読切(脚本)
〇黒
シャー
〇本棚のある部屋
恭子「空は快晴! 最高のデート日和!」
今日は薫と渋谷で遊ぶ約束をしている
二人とも初めての渋谷デビューだ
恭子「おっと!」
恭子「ガラにもなく早起きしちゃった」
恭子「渋谷とか何着て行ったらいいんだろ? 薫に恥かかせる訳にもいかないし」
恭子「よし! この前買った、新しいパンツ履いて行こ!」
〇黒
ゴソゴソ
〇本棚のある部屋
恭子「ん?」
恭子「はぁ・・・」
〇白いアパート
恭子「行ってきます」
〇通学路
ザッザッ
〇駅前ロータリー(駅名無し)
〇駅のホーム
〇駅のホーム
プァー
〇電車の中
タタンタンッ
〇電車の座席
薫とは大学の映画研究会で知り合った
二人とも地方から上京したので、カルチャーギャップで盛り上がった
入学してひと月足らずだが、今ではすっかり1番の親友だ
・・・
今日、私は薫に告白するつもりだ
薫ならきっと、私を受け入れてくれる
〇渋谷駅前
恭子「早く着きすぎたかな」
恭子「えーと」
恭子「ハチ公・・・ハチ公」
恭子「いた!」
恭子「・・・ん?」
〇ハチ公前
???「君、渋谷初めてでしょ?」
???「え? 何でわかるんですか?」
???「よそから来た人は見ればわかるよ」
???「案内しようか? いい店知ってるよ」
???「でも、待ち合わせしてるから」
〇渋谷駅前
恭子(・・・)
恭子「アイツは何をやってるんだ?」
〇ハチ公前
???「ちょっと電話して体調が悪いって言えば平気だよ」
???「そんな、困ります!」
???「俺と遊んだ方が絶対に楽しいって」
〇黒
〇ハチ公前
???「痛ってー!」
恭子「何やってんだテメーは」
薫「恭子ちゃん!」
若者「この女、グーで殴りやがった! 警察呼ぶぞ!」
恭子「呼べば? 逆に痴漢ですって訴えてやる」
若者「き、きったねー! 冤罪じゃねーか!」
恭子「ナンパも痴漢も大差ねーよ」
若者「ふんっ!」
若者「お前みたいなメスゴリラ、誰が口説くか!」
恭子(やれやれ とんだ邪魔が入るとこだったぜ)
薫「恭子ちゃん 男の子みたいでかっこよかったー!」
恭子「そ、そう?」
薫「うん まるで彼氏に守られてるみたいだった」
恭子(こ、これはチャンスなのでは・・・!?)
薫「あ、ごめんね 女の子に男の子みたいだなんて」
恭子「・・・いや、いいよ」
恭子「それより、ずいぶん早く来てたんだね 待たせてゴメン」
薫「ううん 私が勝手に早く来ただけだから」
薫「恭子ちゃんと遊ぶのが楽しみで30分前に来ちゃった」
〇黒
〇ハチ公前
恭子(何だこの可愛い生き物は! 食べてしまいたい!)
薫「少し早いけど、映画館行く? 1本前の上映に間に合うかも」
恭子「そ、そうだね 行こうか」
〇映画館の入場口
〇おしゃれな受付
受付スタッフ「いらっしゃいませ」
薫「『シン・メガザメ』2名お願いします!」
〇映画館の座席
薫「楽しみだね」
〇黒
〇映画館の座席
恭子「しっ 始まったよ」
〇黒
〇おしゃれな受付
薫「あー 面白かった!」
恭子「お腹空いたね 何か食べてく?」
薫「私、スイーツ食べたい!」
恭子「じゃあ、喫茶店でも入ろうか」
〇テーブル席
店員「いらっしゃいませ ご注文はお決まりですか?」
恭子「私、珈琲とサンドイッチ 薫は何にする?」
薫「うーん どうしよう」
薫「チーズケーキも食べたいけど、パンケーキも捨てがたい・・・」
恭子「じゃあ私がパンケーキ注文するよ 二人で半分こしよ」
薫「いいの!」
恭子「もちろん」
恭子(・・・ふっふっ 間接キスいただき!)
薫「すみません 取皿もらえますか?」
店員「かしこまりました」
恭子(そう来たか・・・)
〇テーブル席
薫「直前PVで「水爆で進化したサメ」って聞いた時は、ただのパロディかと思ったけど・・・」
恭子「思わぬ傑作だったね」
薫「うん」
薫「サメにも人間にもなり切れないメガザメに、思わず同情しちゃった」
恭子「人間たちに追われてヒロインと海に逃げていくラストは、キングコングのアンチテーゼかな?」
薫「私は逃げたんじゃなくて、自由を選んだんだと思うな」
恭子「その解釈はポジティブ過ぎない?」
薫「そうかなぁ」
薫「好きな人と広い海で誰にも邪魔されずに生きられるんだよ?」
恭子「・・・」
薫「どうしたの? 恭子ちゃん」
恭子「ねえ、薫は好きな人とかいる?」
薫「うん お父さんとお母さん あとは恭子ちゃんも」
恭子「私も大好きだよ!」
恭子「でもそうじゃなくて、異性として好きな人はいる?」
薫「男の子かぁ・・・」
恭子「っ・・・!?」
恭子(そうか・・・ やっぱりそうだよな)
薫「今はいないかな 恭子ちゃんは誰か好きな人いるの?」
恭子「私は・・・」
〇黒
恭子(受け入れてもらえなかったら、きっとこの関係も終わる)
恭子(結果の見えた勝負をする必要があるのか?)
恭子(・・・告白しなければ、今の関係を続けられる)
〇テーブル席
恭子「私もいない、かな」
薫「そっか」
薫「でもそのうち見つかるよ! 人類は70億人もいるんだから!」
恭子「そうだね・・・」
〇黒
〇テーブル席
恭子「通りから音楽・・・?」
薫「あっ! きっとレインボーパレードだよ!」
恭子「レインボー・・・パレード?」
薫「LGBTQの人たちが街を練り歩くんだ」
恭子「そ、そんなことしたらLGBTQだってバレちゃうじゃない」
薫「それでいいの 「覚悟を決めた」っていう決意表明なんだよ」
薫「私たちも見に行こ!」
〇渋谷の雑踏
LGBTQの男性「ハッピープライド!」
〇渋谷の雑踏
LGBTQの女性「ハッピープライド!」
〇渋谷の雑踏
〇黒
恭子(すごい・・・ かっこいい)
恭子(私だって・・・)
〇渋谷の雑踏
薫「ハッピープライド!」
恭子「ねえ、薫」
薫「何? 恭子ちゃん」
恭子「実は私・・・」
恭子「体は女だけど・・・心は男なんだ」
薫「へ?」
恭子「私は薫が好き 異性として好き!」
薫「・・・ありがとう」
薫「でも、ごめんなさい」
恭子「・・・そっか そう、だよね」
薫「本当は私もね、告白しなきゃいけないことがあるの」
恭子「?」
薫「・・・私もなの」
薫「私は恭子ちゃんと反対で、体が男で心が女なの」
薫「それでもいい・・・かな?」
恭子(待て待て!)
恭子(つまり私は男に告白したのか? でも、中身は女なわけで・・・)
恭子(いや、それでも私は薫が好きだ! なら答えは決まってる!)
恭子「ぜひ、喜んで!」
薫「ふふっ こちらこそよろしくお願いします」
薫「私達、似た者カップルだね」
恭子「行こう」
薫「え?」
恭子「世界に宣言しよう 私達はここにいるって!」
薫「・・・うん!」
恭子「ハッピープライド!」
私は薫の手を引いてパレードに飛び込んだ
〇黒
──これから様々な困難が私達の前に立ちはだかるだろう
でもきっと
どんな壁だって乗り越えられる
〇黒
2019/4/28 私は男になった
すごくいいお話でした!
告白するまでのドキドキ感や、その後の二人の様子にめちゃときめきました。
マイノリティでもいいじゃない!
って思うんですよね。
いいお話しでしたね、ハッピーエンドでみんなが元気になるような、素敵なお話しでした。人を思うのは自由だし、何の偏見もありませんがやはりまだまだあるところにはありますよね。
確かに考え方、思想、精神を持ってる方は十人十色ですよね。
それを非難する方が間違っていると思いますが、強制するのもよくないとは思います。
この物語のような純粋な気持ちが、大事なのかもしれませんね。