5(脚本)
〇仮想空間
SAKURA「こんにちは。返信有難うございます」
SAKURA「サクラと申します。三十路の事務職です」
SAKURA「な、なんだか平凡ですね。すみません」
ワタベ「私は四十です。オジサンですね」
SAKURA「実は私も、こういうサイトを 利用するのは初めてなんで・・・」
ワタベ「ホーム画面に軽い友達作りから どうぞと書いてありますね」
SAKURA「素性が分からないのも 考え方によっては使い易いですね」
ワタベ「確かに。ちょっと安心できます」
SAKURA「ネットって怖い所も沢山あるけど」
SAKURA「私みたいに口下手な人間の コミュニケーションには、 本当に便利だと思います」
SAKURA「じっくり考えて話せるし」
ワタベ「はい。私も文章の方が好きです」
ワタベ「もしかして電話とか苦手ですか?」
SAKURA「無理無理!心臓バクバクです!」
ワタベ「同じく!」
SAKURA「では今後とも宜しくお願いします」
SAKURA「実は明日仕事が早いので、今日はこれで」
ワタベ「はい。わざわざこんなオジサンを 相手にしてくれて有難うございます」
SAKURA「・・・」
SAKURA「あの・・・そういうのじゃないんで」
ワタベ「え?」
SAKURA「他の女性はどうか知らないけど。 『わざわざ』とか 『相手にしてあげてる』とか」
SAKURA「そんな酷い理由で あなたとお話がしたいわけじゃありません」
ワタベ「す、すみません。そういう意味じゃ・・・」
SAKURA「失礼します」
ワタベ「・・・」
〇狭い畳部屋
ワタベ「出会いどころか・・・出会い系すら、俺は」
ワタベ「バカみたいな人生だな」
〇工場の中
迫田「おい!聞いてんのかこのバカ!」
迫田「ここに資材置くなってあれほど・・・」
ワタベ「そうですか。すみません」
迫田「あ?」
迫田「てめえ、何だその態度」
ワタベ「・・・」
迫田「ちょっと裏来いや」
部長「あ、迫田君。いたいた」
迫田「お、お疲れ様です!」
部長「事務室に来て。辞令が下りたよ」
部長「迫田『主任』」
迫田「あ、ありがとうございます!」
迫田「ちょ、邪魔!」
迫田「これから俺、働いて働いて働きます!」
部長「ははっ、ブラックみたいに言うなよ~」
迫田「超ホワイトっす!マジアットホームっす!」
ワタベ「・・・」
〇駅のホーム
ワタベ「・・・」
ワタベ「・・・?」
ワタベ「・・・!」
〇仮想空間
SAKURA「お疲れ様です」
SAKURA「昨日は感情的になってすみませんでした」
SAKURA「私こそ、こんな頭の固い女を 相手にしてくれて感謝しています」
SAKURA「・・・って。 これで卑屈自慢、おあいこですね」
SAKURA「すみません。 私も本当はこんな人間なんです」
SAKURA「ワタベさんさえよければ、 ゆるい感じでお友達になって頂けると 嬉しいです」
SAKURA「宜しくお願いします」
〇駅のホーム
ワタベ「・・・」
ワタベ「なに言ってんだ。今さら・・・」
ワタベ「ただの出会い系のくせに・・・」
ワタベ「・・・」
〇仮想空間
ワタベ「こ、こんばんは」
ワタベ「失礼を許して頂き有難うございます!」
ワタベ「こちらこそ宜しくお願いいたします!」
『かかった!』
〇店の事務室
キョウヤ「~♪」
キョウヤ「そうそう。 恋愛に設定なんかいらねーんだよ」
キョウヤ「こいつはサクラに・・・」
キョウヤ「いや、俺に夢中になるぞ」
キョウヤ「さあ、楽しもうか」
〇仮想空間
『ワタベサン』
『続く』


