6 増える街、故郷の街(脚本)
〇要塞の回廊
ミムレット「この街って、何なんだ?」
ミムレット「食事も水も、物資もそのまま」
ミムレット「でも、生きているモノは私だけ」
ミムレット「気味が悪いっ」
ハラン「ここは、君の「故郷の街」だ」
ハラン「「球」によって再現された、な」
ミムレット「故郷の街・・・再現・・・」
ミムレット「よく分かんないっ」
しかし、「話を聞く」と約束した手前、ミムレットはおとなしくハランに従った。
ミムレット(約束は守るものだって、言ってたしな。 父さんも)
ミムレット「あっ、そうだ」
ミムレット「なんで父さんの指輪まであった? どこで無くなったかも分からないのに」
ハラン「再現された街には、思い出が付加される」
ハラン「単に現物があるものに限らない」
ミムレット(やっぱり、小難しいっ)
ハラン「ミムレットの街も、最近「増えた」んだよ」
ハラン「だから、ここへ来た」
ミムレット「街が・・・増える?」
ミムレット「「造る」じゃなくて?」
ハラン「「増える」んだ」
ミムレット「あ、待て!」
〇要塞の廊下
「球」の中では、心の拠り所──
故郷が再現される
ミムレット「再現・・・ねぇ」
ハラン「要は、「球」に入った人の数だけ「故郷」が再現されて、「増える」んだ」
ミムレット「ふーん?」
今一つピンときていないミムレットは、
窓辺から身を乗りだし、荒野に目を凝らした
高い窓辺から荒野を一望しても、湾曲した空と、空の端の揺らぎしかない。
ミムレット「ここ以外に街なんて無いじゃん」
ハラン「無いように見えるのは」
ハラン「『球』の中が、とても広いからだ」
小難しい説明に、ペシャリと降りていった耳が、ふとハランに向き直った
ハラン「どうした」
ミムレット「あんたは、他の街を見たの?」
ハラン「ああ」
ミムレット「あんたの街もある?」
ハラン「あるよ」
ハラン「でも、遥か彼方だろうな。 ずいぶん長いこと、移動しているから」
ミムレット「『さまよってる』ってやつ? 何でさまよってるの?」
一瞬、ほんの一瞬だけ、ハランは言葉に詰まった。
ハラン「罪滅ぼしだ」
ミムレット「何?」
ハラン「君のようなモノに、会うためだよ」
ミムレット「あ!はぐらかしただろ!」
ハラン「今は、これだけ覚えなさい」
ハラン「・外に出たければ、球の端に行く ・人に会いたければ街を探す」
ハラン「食べ物や、物資が欲しいときもね」
ハラン「私はそうして君に会ったんだ」
ミムレットは、空を見上げた。湾曲の彼方に、わずかな揺らぎがある空だ。
ミムレット「ねえ」
ミムレット「他の街にはもっと良いものが在る?」
ハラン「かもな。 だが、街の主と争ってはいけないよ」
ミムレット「わかってる!ちゃんと挨拶するよ! 勝手に他人の縄張りに入ったら」
ミムレット「ケンカになるだろ?」
ハランは吐息で押し出すように笑った。
ミムレットは不思議だった。
「嬉しそう」でも「楽しそう」でもない微笑みなんて
ミムレット(ホントに良く分かんないヤツ)
ミムレット「まあ、いいや。決めた!」
ミムレット「他の街に行く! 美味しいものが在るかもだし」
ミムレット「安全なねぐらも欲しい!」
ハラン「「球」の端から、外へ出ないのか?」
ミムレット「もちろん出るよ! 球(ここ)は嫌いだ」
ミムレット「美味しいものを食べて、寝て、外に出る! ついでに、お前より強くなる!」
ミムレット「やることがいっぱいだ!」
ハラン「それは・・・楽しそうだな」
ハラン「眩(まぶ)しいくらい」
「置いてくぞ!」
ハラン「置いていかないでくれ 私も、他の街に用があるんだ」
〇闇の要塞
ハラン「なあ、ミムレット」
ハラン「故郷に未練はないのか?」
ハラン「父君──父さんの指輪の他にも、思い出の品が眠っているかも」
ミムレット「有る時のことを考えても仕方ないだろ?」
ミムレット「今、手元に無いんだから」
ハラン「確かに、そうだな」
ハラン「次の街を目指すなら、最近増えた「故郷の街」がある」
ミムレット「増えたとか分かるのか?」
ミムレット「お前、やっぱり人間じゃないだろ・・・」
ハラン「なに、街が増えると、空が揺らぐ。 それに、荒野も少しづつ歪(いびつ)になる」
ハラン「荒野の進みかたも、道中で教えよう」
〇荒廃した市街地
猫人の少女「エイヤッ」
猫人の少女「ハァ、ハァ」
大きなハンマーに寄りかかり、先ほど倒したモンスターを見つめる少女。
猫人の少女「みんな消えればいいのに」


