第3話「白球の魔物にご用心」(脚本)
〇学校の校舎
第3話
「白球の魔物にご用心」
〇教室
男子「俺のアニキ、今年の全国出るんだぜ!!」
男子「今年はどの学校が勝つかな?」
・・・夏、高校野球のシーズンが
やってきました
球児達が繰り広げる熱いドラマに、
皆興味津々です
しかし、現実がそうであるように
全ての子供が高校野球を
称賛しているわけではありません
例えば・・・・・・
榊翔太(サカキ・ショータ)「オレとかなー!!!!!!!!!!!!!!」
〇競技場の通用口
榊翔太(サカキ・ショータ)「・・・ここで主に東京に住んでる皆様のために、何故我々一部地方民の子供が高校野球を敵視しているのかを簡単に説明する」
榊翔太(サカキ・ショータ)「結論から言うと、テレビ局とテレビを観ている人達というのは、高校野球が大好きだ」
榊翔太(サカキ・ショータ)「未来ある学生達が高校野球という一時的なイベントのために疲弊し、将来をかなぐり捨て、学校や仲間()のために壊れていく様は─」
榊翔太(サカキ・ショータ)「──他人の人生を生の映画として見ているようなもので、視聴者は感動という名のエクスタシーをガンガンに感じてしまうのだ」
榊翔太(サカキ・ショータ)「ので、球場がお膝元にある地方においては、テレビ局はこぞって試合を生中継しようとする」
榊翔太(サカキ・ショータ)「すると試合時間の都合のため、他の番組は枠を取り上げられる事になる。 たとえば──」
榊翔太(サカキ・ショータ)「これだったり」
榊翔太(サカキ・ショータ)「こういうのだったり」
榊翔太(サカキ・ショータ)「日曜朝を楽しみにしている子供が好きなアレやコレやが犠牲になるため、地方の子供には野球嫌いが一定数いるというワケさ」
〇教室
榊翔太(サカキ・ショータ)「・・・そのくせ、全ての人間が野球が好きだと盲信してるもんだから、それをどうにかするワケでもなく──」
榊翔太(サカキ・ショータ)「──子供達の野球離れを招いて、このザマですよ」
榊翔太(サカキ・ショータ)「まったく、オオタニサンがいなかったら どうなってた事やら・・・」
男子「・・・誰に向かって話してるのさ?」
榊翔太(サカキ・ショータ)「この作品を読んでる読者の皆様に決まってるじゃないですか、ねえ?」
男子「あ、そっかあ」
???「・・・・・・・・・」
生妻沙織(キツマ・サオリ)「・・・私も」
生妻沙織(キツマ・サオリ)「好きじゃない・・・」
榊翔太(サカキ・ショータ)「君は・・・同じクラスの沙織さん」
〇水たまり
生妻沙織(キツマ・サオリ)「わたしのお姉ちゃん・・・吹奏楽部なの」
生妻沙織(キツマ・サオリ)「今年の夏は吹奏楽部のコンクールがあるって張り切ってたんだけど・・・」
生妻沙織(キツマ・サオリ)「野球部の応援のために、コンクール辞退して応援に行く事になって・・・」
生妻沙織(キツマ・サオリ)「嫌だって言っても、周りは野球部員のために応援に行けの一点張りで・・・」
〇中規模マンション
〇明るいリビング
榊翔太(サカキ・ショータ)「・・・って話が学校であったんだ」
ルーナ・アルテミア「そんな事が・・・」
ルーナ・アルテミア「確かに応援も大事だけど、嫌がる人を無理やりやらせるのもどうかと思うわぁ」
榊翔太(サカキ・ショータ)「利権だとか立場だとか、色んなものが絡んでるんだろーけどね」
榊翔太(サカキ・ショータ)「・・・でも、何かおかしいな」
ルーナ・アルテミア「あら?」
榊翔太(サカキ・ショータ)「他の部活に応援強制するって事なら、それなりに名を上げてる野球部のハズだよね?」
榊翔太(サカキ・ショータ)「それなら学区の近いここにも噂は聞こえてくるハズだけど、そういう話も無いし・・・」
ルーナ・アルテミア「・・・・・・!!」
榊翔太(サカキ・ショータ)「そういや・・・ちょっと前に謎の怪物を見たって噂を聞いた事があったけど」
榊翔太(サカキ・ショータ)「まさか、不快獣・・・!?」
ルーナ・アルテミア「宇宙船も、空間の歪みを観測してます〜 可能性は高いわぁ〜」
榊翔太(サカキ・ショータ)「じゃあ、早速・・・!!」
ルーナ・アルテミア「ええ〜い☆」
〇大きな木のある校舎
某高校
〇白い校舎
野球部員「おい貴様!我々の応援をしないとはどういう事だ!」
野球部員「みんなで心を一つにして大きな事をがんばる・・・何故それをやろうとしない!」
沙織の姉「何が心を一つにして頑張るよ!」
沙織の姉「目標だったコンクールも諦めて・・・こんなの、野球部による独裁だわ!!」
野球部員「黙れ!お前の言っている事こそ吹奏楽部の身勝手ではないか!」
野球部員「クーラーの効いてる部屋で楽器で遊んでいるような奴は、炎天下で俺達を応援していればいいんだ!!」
野球部員「・・・ですよね?ヤキューブンさん!」
???「ベーッスッスッス!!その通り!!」
不快獣・ヤキューブン
沙織の姉「ひっ・・・怪獣!!」
不快獣・ヤキューブン「ベスススス!!よく見ればお前美人でベス!」
不快獣・ヤキューブン「俺様の専属マネージャーにしてやるでベス!ありがたく思うでベス〜!」
沙織の姉「嫌あああ!!誰か助けてええ!!」
「待てッ!!!!」
不快獣・ヤキューブン「ベスッ!?」
沙織の姉「あれは・・・ニュースで見たロボット!」
〇戦闘機の操縦席(空中)
榊翔太(サカキ・ショータ)「間一髪!間に合ったか・・・」
ルーナ・アルテミア「みなさぁ〜ん! これからここは戦場になりまぁ〜す!」
ルーナ・アルテミア「早く逃げてくださいね〜!」
榊翔太(サカキ・ショータ)「おらっ!!早く散れ野球部どもーっ! 踏み潰されたいかーっ!」
〇白い校舎
不快獣・ヤキューブン「ベススッ!よくもやってくれたベスな レイセイバー!」
不快獣・ヤキューブン「だが・・・俺様をシグナルガやアメーザのような三下と同じにしない方がいいでベスよ!」
不快獣・ヤキューブン「むううん!!!!」
不快獣・ヤキューブン「ベススス! ロボットだけあって流石のパワーだ! 俺様と互角とは・・・!」
不快獣・ヤキューブン「だがこれならどうかな!? 盗塁ッ!!!!」
〇戦闘機の操縦席(空中)
榊翔太(サカキ・ショータ)「消えたッ!?」
〇白い校舎
不快獣・ヤキューブン「俺様はここだ!!」
〇戦闘機の操縦席(空中)
ルーナ・アルテミア「きゃああっ!!」
榊翔太(サカキ・ショータ)「なんてスピードだ!追いきれないぞ!」
〇白い校舎
不快獣・ヤキューブン「ベーッスッスッス!驚いたか!」
不快獣・ヤキューブン「俺様は盗塁を使うことで猛スピードで動く事ができるのだ!」
〇戦闘機の操縦席(空中)
榊翔太(サカキ・ショータ)「・・・盗塁ってそういう事じゃないと思う」
〇白い校舎
不快獣・ヤキューブン「ベーススス!お前達には万が一もの勝ちの可能性はないでベス! この試合、俺様の完封サヨナラホームランでベス!」
不快獣・ヤキューブン「オーオーオー! ゆけゆけ巨人ー!」
〇戦闘機の操縦席(空中)
榊翔太(サカキ・ショータ)「・・・・・・・・・」
榊翔太(サカキ・ショータ)「あんた今”巨人”と言わなかったかい?」
〇白い校舎
不快獣・ヤキューブン「ベス?」
〇戦闘機の操縦席(空中)
榊翔太(サカキ・ショータ)「・・・いい事教えてやる」
榊翔太(サカキ・ショータ)「ここは・・・」
榊翔太(サカキ・ショータ)「”虎”の勢力圏だ!!!!」
〇白い校舎
野球部員「は?お前そっちかよ・・・」
野球部員「あっちのファンの応援なんかいるか!」
野球部員「(虎では)いかんのか?」
不快獣・ヤキューブン「しっ、しまった!パワーがああっ!」
〇戦闘機の操縦席(空中)
ルーナ・アルテミア「あの不快獣、やはり周囲の支持率をパワーに変換してたみたいですねぇ〜」
榊翔太(サカキ・ショータ)「支持率が無くなったから、もう盗塁も あの馬鹿力も使えないってワケだ」
榊翔太(サカキ・ショータ)「・・・チャンスは今しかない!」
ルーナ・アルテミア「武装セレクト〜♪」
〇白い校舎
〇戦闘機の操縦席(空中)
ルーナ・アルテミア「エネルギー刃、展開〜!」
〇白い校舎
〇戦闘機の操縦席(空中)
ルーナ・アルテミア「さあ翔太くん!今ですよ〜!」
榊翔太(サカキ・ショータ)「レイジング・・・ざぁぁーーーん!」
〇白い校舎
不快獣・ヤキューブン「べっ、ベスウウウ!!!!」
不快獣・ヤキューブン「虎でも・・・ええんやで!!」
〇SNSの画面
高校野球、他生徒への応援強制問題───
貴重な夏休みを潰されるとの声─────
他部活へのパワハラ問題が────
ちくわ大明神────
学校と高野連の癒着疑惑────
〇明るいリビング
榊翔太(サカキ・ショータ)「沙織さんのお姉さんの学校の野球部、全国辞退したんだって」
ルーナ・アルテミア「他部へのパワハラがSNSで暴露されちゃいましたからね〜」
ルーナ・アルテミア「他の学校も、生徒を応援に行かせるのを止めたりしてるようですね〜」
榊翔太(サカキ・ショータ)「ま、高校野球もそれによる感動も、一概に悪いものじゃないのは前提だけど──」
榊翔太(サカキ・ショータ)「──誰かを苦しめたり悲しませたりして作られた感動だけは、いいものなんかじゃないからね」
ルーナ・アルテミア「うふふ〜」
〇東京全景
〇渋谷のスクランブル交差点
街頭テレビ「レイセイバーの活躍により、事件の裏にいた怪物が撃破され────」
〇低層ビルの屋上
???「・・・・・・へえ」
???「あれが連盟のロボット兵器 レイセイバーかぁ・・・」
???「・・・・・・」
???「・・・今の所は驚異じゃない、か」
次回へ続く