〇駅のホーム
ワタベ「ふぁ～・・・」
小野田「お疲れ」
ワタベ「お疲れ様です」
小野田「どう、これから一発」
ワタベ「朝ですよ。それに自分、下戸だし」
小野田「一杯じゃないよ。一発。奢るよ」
ワタベ「・・・いいです。そういうの。朝だし」
小野田「朝だからだろ。安いし」
ワタベ「結構です」
小野田「今時の子は草食だね」
ワタベ「子って。もう四十過ぎてます」
小野田「じゃあこういうのはどうかな～？」
ワタベ「・・・？」
ワタベ「うん？」
小野田「ソッチの携帯にリンク送ったから」
ワタベ「なんのアドレスですか？」
小野田「イ・イ・ト・コ・ロ」
小野田「さてと。もうひと疲れしてくるか～」
ワタベ「分かってないんだろうな。 どこ行っても、 気持ち悪がられてるだけだってことに」
ワタベ「ああいうオッサンは・・・」

〇電車の中
ワタベ「・・・」
ワタベ「ルナガーデン・・・？」
ワタベ「なんだこれ。出会い系？」
ヤカラ「・・・ｚｚｚ」
ワタベ「・・・」
ヤカラのツレ「・・・！」
ワタベ（どいつもこいつも何イキってんだか）
ワタベ（往生際悪いんだよ。 終わってるんだよ俺らは）
ワタベ（主任て言っても印刷工場だろ。 何、必死になってんだよ。 青いね、クソガキ）
ヤカラ「おいオッサン！」
ワタベ「え？」
ヤカラ「撮ってたろ」
ワタベ「え？」
ヤカラのツレ「撮ってた。私の足。スマホ向けて」
ワタベ「と、撮ってないです！」
ヤカラ「見せろスマホ！」
ワタベ「あ、いや！あの！ちょっと！」
「・・・!?」
「ルナ・・・ガーデン・・・？」
ワタベ「・・・」
ヤカラ「サ、サーセン・・・」
「え？出会い系？」
「バカ、お前そこ掘り下げんなよ」
ワタベ「・・・」
ワタベ（クソばっかだ・・・）
ワタベ（どいつも・・・）
ワタベ（こいつも・・・）

〇電車の中
ワタベ（どいつも・・・）
ワタベ（こいつも・・・）
　　どいつもこいつもどいつもこいつも・・・

〇パールグレー
　　ウルセエウルセエウルセエウルセエ！
　　ごめんなさい。
ワタベ「・・・」
ワタベ「・・・え？」

〇狭い畳部屋
ワタベ「・・・なんだ？」
　　メッセージを見てくれてありがとう。
　　そしてあなたの大切な人じゃなくてごめんなさい。
ワタベ「・・・勧誘？ ・・・宣伝？」
ワタベ「鬱陶しい」
　　でも、もしあなたが
　　私を必要としてくれるのだったら返信を下さい。
　　私は誰かに必要とされたい。
　　そしてそれがあなただったら嬉しいです。
　　まだ見ぬあなたへ・・・。
ワタベ「・・・」
ワタベ「ははは・・・しょうもな」
ワタベ「・・・」
ワタベ「・・・」
ワタベ「・・・」

〇仮想空間
　　はじめまして。
　　メッセージ、受け取りました。
　　こういうのは初めてで、ネットも不得手で。
　　なんか・・・すみません。
ワタベ「・・・」

〇狭い畳部屋
ワタベ「・・・」
ワタベ「・・・アホらし」
ワタベ「・・・！」
　　続く