〇電車の座席
漏心（はは・・・・・・タスケテ）
優（このお兄ちゃん、思ってる事お口に出てるの？）
凛（なにコイツ・・・・・・）
漏心（東京・・・・・・渋谷、都心・・・・・・ふふ）
漏心（都会、怖っええぇぇええええっ!!）
漏心（く・・・・・・標準語さえマスターして おけば都会暮らしも余裕だって 思っていたのに・・・・・・）
凛（どうしてそう思った？）
優（甘いね・・・・・・）
漏心（学生寮に向かう車内で もう心が折れそうだ・・・・・・）
優（え？　それって来たばかりじゃ・・・・・・？）
凛（折れるの早いなぁ・・・・・・心）
漏心（だいたい、なんなんだ この電車は・・・・・・ 扉が開いても虫が１匹も 入ってこないじゃないか!!）
凛（虫!?）
優（虫？）
漏心（この分じゃあトイレの排水溝にも虫が詰まる事は無いんだろうなぁ・・・・・・）
優（それはいい事じゃないのかな？）
漏心（その癖、人はいっぱいいる。 初対面なのに鞄でグイグイ電車に押し込んでくるし・・・・・・）
漏心（かと思えば、 携帯いじって話しかけても来ない）
漏心（僕の田舎じゃ人と話す時は キャッチボールくらい距離があった）
漏心（それがカバン分の対人距離って何!?）
漏心（恋人!?）
漏心（なぜ都会と僕の田舎では これほどの差があるのか・・・・・・）
凛（どう考えても土地代と人口の差ね・・・・・・）
漏心（なんなの都会人・・・・・・ 距離感ワカラナイ）
漏心（近いの？　遠いの？　 物理的には近くて心は遠い的なそれ？）
優（えぇ・・・・・・普通だと思うなぁ）
凛（ウザ・・・・・・）
漏心（それに、匂いに慣れる気がしない!!）
優（におい？）
凛（ああ、田舎は空気が美味しいとか言うやつ？ それはちょっと興味あるな・・・・・・）
漏心（僕の田舎の匂いといえば、）
漏心（汗、泥・・・・・・ あとは加齢臭と相場は決まっている!!）
凛（嫌な相場ね・・・・・・）
漏心（それがここはなんだ・・・・・・ 香水？　シャンプーの残り香？）
漏心（多様過ぎて、それだけで疲れる・・・・・・）
漏心（僕の田舎を手入れのない 無人駅の公衆便所に例えるなら）
漏心（ここはまるで ホテルの個室トイレだ・・・・・・）
凛（それ悪い事？）
優（なんでこの人、 ちょいちょいおトイレに例えるんだろう？）
漏心（あぁ・・・・・・おうちに帰りたい）
漏心（あっ!!）
優（!?）
凛（今度はなに!?）
漏心（今日からここがお家だった・・・・・・ははっ）
凛（バカ・・・・・・）
優（愉快な人ね・・・・・・）
凛（ちょっと面白くなってきたわ・・・・・・）
漏心（ああ・・・・・・ダメだ。 どんどん不安になってきた）
漏心（田舎に残っている彼女はどうしているかな？）
凛（いたんだ・・・・・・彼女）
優（遠距離恋愛かぁ・・・・・・辛いね）
漏心（ああ、恋人とかできてたら どうしよう・・・・・・）
優（彼女さんのこと 信じてあげようよ・・・・・・）
漏心（この前みたいに・・・・・・）
優（っ!?）
凛（あるんだ・・・・・・前科）
漏心（毎日電話してるし大丈夫かな？ いや、逆にそういうのが重いか・・・・・・）
漏心（でも他に出来る事なんて・・・・・・）
凛（苦労人・・・・・・）
優（がんばって!!）
漏心（・・・・・・いや、考えても仕方がない!!）
漏心（上京を決めたんだ・・・・・・）
漏心（凄い男になって迎えに行く・・・・・・ それ以外にやる事なんてないだろう!!）
漏心（よし、やるぞ!!）
漏心「すいません、降りまーす!!」
優（え？　なんで叫!?）
凛（バスじゃないのよ!?）
凛「そもそも、今はバスもそういうシステム じゃないと思うんだけど・・・・・・って!!」
　　!?
優（え？　この鞄・・・・・・）
凛（あの人のよね？　 さっき持ってたし・・・・・・）
優（困るよねきっと・・・・・・ 届けてあげようかな）
凛「ああ、もう仕方ないわね!!」
優「え!?」
凛「あっ・・・・・・」
優（・・・・・・）
凛「・・・・・・」
凛（聞いてたわね・・・・・・）
優（この人も聞いてたのかなぁ）
凛「・・・・・・と、届けにいきましょうか？ 一緒に」
優「え？　あ・・・・・・そ、そうですね」
　　2人が行き着いた先で起きたことは何か。
　　物語はこれにて閉幕・・・・・・。
　　ああ、ただ一つ・・・・・・
　　彼女たちの向かう先、
　　1人の青年の声が、
　　どこからともなく響いたという。
　　『都会も悪くないかもなぁ』と。