1(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
あの・・・
そこに何が映ってるんですか?
何が見えてるんですか?
僕には・・・もう何も・・・
ワタベ「何も・・・」
〇渋谷の雑踏
CODE SAKURA
〇白
キョウヤ「俺に話しかけてるのか・・・?」
キョウヤ「俺に話しかけてるのか・・・?」
キョウヤ「俺に話しかけてるのか・・・?」
『恭也~』
『まだ~?』
キョウヤ「・・・チッ」
〇白いバスルーム
キョウヤ「アプローチだよアプローチ。 気持ち入れてんだろーが」
『え~?なに~?』
キョウヤ「タクシードライバーくらい見とけよ。 クソみてーな韓流ばっか見やがって」
『なんかわかんないけどごめーん』
キョウヤ「・・・ふん」
キョウヤ「俺に話かけ・・・」
キョウヤ「あ!」
キョウヤ「あっぶね。 こんなとこに生えてやがった」
キョウヤ「一本たりとも~♪ 一本たりとも~♪」
『まだ~?』
キョウヤ「あ~もう!今いくから!」
キョウヤ(サカリババアが・・・)
〇シンプルな一人暮らしの部屋
〇シンプルな一人暮らしの部屋
朋絵「・・・よっと」
キョウヤ「・・・んだよ。 ソッコー服着て電気つけんなよ。 余韻ゼロかよ」
朋絵「・・・」
キョウヤ「なに?」
朋絵「女の子みたいだね。肌すべすべ」
キョウヤ「生まれつきムダ毛生えてこねーんだよ。 そのくせ髪ボサボサでさ。 あー、めんどくせー体質」
朋絵「可愛い」
キョウヤ「どいて」
朋絵「なにしてんの~?」
キョウヤ「仕事」
キョウヤ「っていうか~」
キョウヤ「仕事、兼、ボランティア」
朋絵「・・・?」
〇SNSの画面
キョウヤ「ログイーン!ルナガーデーン!」
キョウヤ「キョウヤ~ON!」
キョウヤ「・・・つって」
〇仮想空間
Virtual Matching Site
LUNA GARDEN
キョウヤ「お疲れ様でーす。 バイト忙しくて返信遅れちゃいましたー」
まいたけ「もしかして~怒ってます~(汗)?」
まじめぶちょー「ううん。全然大丈夫だよ。 こっちも仕事仕事で忙しくてさ」
まいたけ「今ってお話できますか~」
まじめぶちょー「まあちょっとならいいけどさ なにぶん忙しくてさ でもちょっとだけならさ」
まいたけ「うれしー!」
〇店の事務室
キョウヤ「忙しいわりにレス早いじゃないっすか~」
キョウヤ「イイお仕事っすね~自宅警備っすか~」
キョウヤ「なーんてことは勿論言わず・・・」
キョウヤ「う~れし~♪」
まいたけ「嬉しい! 実はちょっと相談したいことがあって~!」
〇仮想空間
サトシ@炎(ファイアー)「ってかさー、反応遅くね?」
サトシ@炎(ファイアー)「もしかして昨日のこと怒ってる? なんかこっちも説教入ちゃって」
Tik「怒ってる!」
サトシ@炎(ファイアー)「ご、ゴメン」
Tik「うそー!」
Tik「サトシさんもゥチのこと 思って言ってくれたんだよね。 だからまぢ嬉しかった」
サトシ@炎(ファイアー)「そうなの?」
Tik「うん、嬉しかった!ありがと!」
サトシ@炎(ファイアー)「・・・」
サトシ@炎(ファイアー)「・・・からの~?」
〇店の事務室
キョウヤ「調子のってんじゃねーよ殺すぞオッサン」
〇仮想空間
大河君「お疲れ様です昨日寝落ちしちゃったんだね遅くまでゴメンね卒論どう?例の応仁の乱と長子相続制について説明不足かなと思っ」
大河君「ってもう少しアドバイスできるかなと思ったんだけど迷惑なら無視して全然大丈夫だからでも僕的には」
〇店の事務室
キョウヤ「重ッ!長ッ!怖ッ!クドッ!キモッ!」
うっちい!「サセンッ!お疲れ様ッス!サセンッ!」
うっちい!「サセン!ソッコー交代します!サセン!」
キョウヤ「すみませんでした、だろ」
うっちい!「サセンッシタッ!」
キョウヤ「また止まったの?中央線」
うっちい!「そうなんっすよ~ 人身!マジ人身! やっぱこれからは時間かかっても京王線で」
キョウヤ「止まってねーよ! 調べりゃ分かるんだよバカ!」
キョウヤ「君、いつの時代の若者ですかァ? 今はインターネットっていうものが 世の中にあるんですよォ!」
キョウヤ「ご存じですか?インターネット! 略してネットって 呼ばれてるんですけどォ!」
うっちい!「サセンッ!サセンッ! 知ってます知ってます! 僕達の商売道具!」
キョウヤ「さっさと代われ殺すぞ」
うっちい!「はい!死にたくないんで交代します! お疲れ様でした!」
うっちい!「ログインルナガーデン! うっち~ON!」
〇仮想空間
瞳(中の人、うっちい!)「はーい、おっつー! 卒論、問題ナシ之介だぴょーん!」
大河君「・・・え?」
大河君「どうしたの?瞳さん。 様子が変なんだけど・・・」
うっちい!(し、しまった!キャラ間違えた!)
〇店の事務室
うっちい!「どうしよ! どどうしよ! どどどどうしよ!」
キョウヤ「バカ!早く代われ!」
〇仮想空間
瞳「驚きました? 今古語と若者言葉の類似性について 勉強してる最中なんです」
瞳「マジいとおかし~ オニいとあはれ~」
大河君「・・・」
大河君「ふ~ん。そうなんだ。 良い着眼点だと思うよ(^^)」
瞳「ありがとうございます!」
〇店の事務室
キョウヤ「・・・ふう」
うっちい!「スイマセン。たるんでました」
キョウヤ「内海。うちのスローガン」
うっちい!「ハイ! セカイには2種類の人間しかいない!」
うっちい!「愛する者と愛される者!」
うっちい!「・・・ププッ」
キョウヤ「テメー何半笑いなんだよ」
うっちい!「わ、笑ってません!」
キョウヤ「小寒いって思ってんだろ! ベタだって思ってるんだろ!」
キョウヤ「『セカイ』とか『2種類』とか! 『二流は〇〇!じゃあ一流は?』とか! 『実はコレ!云々~』とか!」
うっちい!「お、思ってません!」
キョウヤ「それでいいんだよ。ベタでいいんだ」
キョウヤ「ベタなもんが 一番手っ取り早く稼げるんだよ」
キョウヤ「『愛する者』と『愛される者』 今の俺達は・・・」
キョウヤ「どっちだ?」
うっちい!「愛する者っス!」
キョウヤ「そうだ。愛するんだ」
キョウヤ「いつも愛してばかりで 愛される事のない男達を、 徹底的に愛してやるんだ」
キョウヤ「これは商売である以上に 慈善事業といっても過言ではない」
キョウヤ「故にお客様を現実に戻すような 残酷なミスを犯してはならない」
キョウヤ「『キャラ設定』は完璧に!復唱!」
うっちい!「キャラ設定は完璧に!」
キョウヤ「お客様はダーリンです!」
うっちい!「お客様はダーリンです!」
キョウヤ「ダーリンだっちゃ!」
うっちい!「ダーリンだっちゃ!」
「スキよっ!スキよっ!スキよっ!」
〇仮想空間
「うっふ~ん」
〇店の事務室
キョウヤ「お疲れ」
うっちい!「お疲れ様でした」
うっちい!「あと来月からもう一人くらい バイト入れませんか? この性欲の数々、 俺達だけじゃ捌き切れませんよ」
キョウヤ「ユーザー3桁になったら考えるわ」
うっちい!「マジかよ~」
うっちい!「さてと、気を取り直して」
うっちい!「ええと。それでは質問いいですか?」
〇仮想空間
瞳(中の人、うっちい!)「それでは今回は、 応仁の乱と山城一揆について 是非レクチャーお願いします!」
大河君「うーん。文字で説明すると、 ちょっと複雑なんだよね」
大河君「もし良ければ一度会えないかないやいや全然そういう意味じゃなくて実際会えれば詳しく教えられるというか」
瞳(中の人、うっちい!)「あ、すみません。 親から電話がかかってきたんで、 これで失礼します」
大河君「・・・」
〇店の事務室
うっちい!「・・・ったく。隙あらば会おうとしやがる」
うっちい!「何がピュアでバーチャルな コミュニケーションだか・・・」
〇仮想空間
まじめぶちょー「ところでこれから時間ある? もしよかったら、一度じっくり会って 実際に心のカードセッションを」
まいたけ(中の人、うっちい!)「ごめんなさい。今夜は妹と食事するんで ログアウトしま~す」
まじめぶちょー「・・・」
サトシ@炎(ファイアー)「ねえ一度リアルに会わない? 勿論ビジネスの話だよ。 異業種交流のノリで。 え? もしかしてナンパ目的って思ってる?」
Tik(中はもちろん、うっちい!)「これからバイトなんでー。 仕事しながら考えとくねー」
サトシ@炎(ファイアー)「・・・」
なあ・・・
そこに何が見えてる?
〇渋谷のスクランブル交差点
何が映ってる?
嫌われるダサい男のファッション10か?
ウザがられるこじらせ女のパターン5か?
スカシて草生やしても、結局頭ン中はそればっかだろ?
だからこその慈善事業だよ。
キョウヤ「リアルに見放された皆さんを 俺が助けてやるよ」
キョウヤ「何もない皆さんに愛を与えてやるよ」
キョウヤ「おい、前見て歩けオッサン!」
ワタベ「・・・すみません」
キョウヤ「チッ・・・」
続く


