龍使い〜無間流退魔録外伝〜

枕流

第漆拾壱話 象限移動(脚本)

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〇荒野
竹村茂昭「なんだココ!?」
  忙しなく辺りを見回す茂昭。
竹村茂昭「学校はどこ行ったんだ!?」
  茂昭の記憶が確かなら、屋上で一哉と決闘していたはずだ。
  結界を張る前に戦闘を始めようとしたミスはあった。
  しかし、居合わせた晃大の指摘を受けて結界はきっちり張り巡らした筈だ。
橘一哉「俺達、屋上で一戦やってた筈だよね?」
竹村茂昭「お、おう、そうだよな?」
  一哉も言うのだから間違いない。
  一哉と茂昭。
  二人がいたのは学校の屋上だ。
  それが、いつの間にか見渡す限りの荒野に変わっている。
姫野晃大「それはこっちが聞きたいよ」
  狼狽えるばかりの当事者二人の間に、晃大が割って入った。
穂村瑠美「あなた達のヒートアップに合わせて、屋上は草原に変わっちゃうし」
竹村茂昭「え?」
梶間頼子「あんたら二人の激突で、草原は荒野に変わっちゃうし」
橘一哉「はい?」
  更に重ねて瑠美と頼子の口から語られた経緯に、一哉も茂昭も呆然としてしまった。
橘一哉「つまり、この惨状は、」
竹村茂昭「俺とカズの仕業だ、と?」
「その通り」
「マジですか・・・」
姫野晃大「マジです」
  晃大は頷いた。
姫野晃大「君たち二人の仕業です」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
  茂昭と一哉は、晃大・瑠美・頼子の三人と向き合い見つめ合う。
  お互いに言葉が出ない。
  だが。
  一体どうしてくれるのか。
  晃大たち三人は事の主犯格二人に無言の問いを投げかけていた。

〇センター街
三郎「ああ、いい匂いだなぁ⋯」
  周囲をキョロキョロと見回しながら青年は街中を歩いていた。
  人並み外れた長身でありながらも痩せた体躯、それを包むのは着古して草臥れた着流し。
  目立たないはずが無い。
  しかし、街ゆく人々は然程気に留める風もなく通り過ぎていく。
  彼が目立たないのは、その風体よりも纏った雰囲気にあった。
三郎「・・・腹、減ったなぁ・・・」
  空腹。
  空腹のあまり生気が無い。
  気の張りというものが全く感じられない。
  それでも顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。
三郎「どこで食べようか⋯?」
  青年の嗅覚は、至る所から漂い来る食品の匂いを感じていた。
三郎「お!?」
  そんな青年の目が見開かれる。
  青年の目が釘付けになったのは、
  一枚の看板。
  そこには、こう書かれていた。
  『当店からの挑戦状!』
  『史上最大、超ペタ盛り!!』
  『一定時間内に食べきれば無料!!』
  青年の目に生気が戻る。
三郎「よし、ここにしよう!」
  意気揚々と青年は店の暖簾を潜っていった。

〇荒野
竹村茂昭「象限移動?」
白虎(仮)「うむ」
白虎(仮)「この宇宙には無数の世界があり、それらは常に接している」
白虎(仮)「結界も、その一つだ」
白虎(仮)「それぞれの世界を我々は『象限』と呼び習わしている」
白虎(仮)「私は、私の力が最も発揮しやすい世界に移動した」
白虎(仮)「四神としての私に割り当てられたのは広い道」
白虎(仮)「故に、道の伸びる草原の結界へと君たちを強制的に移動させた」
白虎(仮)「術者たる茂昭、君と離れてしまうのは危険だったからな」
姫野晃大「あの、説明してくれてるとこ悪いんだけどさ、」
白虎(仮)「なんだ?」
姫野晃大「あんた、何者?」
白虎(仮)「私は白虎」
白虎(仮)「竹村茂昭を宿主とする四神の一柱」
白虎(仮)「方位は西、主属性は金、副属性は咆哮を以て風とする」
姫野晃大「はあ!?」
  晃大は素っ頓狂な声を上げた。
姫野晃大「これが!?白虎!?」
  それは小さな白い猫。
  虎縞模様すら無い、ただの白い子猫。
白虎(仮)「他者を指してコレとは失礼な物言いだな、光龍の宿主」
  しかし、その言い方は風格があり、声音も低めの美声である。
  ぶっちゃけて言えば低音のイケボである。
穂村瑠美「ごめんね、白虎さん」
穂村瑠美「コレ、つい最近まで普通の若者だったから」
白虎(仮)「なら仕方あるまい」
  瑠美の説明で納得したらしい。
梶間頼子「で、これからどうするの?」
白虎(仮)「ふむ、それなんだがな」
白虎(仮)「ぶっちゃけ、どうにもならん」
「なんでさ!?」
白虎(仮)「如何せん、こんな姿でしか出られないほど消耗してしまってな・・・」
  困り顔で一哉を見上げる白虎。
橘一哉「うっ・・・」
  一哉は言葉を詰まらせる。
  そして、
梶間頼子「くっ・・・」
「っ・・・」
  それは他の四人も同じだった。
(か、)
(可愛い・・・)
  本来は虎である。
  四神の一柱である。
  だが、今の姿は。
橘一哉「子猫みたいな姿になるほど消耗したのか・・・」
白虎(仮)「うむ」
  頷く白虎。
  こんな可愛らしい姿だが、声は低音イケボである。
白虎(仮)「黒龍の宿主よ、君は属性をうまく使いこなしている」
白虎(仮)「見事だ」
橘一哉「恐縮です」
白虎(仮)「だからこそ、私もこうなった」
白虎(仮)「君のような資質を持つ人間に出会えたのは僥倖だ」
白虎(仮)「精進しなさい」
橘一哉「はい、ありがとうございます」
  一哉は白虎に向かって一礼した。
梶間頼子「で、元の世界に戻るにはどうすればいいの?」
白虎(仮)「うむ、それについては一工夫が必要だな」

〇センター街
三郎「案外大したことなかったなぁ」
  若者が店を出たのは、入ってから約一時間後のことだった。
三郎「あんなの、腹の足しにもなりゃしない」
三郎「でも、昔と違って味付けは濃くなってたなあ・・・」
  ふう、と溜息をつくと、その吐息に先程食べたものの匂いがついているような気がした。
  食後にお茶と水を飲んで口の中をリセットしたはずだが、まだ風味が残っている。
三郎「おかわり三杯で食材が尽きるなんて、随分ストックが少ないんだなぁ」
  ぐう〜、と青年の腹が派手に音を立てて鳴った。
三郎「他の店、行こうかな」
  再び店を物色する青年の後ろ。
  青年が出てきた店の店主が、憔悴しきった顔で暖簾を下ろしていた。
  青年の腹の音を聞いた瞬間、その表情には怯えすら浮かんでいた。

〇荒野
白虎(仮)「さて、象限移動についてだが、」
  今の結界に至るまでの過程をおさらいすると、
  一、茂昭が結界を張った。
  これにより、元の世界と鏡合わせの世界(象限)に移動。
  二、結界から白虎の結界に移動。
  結界と接する世界のうち、白虎が力を出しやすい世界(象限)を結界として現出。
白虎(仮)「と、二つのプロセスを経ている」
姫野晃大「つまり、隣の隣に移動した、ということでいいのか?」
白虎(仮)「御名答」
白虎(仮)「分かってきたじゃないか」
穂村瑠美「その来た道を戻ればいいわけ?」
白虎(仮)「簡単に言えば、そうなる」
白虎(仮)「が、行うは難いぞ」
白虎(仮)「私は力を貸してやれん」
白虎(仮)「ここを維持するのに精一杯だからな」
姫野晃大「お前のせいだぞ、カズ」
橘一哉「いやあ、申し訳ない」
姫野晃大(絶対反省してねえな、コイツ)
白虎(仮)「一哉と茂昭の余波が酷くてな、このままだとこの世界が崩壊してしまう」
白虎(仮)「そうなったら、次元の狭間に飲み込まれて御陀仏だ」
姫野晃大「マジかおい」
竹村茂昭「そんなにすごい力が出てたのか、俺達」
穂村瑠美(無自覚の全力ってコワイなぁ)
梶間頼子「それで、具体的にどうすればいいの?」
白虎(仮)「最初に作った結界への道筋を作ってもらう」
白虎(仮)「そちらに移動できれば、後は簡単だ」
白虎(仮)「隣の部屋に戻るだけだからな」
白虎(仮)「幸いなことに、光と闇、そして炎に雷と良い属性の龍が揃っている」
  晃大、一哉、瑠美、頼子と順番に見ていく白虎。
白虎(仮)「どうにかなるはずだよ」
橘一哉「それなんだけどさ、一つ問題があって」
白虎(仮)「なんだ?」
橘一哉「俺、こいつを使い慣れてないんだよね」
  手甲と足甲を見せる一哉。
橘一哉「コレを使っての大技は初めてなんだよね」
梶間頼子「そういえば、今までは刀だったもんね」
橘一哉「そう」
白虎(仮)「なら、丁度いいじゃないか」
白虎(仮)「ここで挑戦してみたまえ」
  そう言って白虎は一哉の左腕に目線を移し、
白虎(仮)「そうだろう?黒龍?」
黒龍「白虎の言う通りだ」
  黒龍が一哉の左腕から出てきた。
白虎(仮)「貴様はまだ余裕があるのだから、働いてもらうぞ」
黒龍「おう」
  短く答えて黒龍は一哉の左腕の中に戻っていった。
橘一哉「え、そんだけ?」
黒龍「まあ、そういう事だ」
  一哉の脳裏に直接語りかける形で黒龍は答えた。
橘一哉「仕方ねえ、やりますかね」
  一哉はグッと四肢に力を込め、やる気を見せた。

〇荒野
白虎(仮)「この結界に接する無数の世界から、君たちの世界に接している世界を見つけだす」
白虎(仮)「そして、そこに至る道を造り、移動する」
白虎(仮)「成否を分けるのは、君たちの思念だ」
白虎(仮)「元いた世界を愛し、戻るという意思の強さだ」
白虎(仮)「そのための足場であるこの結界は、私と茂昭が死守する」
姫野晃大「・・・分かった」
穂村瑠美「やりましょう」
梶間頼子「・・・必ず、帰る」
  晃大、瑠美、頼子の三人は得物を構える。
  神 気 発 勝
  必ず、元の世界に帰る。
  次元の狭間になど、消えてなるものか。
  三人が教えられたのは、属性の力を使っての探知。
  晃大は、全てを照らし出す光の特性で万象を照らし出す。
  瑠美は、元いた世界の生命の燃焼を感じ取る。
  頼子は、元いた世界の生命特有の生体電流を感じ取る。
  次元を超えて、対象を感じ取り探り出すことは可能なのであろうか?
  答えは、是。
  可能である。
  肉体は、その次元に固有である。
  しかし、魂・意識は次元に縛られない。
  その魂と精神・意識の力を結集し、五感を超えた感覚で感じ取るのだ。

〇荒野
橘一哉(こいつはすごいや・・・)
  そんな三人の力の高まりを、一哉は全感覚で感じ取っていた。
  晃大の力で、自分の全てが照らされている。
  瑠美の力で、自分の生命力まで高まっているような気がする。
  頼子の力で、感覚が更に研ぎ澄まされていくような気がする。
「感じているようだな、カズ」
  黒龍が語りかけてきた。
橘一哉「ああ、」
  龍の力を、これでもかと言わんばかりにひしひしと感じる。
「お前が、道をこじ開けろ」
橘一哉「ああ、分かってる」
  四肢に力を、気血を巡らせる。
  いつでも動けるように、態勢を整える。
  そして、
橘一哉「!!」
  機が、動いた。

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