今日も" 獣"で荒れている (ケモ荒)

カジキ

エピソード6(脚本)

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〇屋上の入口
女友達「──この子、凄く”くさい” !!」
男友達「は?そんなわけ──」
男友達「──ウエッ!?マジだ! なんだこの匂い!!」
男友達「ゲホッ!!ゲホッ ゴホッ!!」
  (─── ハッ)
オポッサムの獣人「あ、あの これは.....」
女友達「ごめん、ちょっと近寄らないでもらっていい」
オポッサムの獣人「え・・・・」
女友達「あなたには悪いけど、生ゴミの臭いがする のは、ちょっとね・・・」
女友達「においが付いても嫌だし」
男友達「俺も女子にモテづらくなるしな・・・・」
オポッサムの獣人「・・・・・・」
桐生「ごめんな、こいつら頭悪いから今 気の利いたことが言えねえんだわ」
桐生「──でも、この臭いが生理的に無理だって事も分かってくれねえか」
オポッサムの獣人「・・・・・」
オポッサムの獣人「そうですよね」
桐生「なあ 友井, お前はどうすんのがいいと思う?」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・わ、分からない」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「でも、お前らが言うならそうなんだろうな」
オポッサムの獣人「──!!」
オポッサムの獣人「やはり、関わるべきではなかったですね....」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・・」
オポッサムの獣人「──関わってしまい ごめんなさい」
  ──だッダダダ!!
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「ちょッと、待って───」
  しまった、名前すら聞いてなかった・・・・
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「やっぱり彼女を追いかけて───」
女友達「──友井、ちょっと話をしてもいい?」

〇階段の踊り場
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「アイツら、確かこっちの方に・・・・」
  ──関わってしまい ごめんなさい
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「あ?なんだ・・・・」
オポッサムの獣人「─────ッ」
  ──だッダダダ!!
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・なるほど。まあ、そうなるか」

〇屋上の入口
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「『もう、彼女を連れてくるな ・・・・』」
女友達「そう」
女友達「──だって、あんな生ゴミみたいな臭い つけられても見なさいよ」
女友達「まともな生活、送れなくなるでしょ?」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・・・」
桐生「なあ、友井・・・・」
桐生「──あの臭いは、無いわ マジで」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「分かった・・・・」
女友達「・・・・ありがとう」
女友達「もうすぐ、お昼終わるから戻るわ」
女友達「じゃあね・・・・」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・・・」
男友達「──────」
男友達「まあ、あんまり気負いすぎんなよ」
男友達「かわいい女子は、この学校だけでもたくさん いんだからよ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「─────」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「そうだったわ」
  友井 淳一(ともい じゅんいち)
  ──お前ら友達を”裏切らないん”だった

〇女子トイレ
  ──バシャバシャ バシャ
オポッサムの獣人「はあ、はあ・・・・」
オポッサムの獣人「────ッ」

〇屋上の入口
  友井 淳一 (ともい じゅんいち)
  ──お前らが言うならそうなんだろうな....

〇女子トイレ
オポッサムの獣人「私って、”害獣”なんだ・・・・」
オポッサムの獣人「──────」

〇学校の下駄箱
  桐生たち
   ─────
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──────」

〇学校沿いの道
  桐生たち
   ─────
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──────」

〇高い屋上
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──────」
  友井 淳一 (ともい じゅんいち)
  「ああ、”死のうかな”・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──ダメだ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「アンタは・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「よお、久しぶり・・・でもないか」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「なんすッか?仕事で忙しかったんでは....」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「休憩だ。会長に休むよう言われたからな」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「そうすッか・・・・」

〇高い屋上
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「俺のせい....ッすよね」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「なにがだ・・・・」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「俺のせいで、彼女が傷つけられて・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──別に、いいんじゃねえの」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「!!」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「アンタは、そうやってまた──」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「優しく生きる事なんて、案外誰にでもできることではないし、美徳だとも思う」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「だが、正しくない時はある」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・なにが言いたいッすか」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──これは俺の示談なんだが、昔 優しくすること自体が誰にとっても喜ばれることで、」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「優しくいれば騒動はなくなるとそう思ってた」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「けど、人って ”優しさを独占したくなる” 生き物なんだよ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「独占 したく・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「自分にだけ優しいと思っていた奴が、他の奴にも優しくしてる姿を見て 快く思わない奴は男女問わずに結構いる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「八方美人が嫌われるのは、まさにそれだ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「誰にでも優しくあるのは 多くの人間に慕われやすい反面、」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「”その友人同士”が、傷つけ合う結果にも なるって事だ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「─────」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──いいんじゃねって言ったのは あくまであのオポッサムと関わんなくなればの話だ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「まあ お察しの通り、根本的な解決にはならねえがな」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「それにしてもお前の友人らは良い奴多いよな」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「急になんッすか?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「ヤニカスの男に口が悪い女、おまけに好色にもだらしなさそうな奴までいる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──まあ、俺にはその良さが分からんが」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「バカにしてんのか」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「でも俺は、お前がそんな奴らと仲良くやっていく方を望むよ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──へッ?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──選べ、淳一」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「あのオポッサムの女か、友人か・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「その上でどちらと今後、共に学校生活を送れるか、お前自身が決めるんだ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「楽しく生きれるか考えんのは、チャラ男の お前なら簡単な話だろ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「偏見と無茶がレベチだな、この人・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「うちの会長は彼女とくっつけようと躍起に なってはいるが、俺の考えはそうじゃない」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「むしろあの獣人と関って、お前の友人関係 まで壊す必要はないし、今いる友人を大切にして欲しい」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「過去に友人を失った事がある俺からすればな」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──────」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「アンタは...過去に一体なにが──」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「─────」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「少し考える時間をもらってもいいっすか....」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──ああ」

〇おしゃれな食堂
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・・・」
  あの先輩の言う通り、あの子とはもう関わらない方がいいのかもしれない....
  俺が下手に関わろうとしなければ、彼女が
  傷つく事だってなかった訳だし・・・・

〇屋上の入口
  あんな顔、させずに済んだかもしれない

〇おしゃれな食堂
  それに彼女は、もともと一人だったんだ
  俺が関わらなくなろうと、もとのままに戻るだけ───
  それに彼女といれば、”あのにおい”が原因で友達作りもできなくなるかもしれない
  その事も考えたら 尚更・・・・
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・・・」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「はあ・・・・」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「なんか俺....結構、自分勝手だな」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「ダメだ、一度 飯を食ってからまた考えよう」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「すみませ〜ん、カツカレー福神漬け爆盛りで」

〇おしゃれな食堂
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「なあオヤジ?カツカレーのカツはどこ行った」
  学食のおじちゃん
  ──悪いな 兄ちゃん、ちょうど豚肉切らしてカツが作れねえんだわ
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「まじかよ...なんか 今日色々と付いてねえな」
  ???
  ──わ、私ので良ければ上げましょうか
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「えっ!マジか ありがとうな見ず知らずの 優しい人───」
やどっ君「──はい、これ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──ぎィイイゃああああ!!!!」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──なんだこの虫 キモッ!?」
  カツみたいな虫
   タベテ...タベテ・・・・
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──しかも擦り寄ってる来るタイプの虫だ 更にキモッ!!」
  タベテ...タベテ・・・・
  ──”ニンゲン...食ベテェ"
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──ヒィいいいいいいいい!!」
やどっ君「変わった鳴き声ですよね、この虫」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──いや!?コイツ、絶対自我あんだろ! 人間食いてえとか言ってるし!!」
  学食のおじちゃん
  ──おお!そいつは 俺が遠い所から捕まえて来たデカくてキモい虫!!
  学食のおじちゃん
   コイツを食べれば精がつくぞ 兄ちゃん
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「食ったのか!?アンタこの喋る虫 食ったのか!!」
  学食のおじちゃん
  ──ちなみに、そいつの尻尾に毒あるぞ
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「───先に言えやぁああ オヤジ!!」

〇おしゃれな食堂
やどっ君「すみません、なんか迷惑かけてしまって」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「いいよ いいよ、気にしなくて....」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「それにしても、マジで食べんだな それ....」
やどっ君「えっ?結構美味しいですよ」
やどっ君「中は肉厚で弾力を感じさせる噛みごたえに、虫特有の脂身が自身を満たしてくれる感覚を直接 感じれて───」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──やめて やめて!その虫が睨んでるように見えてくるから」
やどっ君「それにしても、僕が食べる姿 気になったりしないんですか?」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「いや、あんたが虫を食べてる姿よりあの虫が喋っていた事実で驚きもしないというか....」
やどっ君「あなた、結構 変わってますね」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「あんたには言われたくなかったよ!変な服 まで着てッし」
やどっ君「僕、ヤドクガエルの獣人ですよ 毒のある」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「ヤドクガエルって、あのカラフルな奴?」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「へえー、だからそんな服着てんのね・・・」
やどっ君「・・・・・・」
やどっ君「やはり変わってますよ、あなた」
やどっ君「私の友達とは、少し違いますが・・・・」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「なにアンタ、もしかして一緒に食べてくれる友達とかいないのか?(直球)」
やどっ君「ええ、まあ・・・・」
やどっ君「私って 常に毒も出てますし、食べる物も食欲の失せる虫ばかりで一緒に食べてくれる人 なんてほとんどいません───」
やどっ君「時々、物珍しさに話しかけてくれる方はいるんですけど、周りが私の危険性を加味して遠ざけてくれるんです・・・・」
やどっ君「──私からすれば、人を傷つけるのは本意ではないので助かってはいるんですけど」
やどっ君「でも、やっぱり....”物寂しさ”は感じます」
やどっ君「仕方ないとは分かりつつも、納得できていない自分もいるんですよ....」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「そうか・・・あんたも苦しんで」
やどっ君「でも一人だけ、一緒に食べてくれる人がいるんですよ」

〇おしゃれな食堂
  いつもその人は、誰もいないはずの僕の
  近くに持ってきて食べてくれるんです
  最初は会話こそありませんでしたが、僕の
  近くで飯を食べては去っていく、
  そんな ”変わった人"でした

〇おしゃれな食堂
やどっ君「あの.... ”ご飯、美味しいですか?”」
  僕は、不安からなのか 期待からなのか、
  その人に聞いてみることにしたんです
  今思い返しても、馬鹿な質問だったなとは
  思います
  ですが、彼は───
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「普通だよ....」
  ──そう言うと、また食べる手を動かしたんです
  すごく淡白な返事でした
  でも、救われたんです

〇おしゃれな食堂
  そんな風に、ただ ご飯を食べる関係が続き
  ???
  うぇーい、タッチ!!
やどっ君「えっ?なに....」
  ???
  そして、葛井にもタッチ!!
  不良な生徒
  うぇーいw カエル菌が付いちまったな。
  葛井 汚ッたねえ
  ある日 突然、その人が嫌がらせを受けることになったんです
  なんでも僕の近くにいたことよって、彼まで敬遠される対象となっていたんです
  幸い防護服を着ていたので、触った人も彼も大事に至らなくてホッとした瞬間──
  不良な生徒
   イッで!何すんだお前!!
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──黙れ!お前、ムカつくんだよ!俺の 友人をバイ菌扱いしたこと謝れ!!」
  不良な生徒
   イッテぇな てめえ!!表出ろやァ!
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──上等だ!」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「三秒だ! 三秒で蹴りつけて───」

〇体育館の裏
  不良な生徒
  ──とか言ってたけど、弱くね?お前
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「はぁ、はぁ、黙れ・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「アイツに謝れ、脳なしが───」
  ──バタッ
  不良な生徒
  ──うるせえよ もやし
  不良な生徒
  これに懲りたら、あんなカエル野郎に近寄ん
  じゃねえよ
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・カエル野郎じゃねえ」
  不良な生徒
   あ?
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「お前こそ、アイツに近づくんじゃねえ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「”殺すぞ” ──お前」
  不良な生徒
  ──まだ殴られ足りないって面だな!!
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「お前も、謝ってから消えろやぁ!!」

〇体育館の裏
やどっ君「・・・・・・」
やどっ君「だ、大丈夫....でしたか....?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「なんだ、お前か・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「悪いな....結局、謝らせられなかった」
やどっ君「なぜ、あなたが謝るんですか?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・気にしてないならいいや」
やどっ君「──────」
  やどっ君
  ──”本当に謝るべきなのは” 僕の方なのに

〇体育館裏
  不良な生徒
  ・・・・くッそ、せっかく助けてやろうと思ってんのに、拒みやがって
  不良な生徒
  『──あいつ、あのカエルに”毒ある”って
  知らねえのか?』
やどっ君「・・・・・・」

〇体育館の裏
やどっ君「テトロドキシンって 知っていますか....」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「フグとかが作ってる有名な毒だな。それが、どうした?」
やどっ君「あの人は,カエルの菌と言っていましたが...」
やどっ君「その毒が僕からは常に流れてるんです....」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──いや、知ってるよ」
やどっ君「え?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「お前のその服、ヤドクガエルの獣人が着る 専用の服じゃねえか」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「旧型だが、割と有名な銘柄だぞ それ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「もしかして知らずに着てたのか(ドン引き)」
やどっ君「えっ、 あの・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「それにテトロドキシンは、皮膚からは感染しないし 揮発性もない」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「その服着てれば基本 大丈夫なはずだ」
やどっ君「でも、僕の毒が体に入ってしまったら──」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──絶対、入れねえ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「こっちは死んでも入れる気はねえし、毒の 扱いには慣れてる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「この程度の毒も扱えないようじゃ、死んだ方がマシだ」
やどっ君「──汗」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「それに、どんな理由があろうと───」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「一人が寂しいことに変わりねえだろ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「一緒に飯食うぐらいなら付き合ってやる」
やどっ君「友達....って事ですか?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「まあ 数ヶ月間、近くで飯食べて来た訳だし」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「世間的には” 友達”ってことになるかもな」
やどっ君「・・・いや、普通には言わないと思います (会話とかなかったし)」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「そ、そうなのか・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「あれ?俺の読んだ条件には合ってると思ったんだけどな・・・・読み誤ったか」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「じゃあなんで俺、『友達』って思い込んだ?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「しっかり読み込んでないからこんな事になんだろうが・・・ハハ」
  やどっ君
   なんか すごい落ち込んでる・・・・
やどっ君「──────」
やどっ君「だったら、今からでもなりましょう」
やどっ君「僕たちは一緒にご飯を食べる友達ですよね?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「────」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──ああ、よろしくな」

〇おしゃれな食堂
やどっ君「──これが僕の”親友”の話です」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「いい話、だったな・・・・」
やどっ君「─────」
やどっ君「僕の親友が変に自信家な変わり者でなければ、今も一人で食べていたと思いますし、」
やどっ君「”環境が” それを許さなかったと思います」
やどっ君「僕のような人間関係で苦しむ人は、そう言う 変わった人に救われると僕は思います」
やどっ君「──だからあなたも、もしかしたら誰かを助ける人になるのかもしれませんね」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「!!」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「俺も.. アンタの言う人みたいになれんのかね」
やどっ君「なれますよ、きっと」
やどっ君「──あなたは 感受性豊かで優しいですから」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・ありがとう、カエルの人」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──そういえば アンタの友人って誰なんだ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「こう見えて俺、結構 顔広いんだ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「ワンチャン知ってるかもしれ───」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「おーい、やどっ君!!」
やどっ君「あ、竜ちゃん」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「ごめんな、最近 一緒に飯食べてやれなくて」
やどっ君「ううん、仕事だから仕方ないっちゃか」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──いや、アンタかい!!」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「あ?なんで やどっ君と飯なんて食べてんだ」
やどっ君「彼とちょっとお話したっちゃけど」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「それにしても、例の友人がこんな人とはね...」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「少し目が覚めたわ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「おい、どういう意味だ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「お前も早く、友人らに謝るなりなんなりして一緒に飯でも行って来い」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「あ、そうだ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「”その事で” 話が──」

〇高い屋上
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──で、話ってなんだ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「それとも どっちにすんのか決まったのか?」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「ああ....決まったっす」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「俺は....”彼女のそばに居たいッす”」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──知ってるとは思うが、友人たちは彼女を嫌っている」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「不本意とはいえ、人に迷惑かけたのは事実だ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・関わりが続けば、あっちの方から関係断たれる可能性だって出てくるし、」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「あの友人に留まらず、周りから人はどんどん減っていく」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「それにオポッサムの獣人なんてアイツ限らず結構いる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「”それでも”いいんだな」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・アイツではないっす」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「?」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──彼女は....”彼女”っす」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「まるで、人として見てない言い方やめてくれないっすか....」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「なんか、腹立つんで・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「─────」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・たくッ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「その彼女とやらの名前も知らないのによく 言うぜ・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──ほらよ」
  ──ぽすっ
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・これって」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「植物由来の香水だ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「お前の付けてる合成香料よりは匂いが抑えらていてストレスも感じにくい」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「女性ものだが、会うんだったらそっちの方を付けてやれ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「うん....えっ? ・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「それと、彼女の苗字は”仲子”(なかち)」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「一人の人として見るってんなら、名前ぐらいは覚えろよ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「下の名前は自分の方で聞け」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「あっ、はい・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──なんだ、その間抜けな返事は」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「いやだって!」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「確かアンタって、すごい獣人嫌いでしたよね」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「まさかここまでしてくれるとは思わないじゃないっすか!?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「こっちはあくまで仕事だぞ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「色々調べだってするし、手助けぐらいもする」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──むしろ、俺はお前に聞きたい」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「なんすか」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「アンタらチャラ男は、人との関係を重視する」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「それゆえ関係を壊れることを酷く嫌うし、 実際悩んでもいた」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「それでも選んだ理由はなんだ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「・・・・・・」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「俺って、獣人の友達できたことないんッすよ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「だからこの機会に、そんな友達がいてもいいなと思っただけッすよ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「はあ・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「やっぱり、チャラ男って分かんねえわ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「失うものだって多いはずなのによく選ぼうとするよな。その行動力には感心するよ...」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──でも、」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「そう言った”変わり者に”救われた人もいるんすよ 世の中」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「?そうなのか・・・」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「それに、彼女が可愛いかったのは本当っす」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「だから、知りたいっすね」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──彼女が”可愛い”と思える何かを」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「だったら、言うことはねえよ。好きにしろ」
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「ありがとうございましたっす」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──それと」

〇屋上の入口
友井 淳一 (ともい じゅんいち)「──────」
桐生「──ははははッ」
  葛井 竜逸(くずい りゅういち)
  『 ”──あいつ等と話、付けてこい” 』

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