エピソード3、運命の出会いは、剣と共に。(脚本)
〇華やかな寮
ティアナ(今日は何も起きませんように...!)
祈るような気持ちで登校した朝。
けれど、それは儚くも砕け散った。
レオン「ティアナ、訓練場に来い」
ティアナ「......え?」
無表情の男子生徒――。レオン=フェルディナンド。
金髪の前髪から覗く目は、じっと私を見据えている。
ティアナ「...断ったら?」
レオン「...無理にでも連れて行く」
ティアナ(めっちゃ怖い!)
〇闘技場
ティアナ「...で、どうして私、模擬戦やらされてるの...」
レオン「“やらされてる”じゃなくて、“やってもらってる”の間違いだろ」
剣を構えたレオンは、さっきからまったく笑っていない。
レオン「お前、只者じゃない。カトリーナに気に入られるなんて、普通の転入生じゃ無理だ」
ティアナ「いや、それは私も謎なんだけどっ!?」
私はギリギリでレオンの剣をかわしていた。
避けられるのは、転生前に学んだ護身術+なんか謎の“直感”の力かもしれない。
ティアナ「ぜえっ、はぁっ、無理無理無理!」
レオン「やっぱり避けた。素人じゃないな」
ティアナ「そっちがガチ剣士だからでしょ!? 魔法も剣も両方使えるとか、チートじゃん!!」
レオン「それを避ける方がチートなんだが」
ティアナ「ぐぬぬっ...」
ティアナ(これ、本当に乙女ゲーム?命がけなんだけど!?)
レオンの剣がピタリと止まった。
レオン「...まあいい。おまえは敵じゃない、ってのはわかった」
ティアナ「やった!これで解放──」
レオン「でも、俺の興味は消えない。今度は魔法で模擬戦だな」
レオン様が...。ニヤリと笑った。...気がする。
ティアナ「なんでぇぇぇえええ!!?」
〇古書店
その頃。
屋上の塔の上で、本を読む少女がいた。
――アナシスタ=エヴァレット。
美しい白の髪に、青色の瞳。
アナスタシア「...また、誰かに目をつけられてるのね、ティアナ」
遠くに見える剣の閃きを眺めながら、彼女は小さく溜息をつく。
アナスタシア「貴女は本当に、無自覚なんだから...」
その指先が、本のページを滑らかにめくる。けれど視線は、もうそこにない。
アナスタシア「カトリーナ様に“愛でられて”るのに...まだ足りないの?」
ぼそりと、誰にも届かない声で呟いた。
アナスタシア「貴女が傷つくのは、見たくないの」
彼女の瞳には、ほんの一瞬だけ感情の波が揺れた。
〇貴族の部屋
その日の夕方。私は部屋で全力でぐったりしていた。
ティアナ「今日はもう...寝る...」
ごろんとベッドに倒れ込む。そこに、トントンとドアを叩く音。
カトリーナ「ティアナ? 少し、お話できるかしら」
カトリーナ様だった。
カトリーナ「ふふ。模擬戦...見ていたわ」
ティアナ「えっ、見てたんですか!?」
カトリーナ「ええ。とても可愛かったわ」
ティアナ「...戦ってるのに!?」
カトリーナ「えぇ。剣を交えるあなたも、愛おしかったわ」
ティアナ「...カトリーナ様の“可愛い”の基準がわからないです...」
ティアナ(でもなんか...ほっとする...)
その後、彼女は私の頭を撫でてくれた。
大きな掌は優しくて、心が静かに溶けていくようだった。
〇貴族の応接間
けれど、私の知らないところでは──
ノア「...ティアナ・ルシエール。次は、僕の番だね」
ふわりと笑う王子、ノア。
〇古書店
そして、塔の上から静かに見下ろすアナシスタ。
それぞれの視線が、確かに私に向けられていた。