エピソード10(脚本)
〇警察署の入口
・・・外は雨だった。
傘も持たず、気づけば奏は警察にいた。
・・・奏は、出頭するつもりでいた。
恵を殺した?
もうそういうことでいい。俺が殺した。
かなこが疑われるくらいなら、俺が罪をかぶればいい。
もしかしたらかなこが警察に呼ばれている頃かもしれないとも思った。
〇警察署の入口
・・・かなこを苦しめてしまった。
あんな酷い仕打ちを受けて。生きているのすら不思議なくらいだ。
母には罪悪感がないようだ。
それもひっくるめて、奏は自分が罪を償うつもりでいた。
・・・と、そんなつもりでいた奏に、刑事から意外な情報が飛び込んできた。
・・・まず、かなこが今病院にいるということ。
泣き崩れて、事情聴取どころではなくなったらしかった。
そのまま失神するように倒れたらしく、救急車で運ばれた。
〇綺麗な病室
K病院は、警察署から歩いて15分ほどのところにあった。
刑事に教えてもらった部屋に向かった。
「・・・かなこ!」
・・・かなこは目を覚ましていた。
かなこ「・・・奏。私、どうしてここに・・・?」
「事情聴取中に、失神したみたいに倒れたらしい。 ・・・おまえ、寝てなかったんだろう」
かなこ「・・・うん。 このところ毎日、1~2時間の仮眠しかとってなかった」
かなこ「・・・私、ただちゃんと仕事したかっただけなんだよ。 それなのに・・・」
かなこの目から涙があふれて、また止まらなくなりそうだった。
「神経が疲れてるんだよ。 また仕事に戻ればいいんだから、今のうちにぐっすり寝とけ」
かなこ「何よ、どうしてそんなに優しいの? 私、人殺しかもしれないのに?」
・・・刑事が言っていた、もう一つの驚くべき情報。
かなこ「・・・でも、私殺してないんだ。 だって恵には会ってなかったし、連絡もとってなかった」
かなこ「・・・でも、死体動かした。それは本当」
「聞けよ。違うんだよ」
「あのあと刑事さんに聞いたら、鑑識の調べがついたんだってさ」
「恵は、自分で鈍器で頭を殴ったらしい。それくらい、監察医の目から見たらすぐわかるらしいな」
「結局、それが致命傷になったみたいだよ」
「・・・いや、でも俺が殺したようなもんだな」
かなこ「違う。私がやったの。 今から警察に行ってくる」
「違う、自殺なんだよ。 よっぽど俺のことを恨んでたんだよ。見せつけたかったんだ」
「・・・悪かった。今まで。 もうお前が浮気してようが、何をしてようが、そばにいてくれるだけでいい」
「・・・俺とやり直してくれ。お前がいないと、だめなんだよ」
かなこ「・・・私、働きたい。 何の罪になるかわからないけど、償って働きたい。 そしたら、奏と一緒にいられる」
「・・・そうしよう」
奏は、ひさしぶりにかなこの肩を抱き寄せた。
「・・・もうすこし寝てろよ。寝不足なんだろう」
かなこ「そうだね。ずっと寝てなかった。 お義母さんに殴られて、私久しぶりに長い時間寝たくらいだもの」
かなこは、ちょっと笑った。
「ぐっすり寝てろよ。着替えとか、必要なもの持ってくるから」
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