スミレとミドリの口封じ①(脚本)
〇おしゃれな居間
2日目
警察が来るまであと3日
翌朝のリビングには、ミドリ、アカイ、スミレ、俺の4人が居合わせていた
話題がシラユキになってしまうのは、自然な流れだ
昨日キザワから疑惑の目を逸らすことに成功した俺は
”このまま警察も騙せるんじゃないか?”
心のどこかでそう思っていたのかもしれない
その油断が仇となった
スミレ「ふーん、で?どうして死んじゃったの?」
ミドリ「スミレちゃん・・・ちょっと言い過ぎ」
スミレ「え?あんた、気にならないの?」
ミドリ「そうじゃなくて・・・」
クロダ(デリカシーのない女だな)
クロダ「まあ確かに、なんで落ちたかは謎だ」
軽い気持ちで口を挟むと、一瞬にして静まり返った
ミドリ「・・・・・・」
ミドリの刺すような視線を浴びた時には、自分の失言に気づく
ミドリ「クロダくん、どうして”落ちた”なんて知ってるの?」
クロダ「あ、それは・・・」
クロダ(そうだよ。落ちて死んだなんて、誰も考えないじゃないか・・・)
クロダ(考えろ、考えろ、考えろ、考えろ)
凍りついた空気を見かねて、アカイが俺とミドリの間に割って入る
アカイ「俺だって推理くらいしたよ、事故か?他殺か?はたまた自殺か!?」
クロダ(ナイス助け舟、アカイ様・・・!)
クロダ「そうそう、推理推理・・・」
クロダ「うん・・・頭の中で考えたことをそのまま口に出してたよ。たかが推理なのにさ、はは」
ミドリ「私、部屋に戻るね」
ミドリは俺に視線をよこすことなく、部屋へ戻ってしまった
スミレ「あんた・・・なんかあるなら、早いところ自白しなよねぇ。じゃあ」
アカイ「こんな状態だからさ、口には気ぃつけとけよ?じゃあな」
クロダ(ミドリもスミレも俺を疑ってるよな・・・)
クロダ(ミドリとスミレ・・・一度に二人も疑われてしまった)
クロダ(とにかく二人の誤解を解かないと)
〇黒
裏工作
ミドリとスミレの口封じ
〇綺麗な一人部屋
三階
ミドリの部屋
ミドリ「・・・」
クロダ「ミドリ・・・シラユキが落ちて死んだのかもっていうのは、本当にただの思いつきなんだ」
クロダ「割と推理とか好きで」
ミドリ「何もやましいことがないなら、言い訳する必要ないと思うよ?」
クロダ(くそ・・・大人しいから丸めこめると思ったけど・・・)
クロダ(馬鹿なキザワよりよほど手強そうだ)
ミドリ「出て行って」
〇一人部屋
二階
アカイの部屋
アカイ「どうした、クロダ?」
クロダ「犯人扱いで精神的にツラい」
アカイ「ああ、さっきの」
アカイ「ミドリはシラユキの死でショック受けてたし、過敏になってるんだろう」
アカイ「あんまりに気にすんなよ」
クロダ「ミドリの誤解を解きたいんだけどさ・・・なんかいい方法ないかな?」
アカイ「今はそっとしておけよ」
アカイ「だって話したくないから、あいつ部屋に戻ったんだろ?」
クロダ(もっともだ)
アカイ「それよりも誤解を解くならスミレだ」
アカイ「スミレって口軽いし、アオキになんでも話しそうじゃん?」
クロダ(アカイみたいに、アオキやキザワが信じてくれるとは限らないよな・・・)
アカイ「そうだ、いいこと教えてやるよ」
アカイ「スミレは尽くしてくれる男がタイプって言ってたよ」
クロダ「は!?」
クロダ「俺は別にスミレと付き合いたいわけじゃ・・・」
アカイ「あはは、俺は機嫌を取れって言ってるんだよ」
クロダ(ただでさえ、スミレは苦手なんだけど・・・スミレの機嫌を伺いに行ってみるか)
〇綺麗な一人部屋
二階
スミレの部屋
スミレ「コンビニもないし・・・最悪・・・」
スミレ「あー・・・ツケマ高かったっつうのに・・・最悪・・・」
クロダ(アカイが機嫌取れって言ってたよな)
クロダ「何か探してるのか?手伝うけど」
スミレ「ふーん、じゃあツケマ探して。よろしく」
クロダ「机の上を探すか・・・ツケマツケマ・・・」
クロダ(うわっ!虫!!)
クロダ「あれ?よく見たら違う・・・?」
クロダ「あ、あった!」
スミレ「あー、見つかった?おつー、そこ置いといてー」
クロダ(人に探させておいてあの態度・・・いや、我慢だ我慢)
クロダ「なあ、他に何か困ってることとかない?」
スミレ「あんた、急になんなの?」
スミレ「まあ、いいけど。喉が渇いたから、なんか持ってきて」
クロダ「ああ。そうしたら話聞いてくれるか?」
スミレ「うん、持ってきてくれたら聞いてあげなくもなくもないかなーてきな?アハハ」
クロダ「わかった」
クロダ(ただいいように使われてるだけじゃないか、これ・・・)
〇おしゃれなキッチン(物無し)
一階
キッチン
クロダ「色々な飲み物があるな」
クロダ「紅茶を持って行くか」
〇綺麗な一人部屋
スミレ「はあ?これしかなかったの?」
スミレ「・・・・・・・・・・・・ぶはぁ〜」
クロダ(文句言いつつ全部飲み干したけど・・・)
スミレ「ん、じゃあ、もういいから。出て行って」
クロダ「え?いや、話を聞いてくれるって・・・」
スミレ「あんた自分の立場、わかってる?」
スミレ「あたしもね、あんたがシラユキ殺したんじゃないかーって思ってんの」
スミレ「あんたが会議で怪しいって言うから」
クロダ(くそ・・・絶対最初から話聞く気なかったな、こいつ・・・!)
スミレ「・・・・・・」
クロダ「まあ、そう言わずに」
スミレ「うるさい」
クロダ「そこをなんとか」
スミレ「早く出て行ってよ!」
クロダ(そう言われても引き下がれないんだけど・・・)
スミレ「・・・!」
クロダ「?」
クロダ(今度はモジモジし始めたぞ)
スミレ「とにかくあんたに構ってる暇はないから」
クロダ「なんなんだ?」
〇部屋の扉
一階
トイレ前
???「最悪・・・」
クロダ(あれ?この声はスミレ?なんかぶつぶつ呟いてるみたいだけど)
スミレ「ちょっと、誰かそこにいんの?」
クロダ「え、あ、俺だよ」
スミレ「クロダ、さっきなんでもやるって言ってたよね?」
クロダ(困ってることないかって聞いただけなんだけど)
クロダ「どうかした?」
スミレ「ミドリ、呼んできて」
クロダ「え?ミドリならスミレが呼んだ方が・・・」
スミレ「いいからここにミドリ呼んできてって言ってんの!!」
クロダ(トイレから出られないのか?)
クロダ「いいけど、条件がある」
スミレ「はあ!?あんたね、自分の立場分かってんの!?」
クロダ「スミレ、そのセリフそっくりそのまま返すよ」
クロダ「俺は別にこのまま部屋に戻ってもいいし」
クロダ「そうだな、アオキに教えてやってもいいかもしれない」
クロダ「きっと優しいアオキから助けてくれると思うよ」
スミレ「ミドリ以外に言ったら、殺すから!」
クロダ「殺すとか・・・そんな不謹慎な話やめろよ」
クロダ「で、どうするんだよ?」
クロダ「今朝の俺の推理を内緒にしてくれるなら、話聞いてあげるけど?」
???「くそっ、てめぇ!!・・・・・・わかったから!!」
クロダ「約束破ったら”紙切れトイレ立て篭もり事件”アオキに言うからな」
スミレ「うるっさい!!黙れっ!!」
スミレ「約束するからミドリ呼んで!!」
クロダ(ちょっとスッキリした)
〇綺麗な一人部屋
三階
ミドリの部屋
ミドリ「また言い訳?」
クロダ「ううん。言い訳は必要ないって、ミドリが言ってたからさ」
ミドリ「シラユキさんとは無関係ってこと・・・?」
クロダ「うん。堂々としてることにしたよ、殺してないし」
ミドリ「それをわざわざ言いに来たの?」
クロダ「ううん。スミレがミドリに、トイレまで来てほしいそうだよ」
ミドリ「どういうこと?」
クロダ「さあ?多分トイレットペーパーを持っていけば解決すると思う」
ミドリ「そういうこと。わかった」
部屋を出て行こうとしたミドリが俺を振り返った
ミドリ「クロダくん、ごめんね」
クロダ(ミドリが俺に微笑んだ?)
ミドリ「私はやっぱり・・・・・・」
ミドリ「あなたがシラユキさんを殺したんだと思う」
クロダ(もしかしたら、ああいうタイプが一番敵に回したらいけないのかもな)
クロダ(とにかく少し部屋を見せてもらうか)
キャバ嬢の名刺だ
クロダ「ミドリがもらったのかな?」
クロダ「ミドリがキャバクラに行くなんて意外だ」
クロダ「・・・・・・」
クロダ「いやいや!ミドリ本人の名刺だ!!」
クロダ「えええええ!!」
クロダ「あの大人しそうなミドリが!?!?キャバクラで働いているのか!?」
クロダ「女子って怖い・・・」
ミドリのスマホが鳴っている
クロダ「ちょっと画面を覗いてみよう」
クロダ「!?」
クロダ「シラユキから100万円も借りてるのか!?」
クロダ「とんだ大金だな」
クロダ「一体何に使うんだ?」
プリクラが落ちている
クロダ「ミドリと・・・もう一人誰だ?」
クロダ「見たことない人だな・・・」
クロダ「ミドリもプリクラとか撮るんだ」
〇古めかしい和室
一階
和室
クロダ「なんだろう・・・くしゃくしゃの紙がある。開けてみよう」
クロダ「催告書?実物は初めて見た・・・」
クロダ「ミドリ宛だ。ミドリに借金が・・・?」
クロダ「支払額1000万!?」
クロダ「どんな金の使い方してるんだ・・・」


