球~行き着く先は、世界の端~

333×

10 スープ(脚本)

球~行き着く先は、世界の端~

333×

今すぐ読む

球~行き着く先は、世界の端~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇中東の街
ハパルム「私たちはただ二人で静かに暮らしたかっただけ!」
ハパルム「なのに」
ハパルム「どうして殺したの!」
  ミムレットは、詰め寄る薄茶の髪を、眺めるしかなかった。
  「どうして殺したの」その一言に、全身の毛が逆立った。
  詰め寄る彼女はしかし、喰い縛った掠れ声で首を振った。
ハパルム「わかってる」
ハパルム「「ハパーランチア」は「モンスター」だったって」
  そう。モンスターだった。
  分かってる。でも、それでも──
ハパルム「「優しいお兄ちゃん」も、確かに「ハパーランチア」だった!」
  堰を切ったように溢れる涙と叫びが、うずくまる背を震えさせた。
  ミムレットは、そっとハランの袖を摘まんで、引いた。
ミムレット「・・・だって」
ミムレット「だって、あれはモンスターだった」
ミムレット「ハランも...あいつだって、喰われかけてたんだ」
ミムレット「でも──」
  ミムレットは、地面に残る泡と、空を掴んで泣く背中に、スンと鼻をならした。
ミムレット「でも、倒しちゃダメだった?」
  ハランはミムレットの肩に手をおいた。
ハラン「私たちはモンスターを倒した」
ハラン「でも、彼女は兄君を喪った」
ハラン「それだけだ」
ミムレット「それだけ、って・・・」
ハラン「「それだけ」だが──」
ハラン「それだけが、難しいんだよ」

〇荒廃した市街地
ミムレット「ハパルム、だっけ。あのこ」
ミムレット「どこかへ行っちゃったな」
ハラン「兄さんを悼んでいるだろう」
ミムレット「・・・・・・」
ミムレット「なあ、モンスターって人なのか?」
ハラン「「球」で争ったモノの末路だ」
ハラン「人間も、猫人も関係なく」
ミムレット「どうしてモンスターなんかに成るんだ?」
ミムレット「今までのモンスターも全部人だったのか」
ミムレット「お前は何を知っている?」
  ふと、暖かな匂いがした。
  見れば、猫人の少女ハパルムが、夕日を浴びて立っていた。
ハパルム「そこの二人」
ハパルム「ご飯・・・一緒に、食べない?」

〇中東の街
  ハパルムは手際よく二人の前に皿を並べた。
  大きめに切られた肉と、野菜がたっぷりのスープが、なみなみと盛られていた。
  ミムレットは、鼻を近づけ、よくよく匂いを嗅いでから、スープをひと舐めした。
  一瞬、動きを止めたミムレット
ハパルム「え、ど、どうしたの?」
ミムレット「うまい!これ、すごいぞハラン」
ハパルム「あ、え?け、警戒してた?もしかして」
ハラン「ミムレットは慎重なんだよ」
  1口づつ、噛み含めるように食べるハラン。
ハパルム「へ、変なものなんて、入ってないよ!?」
ミムレット「おかわり!」
ハパルム「あ、ど、どうぞ」
ミムレット「お前、料理上手なんだな!」
ハパルム「お、お兄ちゃんに教えてもらって・・・作れるのは、このスープだけだけど」
  夢中で皿を空にしているミムレットの横で、ハランは静かに問いかけた。
ハラン「美味しかったよ、ありがとう」
ハラン「どうして、ご馳走して──ご飯を分けてくれたんだ?」
ハパルム「えっと、その・・・」
ハパルム「私、あなた達を追い出そうとしたでしょ?」
ハパルム「追いかけ回したし、ハンマーで叩いたし」
ハパルム「その、お詫びです」
  屈託無く笑うハパルム
  ハランは、スッと居ずまいをただすと、ハパルムへ頭を下げた。
ハラン「詫びるのはこちらです」
ハラン「貴女の故郷の街へ押し掛けて」
ハラン「挙げ句、お兄さんを奪った」
  ハパルムはハランを見つめると、微笑んだまま、茶色の耳を僅かに伏せた。
ハパルム「いいの」
ハパルム「何時かは・・・こうなる日が来たと思うから、いいの」
ハパルム「だからいいの」
ハパルム「いいってことにするの。 そう決めたの」
  ハランが口を動かす前に、ミムレットが割って入ってきた。
ミムレット「なあなあ、ハパルム!」
ミムレット「一緒に来ないか?」
  空になった皿を見つめて、ミムレットが尻尾を立てた。
ミムレット「ここに置いていったら、スープを食べに帰りたくなっちゃう」
ミムレット「お前のスープ、大好きだ!」
ハパルム「お、お兄ちゃんも・・・ そう言って、褒めてくれた」
ハパルム「私のスープ、大好きだ、って」
ハラン「よければ、一緒に来ないか」
ハパルム「どこへ?」
ハラン「私たちは、「球(ここ)」から出る旅をしている」
ハラン「試しでもいい。来ないか?」
ハパルム「今は、街を離れたい気もするし」
ハパルム「お試しでも・・・いいなら」
ミムレット「やった!よろしくな、ハパルム」
ハパルム「う、うん」
ハパルム「よろしく」

次のエピソード:11 「球」以前の暮らし

成分キーワード

ページTOPへ