを詰めた。


