クロと蛇神と、カノジョの秘密

春日秋人

第1話 『《鴉》(クロウ)』(脚本)

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春日秋人

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〇黒
  ねぇ、早く。待ってるよ
  クスクス・・・
  ああ──楽しみだなぁ

〇白

〇空

〇森の中
  ・・・・・・
???(・・・夢?)
頭の中に響く女の声「《鴉》(クロウ)よ、いま戻ったぞ」
???(夢なんて久しぶりだな)
???(内容は──)
???(もう思い出せないな)
頭の中に響く女の声「《鴉》! 《鴉》!」
《鴉》(クロウ)「ん?」
頭の中に響く女の声「ヌシ、呼んだらさっさと応えぬか!」
頭の中に響く女の声「ヌシの頼れる相棒、この可憐な《燕》(スワロー)ちゃんが呼んでおるというのに! のに!」
《鴉》(クロウ)「うん、《燕》。無事に戻ったんだね」
《燕》(スワロー)「知っておるかー? 知っておるよなぁ?」
《燕》(スワロー)「ヌシに無視されたら、ワレってば寂しいんじゃぞ?」
《鴉》(クロウ)「ごめん、ちょっとぼーっとしてた」
《鴉》(クロウ)「なんか夢を見てさ」
《燕》(スワロー)「ほう、夢をのう・・・」
《燕》(スワロー)「──ってぇ! ヌシ、まさか寝ておったのかー !?」
《鴉》(クロウ)「おかげでスッキリかな」
《燕》(スワロー)「さすがじゃのう。豪胆というか冷静というか」
《鴉》(クロウ)「それで、どうだった?」
《燕》(スワロー)「む?」
《鴉》(クロウ)「行ってきてくれたんでしょ、偵察」
《燕》(スワロー)「ヌシの読み通りじゃったな」
《燕》(スワロー)「例の場所で"アタリ"じゃった」
《燕》(スワロー)「ほれ。これが連中の拠点と、その防衛網の情報じゃ。画像で送るぞ」
《鴉》(クロウ)「了解。──確認した」
《鴉》(クロウ)「ありがとう《燕》。あとは僕でやるよ」
《燕》(スワロー)「くれぐれも相手に同情するでないぞ?」
《鴉》(クロウ)「心配しないで。僕はエージェント──」
《鴉》(クロウ)「コードネーム《鴉》だ」

〇血しぶき
  この世界には、人々の知らないところで、世界を滅ぼす危機が訪れている
  世界が滅びる前に誰かがそれを止めなければならない
  僕には止めることのできる力がある
  ──僕が手を汚すことで誰かの笑顔が守れるなら、それでいい

〇岩山
  ~赤道直下・火山島~

〇ブリーフィングルーム
  ~《B.I.R.D》本部基地~
  ~ブリーフィングルーム~
《鷹》(イーグル)「先日は見事な働きでした」
《鷹》(イーグル)「組織を代表して、感謝します」
《鷹》(イーグル)「おかげで核戦争は回避。 世界の秩序は守られました」
《鷹》(イーグル)「報酬はすでに口座に振り込んであります」
《鴉》(クロウ)「・・・・・・」
《鷹》(イーグル)「フフフ。実は報酬の使い道として私からナイスな提案があるのです。聞きたいですか? 聞きたいですよね!?」
《鷹》(イーグル)「首都の一等地に豪邸を建ててメイドを雇うのです! たくさん!」
《鷹》(イーグル)「いいものですよ! メイドは!」
《鴉》(クロウ)「あのさ、指令」
《鴉》(クロウ)「メイドには興味はないよ」
《鷹》(イーグル)「えええ!? そんなぁ!」
《鴉》(クロウ)「報酬は必要経費を除いて、いつものように孤児院に寄付しておいてよ」
《鴉》(クロウ)「それより、本部への直接の呼び出し──」
《鴉》(クロウ)「ねぎらいの言葉をかけるためだけ、ではないよね」
《鴉》(クロウ)「本題は?」
《鷹》(イーグル)「・・・フフ、頼もしいですね」
《鷹》(イーグル)「では次の任務です」
《鷹》(イーグル)「まず、この映像を見ていただきたい」
《鴉》(クロウ)「日本の、女子高生?」
《鴉》(クロウ)(あれ? どこかで見たような・・・気のせいかな)
《鷹》(イーグル)「彼女の名前は渕上深白(ふちがみ みしろ)。戸籍上では貴方と同じ17歳」
《鷹》(イーグル)「これから狙撃手(スナイパー)が彼女の頭を撃ち抜きます」
《鴉》(クロウ)「え?」
《鴉》(クロウ)「・・・殺したの?」
《鷹》(イーグル)「見ていてください」
《鷹》(イーグル)「映像の編集はしていませんよ。 見ての通りです」
《鷹》(イーグル)「彼女は復活した」
《鷹》(イーグル)「また、彼女を撃った狙撃手ですが、彼女が復活した瞬間にモニターしていた心電図が途切れました」
《鴉》(クロウ)「反撃を受けて殺された?」
《鷹》(イーグル)「ただ殺されたわけではありません」
《鷹》(イーグル)「狙撃手はこの瞬間に、跡形もなくこの世界から『消失』しました」
《鷹》(イーグル)「文字通りの意味で『消失』です」
《鷹》(イーグル)「痕跡は残っています。ですが狙撃手の名も、彼だったのか彼女だったのかすら、我々は誰も思い出せません。存在が消えている」
《鴉》(クロウ)(確実に死んだはずなのに復活した対象と、それと同時に『消失』した狙撃手か)
《鴉》(クロウ)「おそらく──この反撃は自動的だ」
《鴉》(クロウ)「あの状況、頭を撃ち抜かれた対象に意識が残っていたとは思えない」
《鴉》(クロウ)「その状態での復活の発動条件が、狙撃手の『消失』・・・」
《鴉》(クロウ)「つまり、自分を殺した相手の存在を『消失』させることで、致命傷を負った事実を──」
《鴉》(クロウ)「因果みたいなものを『なかったこと』にしている」
《鴉》(クロウ)「そしてそれは意識がなくても自動的に行われる」
《鴉》(クロウ)「自動復活。相手は消し去られる。無敵だ」
《鷹》(イーグル)「一目でそこまで洞察できるとは、さすがですね。ええ、組織も貴方と同じ結論に至りました」
《鷹》(イーグル)「彼女が発見されたのは14日前」
《鷹》(イーグル)「我々が世界に張り巡らせているアンテナが彼女の力を観測しました」
《鷹》(イーグル)「問題はその力の総量でした」
《鷹》(イーグル)「異星からの侵略さえ対処してきた我々にとっても、完全に常識外の力──」
《鷹》(イーグル)「あの者がその気になれば、誇張でもなんでもなく、なにができても不思議ではない」
《鷹》(イーグル)「『神』、と表現するしかありません」
《鴉》(クロウ)「神か。ありえない存在とは言い切れないね。この世界には明かされていない秘密がたくさんある」
《鷹》(イーグル)「彼女は存在そのものが危険です」
《鷹》(イーグル)「しかし、どうやっても殺せなかった」
《鷹》(イーグル)「それでも、世界の秩序を守る秘密組織である我々──」
《鷹》(イーグル)「《Beyond Imagination Raider Defender》 (想像の向こう側の襲撃者からの守護者)」
《鷹》(イーグル)「──通称《B.I.R.D》としては看過できません」
《鷹》(イーグル)「もう、貴方にしか頼めません。 エージェント《鴉》」
《鷹》(イーグル)「世界の秩序のために──」
《鷹》(イーグル)「神を、殺してください」
《鴉》(クロウ)「・・・・・・」

〇黒
  少年が去った後、男は鷹の頭のかぶり物をぬいだ。
  すっかり冷めて苦みを増したコーヒーに口をつける。
  しばらくして男の携帯端末からコール音が鳴った。音声通話をオンにする。
《燕》(スワロー)「《鷹》。理由を聞かせてもらうぞ?」
《鷹》(イーグル)「おや《燕》。 貴方から私に連絡とは珍しいですね」
《燕》(スワロー)「とぼけるな。《鴉》(クロウ)にあのような任務を与えた理由はなんじゃ?」
《燕》(スワロー)「あのターゲットはたしかに危険な存在かもしれん。じゃが、実際に害をなしておるわけではない」
《燕》(スワロー)「そのような相手を殺せと!? 《鴉》は誰より優しいヤツなんじゃぞ!」
《燕》(スワロー)「ワレにはわかる。任務を引き受けたのも、これ以上仲間に犠牲が出ぬよう自分1人で解決しようと考えたからじゃ!」
《鷹》(イーグル)「私は彼に何かを強要したことは一度もありませんよ。貴方も同じでは?」
《燕》(スワロー)「くっ、のっ」
《鷹》(イーグル)「私は信頼しているのですよ」
《鷹》(イーグル)「相手が神であろうとも、最高のエージェントである彼ならば解決できるでしょう」

〇白
  第1話 《鴉》 了
  次回 神になった女子高生

次のエピソード:第2話 『神になった女子高生』

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