第二話 「みじめな状況で偉そうなヤツ」(脚本)
〇怪しい実験室
景介とディーシャの前には、手足を重厚な金属の拘束具で封印されたロボがみじめに転がっている。
拘束された謎のロボ「フッフッフ、この曲に釣られて必ずここへ来ると思っていたぞ」
ロボの手足を封印している拘束具には、マジックで「はなすな、まじで」となぐり書きされている。
間宮景介「ディーシャさん、これロボですよね?」
ディーシャ・バジュランギ「うむ、ロボだナ。 拘束されたロボがみじめに転がってる」
ディーシャ・バジュランギ「日本にはたくさんのロボットアニメがあるから驚くことではないナリな」
間宮景介「僕は日本に住んでますけど驚きましたよ」
拘束された謎のロボ「キサマらに俺の名前を教えてやろう」
間宮景介「なんかエラそうなロボだな・・・」
拘束された謎のロボ「俺の名前は奥村(おくむら)ペーターゼン。 学問を支援するためのロボである」
拘束された謎のロボ「俺のことはペーターさんと呼べ。 わかったな?」
間宮景介「はあ・・・」
拘束された謎のロボ「俺の名前を言ってみろ」
間宮景介「・・・ペーターさん」
ディーシャ・バジュランギ「ペーターさん」
拘束された謎のロボ「フッ、いいだろう」
拘束された謎のロボ「では、クソ新入生であるキサマらに訊く・・・」
拘束された謎のロボ「学問とは何ぞや?」
ディーシャ・バジュランギ「わかりませン!」
間宮景介「早っ」
ディーシャ・バジュランギ「ワの国では、わからないと思ったらすぐに言うのがプライドの見せ所ヨ」
拘束された謎のロボ「フッ・・・、そっちのボンクラはどうだ?」
間宮景介「僕もわかりません!」
奥山ペーターゼン「フッフッフッフ・・・」
奥山ペーターゼン「ハッハッハッハ・・・」
奥山ペーターゼン「フッフッフッフッフッフ・・・」
ディーシャ・バジュランギ「笑いが長いなこのロボ」
間宮景介「答えは何ですか?」
奥山ペーターゼン「甘ったれるなこのクソガキ」
奥山ペーターゼン「いつも誰かが答えを与えてくれると思うな」
間宮景介(自分が訊いてきたくせに・・・。 なんかだんだんムカついてきたよ)
間宮景介「ディーシャさん、もう行きましょう。 本当に入学式に遅れてしまいます」
ディーシャ・バジュランギ「そだな。じゃあなロボ助」
奥山ペーターゼン「待てーい!」
奥山ペーターゼン「キサマらが草っぱらで話していた内容は聞こえていたぞ」
奥山ペーターゼン「俺は入学式が行われる明風ドームまでの道を知っている」
奥山ペーターゼン「教えてほしいだろう?」
間宮景介(う、教えてほしい・・・ でも教えてと頼むのはなんかむかつく・・・)
ディーシャ・バジュランギ「教えろロボ助」
奥山ペーターゼン「フッ、条件がある。この封印を解除しろ」
奥山ペーターゼン「そうすれば明風ドームまでこの俺が案内してやる」
ディーシャ・バジュランギ「おーけー」
間宮景介「ちょちょちょ、ダメだよディーシャさん!」
間宮景介「拘束具に書いてあることを読んで!」
ディーシャ・バジュランギ「『はなすな、まじで』」
ディーシャ・バジュランギ「もう「話し」ちゃったね」
間宮景介「その「はなすな」じゃなくて「放すな」です!」
間宮景介「封印を解除するなってことですよ」
ディーシャ・バジュランギ「そういう意味か、日本語まあまあ難しいなー」
奥山ペーターゼン「この落書きは気にするな」
間宮景介「いやどうしたって気になるでしょ!」
間宮景介「入学式は自力で行きます。さようなら」
奥山ペーターゼン「フッ、キサマはこの大学の広大な敷地の中に「奥地」と呼ばれる区域があるのを知っているのか?」
ディーシャ・バジュランギ「知りませン!」
間宮景介「奥地?」
奥山ペーターゼン「大学当局の管理が及ばない無法地帯だ」
奥山ペーターゼン「そこじゃあクセありワケありの、ひと筋縄じゃいかねえ学生や研究者たちが好き放題に活動している」
奥山ペーターゼン「何も知らない新入生が迷い込んだり、興味本位で近づいたバカが毎年のように奥地の住人にひどい目に合わされてるぜ」
間宮景介「・・・それがどうしたんです?」
奥山ペーターゼン「キサマがいるこの場所がすでに奥地の中だってことだ」
間宮景介「えっ!」
奥山ペーターゼン「自力で行くのは勝手だが果たして無事に奥地を出られるかどうか・・・」
間宮景介「そんな・・・。 ディーシャさん、どうしよう・・・」
ディーシャ・バジュランギ「おいロボ助、どうすればその封印とやらを解除できるんだ?」
奥山ペーターゼン「フッ、キサマはなかなか物わかりが良いようだな」
奥山ペーターゼン「そこにある操作盤のスイッチのどれかで解除ができるはずだ」
ディーシャ・バジュランギ「おーけー、これかな? ポチッとな」
ビビビビビビビビビビ!
奥山ペーターゼン「グガガガガガガガガ!」
ディーシャ・バジュランギ「あははははははは!」
間宮景介「電気が流れてる! 間違った操作をすると電気が流れるんだ」
奥山ペーターゼン「ガガガガガガガ!」
ディーシャ・バジュランギ「ひひひひひひっひひっひひひー!」
間宮景介「ディーシャさん、笑いすぎでは・・・?」
ディーシャ・バジュランギ「だって! ロボが! ぷひひ! ガクガクしてるもん!」
ディーシャ・バジュランギ「ぷひっ! アハハハハハハハハハハハハハ! 駄目だツボった!」
奥山ペーターゼン「ガガガガガガガ!」
間宮景介「ディーシャさん、ちょっとそこどいてください」
ディーシャ・バジュランギ「あいっ、プハハハハ!」
間宮景介「解除ボタン、これだ!」
ポチっ!
ガシャン!
間宮景介「外れた」
ディーシャ・バジュランギ「はあ、はあ・・・。 どうしてすぐわかった?」
間宮景介「拘束解除って漢字で書いてありました」
ディーシャ・バジュランギ「あちゃー、読めなかったよ漢字」
奥山ペーターゼン「ハー・・・、ハー・・・、その女・・・」
奥山ペーターゼン「許さん!!」
間宮景介「えっ!?」
ペーターが立ち上がり、ディーシャに掴みかかろうとする。
景介は咄嗟にディーシャの前に出て、ペーターを止める。
奥山ペーターゼン「ぬう、どけぃ!」
間宮景介「落ち着いてください! 漢字が読めなかっただけなんです!」
奥山ペーターゼン「黙れ小僧! そいつは笑いすぎだ!」
間宮景介「ディーシャさん、解除ボタンが解らなかったのは仕方がないですが、やっぱり僕も笑いすぎだったんじゃないかと思います」
ディーシャ・バジュランギ「確かに、腹がよじれたよ」
間宮景介「そこだけでも謝りませんか?」
ディーシャ・バジュランギ「ワは王族だから下々の者に軽々しく謝ってはいけない掟があるよ・・・」
奥山ペーターゼン「どけぃ、小僧!」
ディーシャ・バジュランギ「でも、ここは日本だね」
ディーシャ・バジュランギ「ロボ助さん、たくさん笑ってごめんなさい」
間宮景介(・・・王女様がこんなにきちんと頭を下げて謝ってる・・・)
間宮景介(ああ、なんだろうこの気持ち・・・)
奥山ペーターゼン「フッ、そう正面切って謝られちゃあこの俺も収めるしかないようだな」
奥山ペーターゼン「おい、景介とやら」
奥山ペーターゼン「キサマ、この俺の前に立ちふさがるとは少しは気概があるようだ」
奥山ペーターゼン「気に入ったぞ」
奥山ペーターゼン「キサマが大学を卒業するまでの4年間、俺が学問支援ロボとして24時間付きっきりでサポートしてやろう」
間宮景介「えーっ! けけ、結構です!」
間宮景介(こんな厄介そうなロボと24時間いつも一緒にいるなんてとんでもない!)
奥山ペーターゼン「フッ、遠慮をするな」
奥山ペーターゼン「俺は学問支援ロボ、奥村ペーターゼンである!」
ディーシャ・バジュランギ「おめでとー!」
第3話に続く・・・