Confined Canvas

折瀨蔵人

読切(脚本)

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〇渋谷駅前
  2022年冬
  東京・渋谷────

〇渋谷駅前
シルエット1「でさ、インスタで見たんだけどさー もうマジでウケんの!」
シルエット2「ギャハハ! やば!」
シルエット3「それガチ? あいつら別れたんじゃね?きっつー」
  ザワザワ・・・
咲良(今日のランチ、すっごい美味しかったな)
咲良(あの店、大牙にも教えてあげよ)
咲良「・・・送信っと」
咲良(最近、食しか楽しみがないな)
咲良「・・・」
咲良(私、このままでいいのかな)
咲良「大牙・・・」
咲良「会いたいよ・・・」
  ブブブッ
咲良「大牙からだ・・・」
  『てか咲良のチョイス良すぎて、今すぐ飛んでいきたいくらいだわw』
咲良「クスッ クスクスッ」
咲良(やば、元気でる)
咲良「・・・」
  ヴーン
咲良(あ、大牙から電話だ)
咲良「もしもし?」
咲良「あのお店のオムライス、食べたくなっちゃった?」
大牙「いや、オムライスの話じゃないんだけどさ」
大牙「今日って仕事何時まで?」
咲良「どうだろう。 たぶん、少し残業することになるかな」
大牙「そっか、いっつも大変だよな。 終わったらギュッてしてあげたいよ」
咲良「えっ・・・あ、うん」
咲良「そうしたいよ・・・ ほんとだよ」
咲良「大牙、次にそっち帰れるのまた5月になりそうなんだ。ごめんね、なかなか会う時間作れなくて・・・」
大牙「そっか・・・」
大牙「でも咲良が頑張ってる証拠だしさ。 俺も、咲良にいっぱい会えるようにもっともっと頑張んないとな」
咲良「うん・・・」
咲良「ありがと大牙。 お互い頑張ろうね」

〇広い改札
  19:40 渋谷駅
咲良「着いたぁ」
咲良「今日は早く終わったし 帰って料理でも作ろうかな・・・」
???「咲良っ!」
大牙「おつかれさま!」
咲良「大牙!?」
大牙「会いたすぎて来ちゃったわ! いやー・・・残業だったら待ちぼうけになると思ってヒヤヒヤしたよ」
咲良「もー! 連絡してくれたらもっと早く電車乗ったのに・・・」
大牙「・・・」
大牙「おかえり、咲良」
咲良「・・・」
咲良「ただいま・・・」
  ギュッ
大牙「おつかれのハグな」
咲良「うん・・・」
咲良「ありがと・・・」

〇川に架かる橋
大牙「これ、母ちゃんが持ってけってさ」
大牙「うちのカステラ。 食べる?」
咲良「ほんとに? 大牙の店のカステラすごい美味しいよね!」
咲良「よくお母さんと買いに行ってたんだよ」
大牙「俺のじゃなくて親の店な」
大牙「てか、 あげる度にそれ言ってくれるよな咲良って。 すげー嬉しいよ、ありがと」
咲良「うん、このカステラで育ったって言っても過言じゃないよ」
咲良「ありがと大牙。 次会ったときに大牙ママにもお礼言うね」
大牙「てか咲良、まだご飯食べてないよね?」
咲良「うん、大牙もでしょ?」
大牙「まだだね。 どこか寄ってく?」
咲良「うーん・・・」
  ・・・・・・
  ・・・・・・・・・
大牙「・・・あれ、さくちゃん? 寝ちゃった?」
咲良「あのね大牙、 今日仕事早く終わったって言うのもあるんだけど・・・」
咲良「大牙来てくれたし、 料理を作ろうと思ったんだけどい──」
大牙「マジで!? 食べたい!」
咲良「うん、じゃそうするね」
咲良(そういえば大牙に料理作ったのって、 地元にいた時に一回、玉子焼き作ったきりだったかな)
咲良(前回も外食だったし・・・ 大牙に栄養満点のもの食べてもらうには 冷蔵庫の中身のラインナップが心許なさすぎる!)
咲良「・・・」
咲良「スーパー寄ってこ?」
大牙「いくいく」

〇女性の部屋
  咲良の部屋
大牙「うまいっ!」
大牙「うまい! うまい!」
咲良「よかった〜 大牙、餃子好きだもんね」
咲良「食材買い足してよかった」
大牙「前に付き合い始めた頃、一回卵焼き作ってくれたことあったけど、あれもめちゃくちゃ美味しかったんだよなぁ」
大牙「咲良は料理上手なのはあの頃から知ってたけどね」
咲良「そんなことないよ。 あの頃は就活とかでバタバタしてて なかなか会う時間無かったよね」
咲良「そのまま私は上京 大牙は地元の木工屋さんに就職して・・・ なんていうか・・・」
大牙「咲良?」
咲良「今も会えない時間が続いてて この先やってけるのかなって・・・ 最近思った」
大牙「・・・それってさ」
大牙「俺たちやってけないとかそういう意味?」
咲良「違う、私たちじゃなくて」
咲良「大牙と一緒にいたいのに それを犠牲にしてまで、このまま東京にいる意味って私にはあるのかなって」
大牙「・・・」
咲良「・・・私のわがままなんだけどね」
咲良「地元にかえ──」
大牙「咲良」
大牙「咲良はなんで東京に来たの?」
咲良「え・・・」
咲良「出版社に勤めたくて・・・」
大牙「それ、叶えたんでしょ?」
大牙「咲良ってすげーよな。 前から思ってたけど、勇気ある」
大牙「だってさ、あんな遠い街からこの大都会の渋谷だぜ?なかなか来る決心つかないよ」
咲良「・・・」
大牙「それに俺、咲良の頑張ってるとこすげー好きだし」
大牙「でも、どうしても咲良がそうしたいって言うならそれでもいいと思う」
大牙「どこにいて、どんな仕事してても 咲良と一緒にいたい気持ちは 絶対変わらないからさ」
咲良「大牙・・・」
大牙「だからさ、どんな形になっても 俺らは俺らじゃん?」
大牙「な?咲良」
咲良「うん・・・」
咲良「うん・・・ありがとう大牙」

〇黒
  冷たい風にさらされてた気持ちが
  あったかくて、まるで雪解けのような
  そんな気持ちになる。
  大牙・・・
  私、決めたよ

〇大企業のオフィスビル
  あれから1ヶ月──。
  この狭い空に見える飛行機雲は
  相変わらず尻尾を出さない。

〇SHIBUYA109
  急ぐ背中にぶつかって
  立ち止まりそうなときもあるけど
  君がいるからまた歩き出せる──

〇渋谷のスクランブル交差点
  ──ねえ、
  君の街の空にも延びてるかな
  この終わりの見えない雲が。

〇川沿いの道
  私もこの雲を追いかけてるから。
  君も見つけたら追いかけてね
  ずっとずっと──
  私は生きていくよ
  この”渋谷”で────

コメント

  • 遠くにいても、心はいつもそばにいてくれる彼ですね。
    春風のように温かく優しく包んでくれる、素敵な人だと思います。
    彼女の選んだ道を否定せず見守ってくれるなんて、すごいと思いますよ。

  • 頑張って頑張って、でも本当に自分はこれでいいのか、って考えられる人は成長できる人だと思う!
    そして自分の本心と相手のことを思える人もまた魅力的な人ですよね。

  • 遠距離で愛し合っている2人、葛藤も生じればエゴによる諍いも生まれてくることもあります。そんな中、大牙の包み込むような優しさが素敵です。2人の結びつきが良いですね。

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