エピソード3(脚本)
〇地下実験室
練(・・・・・・え、俺まだ外挂(チート)あるのか?新しい機娘と契約しろって?)
練(いやいや、それはさすがに無茶だろ・・・・・・)
練(こんなに強くて、こんなにカッコよくて、)
練(こんなに才能に恵まれた俺が、さらに外挂まで持ったら──)
練(他の連中、どうやって生きていけばいいんだよ)
そんな風に、ほんの少し自惚れて、
この幸福感に浸ろうとした、その時。
夢「――これって・・・改装コア!?」
夢「店長、どこから出したんですか!?」
少女の表情は、不安 → 疑問 → そして完全な驚愕へと変わっていく。
練「まあ・・・・・・改装師からの、ちょっとしたサプライズだ」
そう言いながら、俺は改装コアを手に取り、
フロント、リア、排気管、燃料タンクの前で比べてみる。
練「・・・・・・違う」
練(いや、これ・・・・・・どうやって付けるんだ?)
夢「・・・・・・もしかして、」
夢「改装コアは“機娘モード”じゃないと装着できないって、ご存じ・・・ないんですか?」
練「・・・・・・あ?」
知らない。
それは・・・・・・本当に知らない。
練(拳ほどの大きさの改装コアを、 あの小さな体のどこに入れるんだよ・・・・・・?)
――その時。
ユメは小さくため息をつき、
機娘モードへと戻った。
夢(この人・・・・・・本当に機娘改装師なのかな・・・・・・?)
夢(でも、 実際に改装コアを作り出している。 しかも、代金も取らない)
夢「・・・・・・ここです」
ユメは背を向け、ぴったりしたレーシングスーツを持ち上げた。
露わになった、白くて細い腰。
薄黄色の照明が、
腰のくぼみに溜まり、
琥珀色の酒のように揺れて見えた。
一瞬、視界が熱を帯び、
俺は無意識に喉を鳴らした。
ユメは両手を背中に回す。
驚くほど柔らかい動きで、
人差し指と親指を使い、腰の中央に長方形を描いた。
夢「見えますか? ここに、改装コアを当ててください」
夢「そのあと・・・・・・私の方で、吸収できますから」
言われるまま、
俺は改装コアを彼女の背中に当てた。
――その瞬間。
改装コアは一筋の光となり、
静かに体内へと溶け込んでいく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夢「・・・・・・ん・・・・・・」
夢(柔らかく、それでいて力強いエネルギーが体に流れ込む感覚)
思わず、ユメの喉から小さな声が漏れた。
夢「・・・・・・ん・・・・・・」
夢「・・・・・・?」
だが同時に、
彼女は別の違和感にも気づいた。
自分の胸に手を当てる。
夢「・・・・・・大きく・・・・・・なってる?」
練「ぶほっ!ごほっ、ごほごほっ!!」
練「効果、即効すぎるだろ!!」
練「ど、どう!? 強くなった感じはあるか!?」
練「このコア、 速度+3、コーナリング+3だ」
練「ただし、 安定-1、航続-3」
練「航続、ちょっと削りすぎた・・・か?」
夢「速度とコーナリングが+3!? すごい・・・・・・!」
ユメの目が、一気に輝いた。
夢「しかも、総合値はちゃんとプラスです!」
夢「白ランクの改装コアで、プラマイゼロでも十分すごいのに!」
夢「これ、本当に無料なんですか?」
練「もちろん」
夢「他に、何か代価は・・・・・・?」
・・・・・・
俺は一瞬言葉に詰まり、
ユメを上から下まで見て、少し考えた。
そして――
やけに真面目な声で言った。
練「・・・・・・俺の機娘にならないか?」
練「昼はハードを改装する。 夜はソフトを改造する」
練「保証する。自分でも“これ本当に私?”って思うくらい、強くしてやる!!」
夢「・・・えっ!?」
夢「・・・・・・っ・・・・・・」
ユメは半歩後ずさり、
頬を赤く染め、視線を足元に落とす。
しばらくしてから、
小さな声で答えた。
夢「店長・・・・・・店長は、とても良い人です」
夢「でも・・・・・・私には、もうドライバーがいます」
夢「それだけの理由で、 ドライバーを裏切ることはできません」
練「でも・・・・・・私には、もうドライバーがいます」
練「それだけの理由で、 ドライバーを裏切ることはできません」
練「・・・でも、そのドライバー、 君を大切にしてるようには見えないけどな」
練「俺の店に来る機娘は、 みんなドライバーと一緒だ」
練「君みたいに、 一人で彷徨ってる子はいない」
練「機娘の成長って、 本来は二人でやるものだろ・・・」
練「問題が起きたからって、 全部君に押し付けるのは・・・違う?」
少女の顔に、
凍りついたような苦笑が浮かぶ。
だが、それでも――
ユメは、はっきりと首を横に振った。
夢「・・・・・・ごめんなさい。 ありがとうございます」
夢「でも、忠誠は・・・・・・ 私のコアに刻まれた原則なんです」
夢「もし今日、」
夢「誘惑に負けてドライバーとの臨時契約を解除し、あなたの機娘になってしまっていたら―」
夢「きっと将来、同じ理由で、店長の元を去ることもできてしまう・・・・・・」
――でも。
もし、もしも・・・・・・
夢(いつか、ドライバーに捨てられて・・・ その時、まだ受け入れてくれるなら・・)
夢(あなたに、私のドライバーになってほしい・・・・・・)
その言葉は、
最後まで口に出されなかった。
代わりに、
ユメは深く頭を下げた。
夢「助けてくれて、本当にありがとうございました!!」
夢「いつか・・・・・・必ず、お返しします!!」
そう言い残し、彼女は慌てるように店を飛び出していった。
残っていたのは、彼女が必死に貯めていた、わずかな金だけ。
俺は口を開き、
結局、ため息をつくしかなかった。
練「・・・・・・あ」
練「あ!ちょっと待て。購入契約、まだ―」
慌てて呼び止めたが、
廊下に響いた声は、すでに走り去った彼女には届かなかった。
練「・・・・・・まあ、いいか」
練「機娘一人手に入れるのも、 やっぱり簡単じゃないな」
練「・・・・・・でも、」
練「少なくとも、あの子の危機は乗り越えられたはずだ」
〇建設現場
それから数日間、
レンはユメと再会することはなかった。
ユメもまた、
あの改装店を訪れることはなかった。
たとえ自分で改装コアを作れるようになったとはいえ、正式な改装師の証明がない。
機娘を連れたドライバーたちは、
それを見るなり踵を返して去っていく。
刻一刻と迫る家賃の期限。
結局、レンは外に出て、
肉体労働をするしかなかった。
正直、自分のキャラにはまったく合わない。
だがこの世界の単純労働は、
報酬だけはやたらと良い。
練「何より――本当に、飯が食えなくなりかけていた!!」
腹を括ったレンは、
残っていたわずかな金を手に、
以前、材料を拾っていた回収工場へ向かった。
回収工場で作業用ロボットを操作すれば、
一日最低でも40,000転元は保証される
転元──
この世界の共通通貨で、エンジンが一回転する際に消費されるエネルギー価値が基準だ。
購買力は、
だいたい日本円と大差ない。
本来、この仕事は誰にでもできるわけではない。
最低限のコンピュータ操作と操縦技術が必要だ。
昔のレンには、できなかった。
だが──
ロボットに乗って一周し、
ついでに一回転んだだけで。
工場長は連絡先を残し、
「いつでも来い」と言った。
・・・しかじ
三か月ぶりに戻ってきたレンは、
まだ仕事を始める前に、それを見てしまった。
合格証と、
契約解除書を手に。
回収された機材の山の中で、
力なく座り込む――ユメの姿を。


