延長ヒキツギ

たくひあい

普通の少女(脚本)

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〇アパートのダイニング
  コンニチハ
納仁科寧音「だあれ?」
?「コンニチハ」
?「この辺りの土地を、カウコトニナッタ」
納仁科寧音「?」
  懐かしい、夢。
  ある日。
  赤坂じゃない人がインターホンを押した。
?「コンニチハ。我々はまだ、この辺りの言葉に不慣れでね」
  『この辺り』の土地を買うことになった、と言ってスーツを着た大人が訪ねてきた。
  明らかにカタコトの日本語を喋っている、金髪のカッコいいお兄さんと、
  
  多分日本人と見られる髭の人。
  それが、ドアの前に居たのだ。
  もし、これがラブコメ漫画なら憧れるシチュエーションかもしれない。
  しかし、あたしはただ、混乱していた。
  
  買い物するのになんでうちに来るの?と。
  それに。小さかったあたしはあまりアニメや漫画に馴染みがなかった。
  体感180くらいデカい男性に囲まれて、
  
  『怖い』と思った。
  あと、カタコトというのも、当時流行っていた本・・・・・・の
  
  人に化けて出てくる妖怪(何故か日本語喋る)みたいに見えて、
  なんか、こう、『人に化けてる?』
  と思ったのだった。
納仁科寧音「はわわわわ・・・・・・」
?「では、我々はこれで」
?「アリガトウゴザイマシタ」
  戸惑っているうちに彼らは帰って行ったのだが
  この辺りの土地・・・・・・さっきの金髪の人と、なんか髭の人とかが管理するの?
  とか、しばらく謎に混乱したものだった。

〇生徒会室
  授業が終わると部室に直行した。
  真面目に部活をしよう!
  ってことで、今日は真面目に文章と向き合っている。
梅ヶ丘 ゆりこ「寧音ちゃんの小説の人って、金髪の人が一人くらい居るよね」
  近くの机で文芸誌をめぐっていた百合子が言う。
納二科寧音(なにかねね)「え?」
納二科寧音(なにかねね)「あー・・・・・・」
  それを聞いてあたしは、そういえば、と思った。
納二科寧音(なにかねね)「そうかも、ね」
梅ヶ丘 ゆりこ「なんか拘りとかあるの?」
納二科寧音(なにかねね)「拘り、っていうか・・・・・・」
納二科寧音(なにかねね)「なんか、懐かしくなる、かな」
納二科寧音(なにかねね)「何でだろ・・・・・・」
梅ヶ丘 ゆりこ「ふふ、なにそれ」
  迷ったけど、まぁいいかと昔の話をちょっとだけ語る。
納二科寧音(なにかねね)「怖いと思っちゃって、あんまり優しく出来なかったなとか・・・・・・」
納二科寧音(なにかねね)「きっとそういうのが、まだ残ってるんだろうなぁ」
梅ヶ丘 ゆりこ「人に化けてる?って、ふふふ。可愛い」
納二科寧音(なにかねね)「うるさいなー! 純粋だったんだよ」
梅ヶ丘 ゆりこ「でも、まだ気になるなんて、よっぽどだったんだね」
納二科寧音(なにかねね)「その言い方、怪しい」
梅ヶ丘 ゆりこ「だってー。羨ましいよ。 『メルちゃんの執事』みたいだよね」
納二科寧音(なにかねね)「羊?」
梅ヶ丘 ゆりこ「執事」
梅ヶ丘 ゆりこ「少女漫画なんだけど・・・ 今度持ってくるよ」
納二科寧音(なにかねね)「あ、ありがとう?」
  自分でもわからない。
  あのとき、あまり深く考えていなかったのに。今も無意識に、意識しているんだろうか。
納二科寧音(なにかねね)「うーん・・・・・・」
納二科寧音(なにかねね)「あ、でも」
梅ヶ丘 ゆりこ「何?」
納二科寧音(なにかねね)「綺麗な目、だったな」
須隠 要 (すがくし かなめ)「うわー! 見つけちゃった」
  しばらく各々の活動をしていたときだ。後ろの棚の方をごそごそしていた後輩が突如叫ぶ。
納二科寧音(なにかねね)「あ、須隠さん、課題は終わったの?」
  確かさっきまでは、部活の課題(部長が置いて行った)をやって居た筈だ。
  だが、そんなものより今は気になることがあるらしい。
須隠 要 (すがくし かなめ)「皆の去年のアルバムですよ!」
  大袈裟にリアクションしながら彼女は目の前に一冊の本をひろげ始める。
納二科寧音(なにかねね)「あぁ・・・・・・」
梅ヶ丘 ゆりこ「懐かしい!1年はまだ居なかったもんね」
須隠 要 (すがくし かなめ)「寧音先輩。顔ちがくないですか? 整形したんすか?」
納二科寧音(なにかねね)「失礼だな!」
  あたしは去年の春頃、花粉症で目や唇が腫れていた時期がある。
  そこそこ目立つ症状だった為、皮膚科に通っており、内服薬とか塗り薬とかを服用していた
納二科寧音(なにかねね)「整形じゃない! 回復したの!」
須隠 要 (すがくし かなめ)「ええっ!!」
納二科寧音(なにかねね)「驚くな~!!! あたしのデフォルトはこっちなの!!」
須隠 要 (すがくし かなめ)「ひいー!ごめんなさいごめんなさい」
梅ヶ丘 ゆりこ「わー!! 二人とも、部室で走っちゃだめだよお!」
  私は普通に生きていく。
  普通が一番だ。
  普通のやりとりをしながら、
  あたしはふと「いつまで」続くのだろうと考えた。
  だけど、薄々分かっている。
  普通ってのは、
  「なる」ものじゃない。
  いつだって「維持する」もので―――ちょっとでもバランスを崩せば無くなってしまう。
  村田さんのバイト先や、あたしを出待ちしているという事は。文芸誌が既に「魔の手」に在るという事はそういう事だ。
  いつだって、想定されているのは「権力者の都合」と「大人にとっての平和」だけで
  ――その影響下の子どもは、自力で立ち上がらなきゃいけない。
  仮に大人が居ても、守られるのは「命だけ」
  それでも戦いなんて無い、平和なんだよと、
  いつだってあたしは言って来た、そう矯正してきた筈。
  それが、普通だった。
  ドアが開き、部長がそこから顔を出したときに、あたしは言った。
納二科寧音(なにかねね)「部長。 あたし―――やります」
部長「そうか。考えて来たのだな」
納二科寧音(なにかねね)「はい」
  夢は見続けなきゃいけない。
  普通の為には、変わり続けなきゃいけない

〇街中の道路
  思えば、昔から。
  何処まで時間を稼ぐことが出来るのかって、あたしはいつも、ずっと、考えて居た。
納仁科寧音「あたし、延長され続ける」
?「でも・・・」
納仁科寧音「あたしが普通じゃない事は、 お母さんたちも、気にしてた」
納仁科寧音「きっと、貴方とあたしは違う・・・・・・」
?「パパと、ママの事?」
納仁科寧音「・・・・・・」
  大人は、血液や、■■■■が違うと、子ども■■■■■■■■■■■■■■
  。あたしたちは、その冷たい眼差しの中で暮らして来た。
  あたしには、どうしても普通が必要だった。
  そうじゃないと、それを維持しないとみんなが不機嫌になって家が壊れてしまうから。
納仁科寧音「何も無くなって、心なんて無くなってしまうだろうけど」
納仁科寧音「きっと、いつかそれが普通になる」
納仁科寧音「みんなが、普通に笑って暮らせるし、 きっと争いも起きないし、」
納仁科寧音「大丈夫、バレないよ」
  あたしが異常だという事は、あたしが普通にしていればいいと
  ずっとそう思っていた。

  だけど、今になるとこうも思う。
  あたしが普通じゃないと、異常だと、
  何故周囲が不機嫌になるのか?
  何故『そっち』が普通なのか?

次のエピソード:不倫と慰謝料

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