自分だけが消えた世界(脚本)
〇渋谷マークシティ
渋谷
優樹「どうして・・・こんなことに・・・」
優樹「誰か・・・助けて・・・」
〇カウンター席
ある土曜日の昼
渋谷 某カフェ
結衣「ねえねえ、今日何の日か知ってる?」
優樹「え、何だっけ・・・」
結衣「・・・・・・」
優樹「ごめん、思い出せないや」
結衣「今日は私の誕生日だよ・・・」
優樹「あっ、そうだったね」
結衣「何その反応?酷くない・・・?」
結衣「もう今日はお家帰るね」
優樹「あ、ごめんって!!」
結衣「もう知らない!!」
優樹「・・・・・・」
優樹「追いかけた方がいいよな」
優樹「すみません、お会計お願いします」
店員「かしこまりました」
〇広い改札
数分後
渋谷駅構内
優樹「追いかけて来たけど、どこに行ったんだろう」
優樹「あれ・・・?」
優樹「そもそも駅に誰も居ない・・・?」
優樹「いつもは人でごった返しているのに、おかしいな」
優樹「何かあったんだろうか」
優樹「駅員さん、すみませーーん!」
優樹「・・・・・・」
優樹「お客さんどころか、駅員さんすら居ないぞ」
優樹「ちょっと外に出てみるか」
〇渋谷駅前
数分後
渋谷駅前
優樹「やっぱり、おかしいぞ」
優樹「こんな真っ昼間に渋谷で人が一人も居ないなんてあり得ない」
優樹「ちょっと調べてみよう」
優樹「・・・」
優樹「特にニュースでも報じられてないな・・・」
優樹「そうだ、結衣に電話してみよう」
プルルルルル・・・
プルルルルル・・・
優樹「出ない」
優樹「一体どうなってるんだ?」
優樹「もうちょっと周辺を歩いてみよう・・・」
〇ハチ公前
優樹「ここにも人が居ない」
〇モヤイ像
優樹「ここも居ない」
〇センター街
優樹「嘘だろ・・・」
〇SHIBUYA109
約1時間後
渋谷 某ファッションビル前
優樹「もしかして、渋谷中から人が消え去ってしまったのか?」
優樹「SNSをチェックしてみるか」
優樹「そんな・・・」
優樹「誰一人更新してないぞ」
優樹「新しいニュースも全く無いし」
優樹「ひょっとして渋谷どころか世界中から人が消えてしまったのか?」
優樹「信号はついてるから、電気は通ってるみたいだけど」
優樹「どの車も無人だし・・・」
優樹「物音一つしない」
優樹「異様な静けさだ・・・」
〇電車の中
同日 昼過ぎ
電車内
彼女には特殊な”能力”があった。
強い精神的ストレスがかかった状態で、
消し去りたい”モノ”を強く念じると、実際に消えてしまう。
ただし、本人には自覚は無かった・・・。
いわゆる『ポルターガイスト現象』または『超常現象』として、一般的に説明がつかない。
このような現象は思春期の少女が心理的に不安定な場合に起きるケースが多いとされており、
彼女の場合も同様だろう。
結衣「優樹なんて消えちゃえばいいんだ」
彼女の強い”念”により、彼はこの世界から消えてしまったのだ。
結衣(消えろ消えろ)
ただ、正確には”消えた”のではなく”移動”していたのだ。
結衣(消えろ消えろ消えろ消えろ)
誰も存在しない別の世界に・・・。
〇渋谷のスクランブル交差点
同日 夜
渋谷スクランブル交差点
俺はその後、人を探して何時間も歩き回った。
でも、結局誰一人見つけることは出来なかった。
優樹「いつの間にか日が暮れてしまった」
優樹「最初は付いていた電気も、消えちゃったし」
優樹「暗過ぎてスマホのライトが切れたら歩くのも難しくなるぞ」
優樹「公衆トイレの水も出なかったし」
優樹「スマホも圏外になってしまった」
優樹「きっとインフラを管理する人も消えてしまったんだ」
優樹「コンビニやスーパーに水や食料はたくさんあったけど」
優樹「これから死ぬまで一人ぼっちで生きていかなければならないのか・・・?」
〇渋谷マークシティ
同日 未明
渋谷 某ホテル前
優樹「どうして・・・こんなことに・・・」
優樹「誰か・・・助けて・・・」
優樹「今日は適当なホテルに泊めさせてもらおう」
優樹「無断宿泊で、犯罪かもしれないけど」
優樹「一応フロントにはお金をおいておこう・・・」
優樹「寝て起きたら、この悪い夢が覚めていてほしい・・・」
〇渋谷マークシティ
翌日 朝
渋谷 某ホテル前
優樹(全然眠れなかった・・・)
優樹「朝になっても、どこを見ても人が居ないし、やっぱり夢じゃなかったな・・・」
優樹「結衣とも喧嘩したまま連絡が取れないし・・・」
彼は、本当は彼女の誕生日を忘れてはいなかった。
優樹「もう一度、最初の渋谷駅周辺に戻って手がかりを探してみよう」
〇渋谷のスクランブル交差点
数十分後
渋谷スクランブル交差点
優樹「やっぱり、誰もいないな・・・」
優樹「もう終わりだ・・・」
〇女の子の一人部屋
同時刻
結衣の部屋
結衣「優樹に連絡しても、既読もつかない・・・」
結衣「嫌われちゃったかな」
結衣「あれ?」
結衣「カバンから見覚えのないプレゼントが出てきた」
結衣「もしかして優樹から!?」
結衣「本当は私の誕生日のこと、覚えてたんだね」
結衣「優樹、ごめんね──!!」
〇渋谷駅前
優樹「!!」
優樹「突然人がたくさん出てきた!!」
警察「君、信号赤になってるよ!!」
警察「早く渡りなさい」
優樹「あ、ごめんなさい」
警察「気をつけてね」
優樹「人が居る・・・!!」
優樹「良かった・・・元に戻ったんだ・・・!!」
結衣「優樹!!」
優樹「結衣!!」
結衣「昨日はごめんね。誕生日はサプライズのつもりだったんだね」
優樹「こっちこそ、誤解させてごめん。それより・・・大丈夫?」
結衣「何が?」
優樹「いや、昨日別れた後から人が一人も居なくなっちゃって・・・」
結衣「何バカなこと言ってんのよ」
俺は、これまでの出来事を彼女に説明した。
彼女は信じてくれたようだったが、彼女自身は特に今まで何の違和感もなかったようだ。
思い当たることといえば、帰りの電車内で、俺のことを”消えろ”と念じたそうだ。
それが原因かはわからないが、俺だけがこの世界から一時的に消えてしまったのかもしれない。
正直、自分でも夢なんじゃないかと思うくらい非現実的な経験だった。
何もかもわからないままだが、
もう彼女を怒らせたり、泣かせることだけは止めようと
心の中で、強く誓った。
結衣「・・・・・・」
結衣「もう怒らせないでね」
なんともまたはた迷惑な彼女ですね。
別れようとしたら、また異次元に飛ばされそうで…というか、すでに他に被害者はいるのではないでしょうか?
彼が無事で本当によかったです。
いやぁ、怒らせた理由もあまり良くないですが…。
それにしてもよい迷惑ですね笑
もし今後同じようなことを起こされると…って考えたらストレスでどうにかなってしまうかもしれません。
とんでもなく厄介な結衣の能力ですね。
こんな能力があれば、過去にも何かしらのことをやらかしてそうですので、そのストーリーも気になります。