渋谷の目

rikka

渋谷の目(脚本)

渋谷の目

rikka

今すぐ読む

渋谷の目
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇電車の中
語り部「街に意識があるって知ってる?」
語り部「東京には23区といって」
語り部「エリアが細かく区切られているよね」
語り部「よく心霊系で地縛霊とかいって」
語り部「その場所に得体のしれない何かが」
語り部「いるかも?みたいな話ってあるけどさ」
語り部「実は場所だけじゃなくて、」
語り部「街自体にも意識を持った何かが」
語り部「いることってあるんだ」

〇電車の中
語り部「・・・」
語り部「そして意識を持った街の一つに」
語り部「渋谷がある・・・」
語り部「・・・」
語り部「街は呼吸をしている」
語り部「時々ビル街を歩いていたら」
語り部「風が強く吹くことあるでしょ?」
語り部「あれは街が呼吸しているんだ」
語り部「じゃあ街の口はどこだ?って??」
語り部「街は顔を持っている」
語り部「目も鼻も口も普段は見えない」
語り部「まぁ口が見えたら、」
語り部「その口に落ちちゃった人は」
語り部「街に食べられちゃうってことになるけど」
語り部「そういった話は聞かないよね」
語り部「だから目・鼻・口の概念はあるけど」
語り部「それ自体が存在するわけじゃないんだ」
語り部「・・・」
語り部「でも概念はあるからね」
語り部「口はないけど、概念としてはあるんだ」
語り部「だから風が吹いている」
語り部「・・・」
語り部「ちなみに鼻もあるんだよ」
語り部「概念として、だけどね」
語り部「街の匂いってわかる?」
語り部「その街を歩いていたら」
語り部「「あー、その場所っぽいなぁ」って」
語り部「感じる匂いしない?」
語り部「・・・」
語り部「街の鼻はそのエリアにある」
語り部「人々の暮らしの匂いを感じ取って」
語り部「その匂いをエリア全体に」
語り部「定着付けているんだ」
語り部「・・・」
語り部「だから街の鼻って」
語り部「匂いをかぐだけじゃなくて」
語り部「匂いを出しているとも言えるね」

〇電車の中
語り部「そして最後に目だけど」
語り部「街には目もあるんだ」
語り部「これも概念だよ」
語り部「・・・」
語り部「ただ・・・目だけはちょっと怖くてね」
語り部「借りるんだよね。人から」
語り部「・・・」
語り部「もし地面に目があったらさ」
語り部「下から人を見上げるしかできないよね」
語り部「街全体を見渡すことができない」
語り部「だから街は考えたんだ」
語り部「・・・」
語り部「自分の街を見るためには」
語り部「どうしたらいいんだろう?って」
語り部「そこで思いついたのが」
語り部「目を借りること」
語り部「なんだよね」
語り部「・・・」
語り部「ねぇ、渋谷の街に入ったときに」
語り部「感じなかった?」
語り部「あなたの目が見ているものを」
語り部「あなた以外も見ているんじゃないかって」
語り部「・・・」
語り部「人々の笑顔をいっぱい見たら」
語り部「街は自分のことを幸せな場所だと認識する」
語り部「悲しい顔をいっぱい見たら」
語り部「街は自分のことを悲しい場所だと認識する」
語り部「・・・」
語り部「人が増えれば、減れば」
語り部「街は人の目を通して」
語り部「自分がどうなのかを理解する」
語り部「・・・」
語り部「渋谷は意識を持っている」
語り部「あなたの目に映したものが」
語り部「未来の渋谷を作っていく」
語り部「・・・」
語り部「だから気をつけて」

〇電車の中
語り部「ここからあなたの姿を見た時」
語り部「あなたの目に」
語り部「渋谷の意識が宿っているのがわかった」
語り部「・・・」
語り部「今日こんな話をしたのは」
語り部「そういうわけ」
語り部「・・・」
語り部「渋谷の目さん、この街にようこそ」

コメント

  • 客観的な感じで全体を眺めている感じがきれいだと思いました、ストーリーの流れもきれいですね。イメージを膨らませながら読ませて頂きました。

  • 概念として「街が生きている」というのがとても興味深かったです。
    語り部さんの会話のリズムもよくて、頭にすっと入っていくんですよね。
    個人的には「街の呼吸」が好きです。

  • 面白い街の考察の仕方だと思います。語り部がたびたび『・・・』と間を置く所が、読者にその概念に近づかせようと仕向けているのか、より引き込まれました。なるほど、相手の瞳の中には、自分の顔が映っていますよね。

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ