龍使い〜無間流退魔録外伝〜

枕流

第漆拾話 白虎(脚本)

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〇草原の道
姫野晃大「・・・はい?」
  気が付けば、学校の屋上とは別の場所にいた。
梶間頼子「・・・え?」
穂村瑠美「ここ、どこ?」
  瑠美と頼子も一緒にいる。
  広い道がどこまでも続く平原。
  理解が追いつかない。
  そんな三人の目の前では、

〇草原の道
竹村茂昭「オオオッ!!」
橘一哉「エアアッ!!」

〇草原の道
  茂昭と一哉が激しくぶつかり合っていた。
穂村瑠美「どうする・・・?」
  困った顔で晃大を見る瑠美。
姫野晃大「どうしようもないな、これは・・・」
梶間頼子「割って入るのは難しそうだね・・・」
  得物を持つ手の力が抜けていく。
  茂昭と一哉。
  白虎と黒龍。
  二人の気迫。
  ぶつかり合う力の余波。
  それらは、外部からの介入が不可能ではないかと思わせるには充分すぎた。
姫野晃大「止まるのを、待つしかないかな・・・」

〇草原の道
  正直な所、茂昭は驚いていた。
  無手でも戦える一哉にではなく、己の力に、である。
  戦うのであれば、武器は必須。
  そう思っていたし、白虎も彼の意思を汲んで得物を用意してくれた。
  白虎の力を宿した長巻だ。
  長巻は扱いやすい。
  長柄武器に対抗すべく長大化した刀が野太刀である。
  その野太刀を扱いやすくするために長い柄を持つことになったのが長巻である。
  長柄に反り身の片刃ゆえに、薙刀に通ずる所がある。
  人外の怪物と戦うのなら、扱いやすい武器を。
  その結果が、長巻という結論だった。
  だが。
竹村茂昭(素手の方が、楽だ)
  長巻を振るうよりも、素手で戦う方が戦いやすい。
  四肢に漲る力。
  自然と口をついて出る咆哮。
  武器などなくとも、我が身一つあれば十二分に戦えると、茂昭は強く確信していた。
  手に武器を持つなど、むしろ邪魔でしかないとさえ思えた。
  それほどまでに、今の茂昭は自由自在に、思い通りに、身体を動かすことができている。
竹村茂昭(これなら、カズに勝てる!)
  少なくとも、負けはしない。

〇草原の道
橘一哉(クソっ・・・)
  それに対し、一哉は違和感に悩まされていた。
  身体は動く。
  気脈も淀みはない。
  しかし、
橘一哉(これは本当に俺なのか・・・?)
  動きに違和感がある。
  黒龍の宿主として覚醒して早五年が過ぎ、六年目。
  龍使いの中では最も歴が長い。
  黒龍と一哉の親和性は龍使いの誰よりも高くなっている。
  黒龍の力を違和感なく思い通りに使えるようになってきてはいる。
  それでも、
橘一哉(何かが違う・・・)
  刀から素手への戦闘法の変化。
  司から素手の戦いの基本を教わったとはいえ、素手の戦闘歴は一ヶ月にも満たない。
  今まで戦った相手の中でも、茂昭は強敵の部類に入る。
  学園祭での他流試合の時とは全くの別人と言って良い。
  その姿は正に虎。
  力強く、しなやかで、覇気に満ちている。
  素手の技も、至極自然に繰り出してくる。
  薙刀を持った時よりも、長巻を手にした時よりも、遥かに自然に。
  猛獣と相対しているかのような緊張感が一哉の全身に流れている。
  そんな茂昭を相手に、
橘一哉(素手は無茶だったかなぁ・・・)
  未だ浅学で練り込みが足りず、付け焼き刃の素手では分が悪い。
  しかも、咄嗟の時に刀を使っている時の感覚が出てしまう。
  手の内までは良くても、指先への気の通しが不十分。
  結果、良くて相打ち、悪ければ弾かれて崩されそうになる。
橘一哉(やべぇですよコレは・・・)
  久々に、危機感に襲われていた。

〇草原の道
  報復の連鎖は好まない。
  まして、当事者が納得しているなら尚更のこと。
  しかし、それでも茂昭は行動に移った。
  四神の先達である玄武の宿主・如月玄伍の負傷。
  相打ちとは言うが、それでも矢張り茂昭には我慢がならなかった。
  同志であり恩義のある相手が手傷を負ったのを看過できなかった。
  たとえ友が相手であろうとも。
  一哉が刀を失い、素手に闘法を変えたのは意外だった。
  だが、

〇センター街
白虎「白虎招式、その全伝を伝えよう」

〇草原の道
  白虎招式と称する体系の伝授には、もっと驚かされた。
  武器を用いず、己の五体のみで繰り出す白虎の奥義。
  そのようなものが存在していたとは。
  しかも、その技は、茂昭の心身にこれ以上無いほどに馴染んだ。
  生来会得していたかのように、心身によく馴染んだ。
  無理なく、無駄なく、自由自在に。
  一々考えなくても、身体が自然に動く。
  そして、
竹村茂昭「うおおっっ!!!」
橘一哉「ッッ!!!!」
  効いている。
  一哉を追い詰めている。
竹村茂昭(勝てる!!)
  このままいけば、一哉から一本取れる。
  玄伍の雪辱を晴らすことができる。
  そう思った、矢先。

〇草原の道
橘一哉(負ける訳には、)
  いかない。
  友が相手でも、四神が相手でも。
  元はと言えば、力試しのはずだった。
  闇の対極の属性である光。
  その光を属性とする光龍を相手にする事で、全力の力試しをする予定だった。
  だが、予定が狂って玄伍の仇討ち名目の茂昭と戦うことになってしまった。
  元々が力試しであるから、勝敗は拘らなくても良いはずだ。
  しかし、一哉の武人としての矜持が敗北を許さない。
橘一哉(朱雀招式は合わないのかな)
竹村茂昭「オオオッ!!」
  大きく踏み込み、震脚と共に茂昭が掌打を打ち込む。
橘一哉「ぐっ・・・!!」
  重い衝撃。
  少しでもダメージを軽減すべく後ろへ飛び退く一哉。
竹村茂昭「もう終わりか?」
橘一哉(朱雀招式は、龍には合わないか・・・?)
  司の戦い方は朱雀の戦い方。
  『朱雀招式』と称され、鳥類を模した形が多い。
  龍を宿す一哉には、合わないのだろうか。
橘一哉(いや、そんなことはない)
  答えは否。
  龍にも翼を持つ種は存在する。
橘一哉(・・・翼を、)
  朱雀の、鳥類の翼ではない。
橘一哉(俺の、翼を)
  一哉の宿す龍に、翼を。
橘一哉「ふうぅ・・・」
  深呼吸して心身を整える。
  イメージする。
橘一哉(翼を)
  黒龍が翼を保っていた記憶はない。
  だが、
橘一哉「見せてみろ、黒龍」
  お前の、翼を
黒龍「よかろう」
  一哉の全身が脈打ち、
  神 気 発 勝
  気が膨れ上がり、
  黒い霧が全身から吹き出す。
橘一哉「いくぜ、シゲちゃん」
  足をやや開いて腰を落とし、両腕を広げて前傾姿勢となる一哉。
竹村茂昭「・・・来い」
  対する茂昭も全身に白虎の金気をみなぎらせて迎撃態勢をとる。
  二人は互いに己の気を高めながら睨み合う。
  茂昭の全身に虎の縞模様が浮かび上がる。
  衣服の下から透けて見える程に濃密で光り輝いている。
  一哉の左腕に黒い龍の痣が浮かび上がる。
  痣からは黒い火の粉のようなものがチリチリと舞い散り、翼のようにも見える
  そして、
「いくぞ!!」
  二人は同時に地を蹴った。

〇草原の道
姫野晃大「ヤバいぞコレ!!」
  二人の激突の余波が如何程のものか、晃大にも瞬時に理解できた。
梶間頼子「どうすんのコレ!」
穂村瑠美「迷ってる暇は無いわよ!」
  三人が出した結論は一つ。
「────────!!!!!!」
  得物を構え、それぞれが呪言を唱えた。
  発した瞬間に言語から力へと即時に変換される、龍の呪言。
  その呪言に乗せたイメージは、
  雷の網。
  炎の壁。
  光の幕。
  それぞれが、我が身を守るための盾だった。
  その向こう側では、

〇草原の道
橘一哉「おおおっ!!」
  全身の気脈を流れる龍の力。
  そこに、もう一つのイメージを上乗せする。
橘一哉「羽撃け!翔べ!!」
  龍の力の流れを加速する翼の羽搏き。
  気脈の流れに垂直に伸びる力を想像し、創造する。
  その力を動かし、気脈の流れを加速させる。
橘一哉「いけえっ!!」
  そうして加速させ、より鋭くなった力を、一哉は目一杯突き出した。

〇草原の道
竹村茂昭(飛んだ!?)
  今までと違う一哉の突撃に茂昭は一瞬驚いたが、
竹村茂昭(捉える!!)
  両手の五指に力を込め、一哉の一撃を真正面から押さえにかかる。
  相打ちなど以ての外。
  相手が仕掛けてくるならば、その攻撃ごと叩き潰す。
  白虎剛裂爪・双虎撲

〇草原の道
橘一哉「おおおっ!!」
  対する一哉も、真正面から。
  白虎招式の奥義と、生まれたばかりの名も無き技がぶつかりあい、
  眩い光が辺りを包み込んだ。

〇荒野
姫野晃大「・・・生きてる・・・よな?」
  全てが収まった時、周囲の景色は更に一変していた。
穂村瑠美「大丈夫?」
姫野晃大「何とか・・・」
  瑠美の問いに頷く晃大。
梶間頼子「うわぁ、何これ」
  広い道は辛うじて痕跡が残っている。
  草原は見渡す限りの荒野へと変わり果てていた。
  その一角で、

〇荒野
橘一哉「やるじゃん、シゲちゃん」
竹村茂昭「カズ、お前もな」
  一哉と茂昭が互いの手を交差させたまま立ち尽くしていた。
橘一哉「引き分け、だね」
竹村茂昭「そうだな」
  二人は頷き合い、どちらからともなく手を引いた。
橘一哉「いい力試しになったよ」
竹村茂昭「俺も、これでスッキリした」
  ハハ、と茂昭は笑う。
竹村茂昭「司さんの指導も無駄じゃないみたいだな」
橘一哉「あたぼうよ」
竹村茂昭「じゃ、俺は戻るよ」
橘一哉「俺もそうしますかね」
  そう言って二人は踵を返し、
「何じゃこりゃああぁ!?」
  自分たちの周りに広がる光景を見て素っ頓狂な声を上げた。

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