最弱スキルで転生した俺、おばあちゃんのおつかいで初めて死を覚悟する(脚本)
〇山道
おばあちゃん「それじゃよろしく頼むよ、若いの」
おばあちゃんはにこやかに、杖を支えながら一歩前に出た。
その姿に、俺はつい安堵のため息をついた。
???(よかった、おばあちゃん、意外と元気そうだし、大丈夫かな...)
だが、ふと考える。
???(おばあちゃんを護衛する仕事、って...果たしてどれくらい危険なんだろう?)
おばあちゃん「さっ、行こうかね!道中、何かあったら守ってくれよ!」
おばあちゃんが嬉しそうに言うと、俺はまた小さな不安がよぎる
???(まぁ、道端でちょっとモンスターが出るくらいなら、なんとかなるかも... でも、もし強い魔物が出てきたら...)
微風も、正直、無力だ。
こんなんでどうやって身を守るんだろう...?
〇草原
町を出て、しばらく歩くと、周囲の景色はどんどん自然に包まれてきた。
村の外れ、広がる草原を歩きながら、俺はあたりを警戒して目を光らせる。
???「おばあちゃん、これからどこに行くんですか?」
ふと、話しかけてみた。
おばあちゃんはにっこりと、ちょっとした謎めいた笑みを浮かべながら言った
おばあちゃん「うちまでさ。すぐ近くなんだ。 だけどね、道中、ちょっとお使い頼まれてたから、それを済ませに行くんだよ」
???「お使い?」
おばあちゃん「うん!それがね...」
おばあちゃんはふいに足を止め、俺の方を見て、ひそひそ声で言った。
おばあちゃん「ちょっと、秘密のおつかいなんだよ」
???「秘密って...?」
おばあちゃん「うふふ、まぁ、着いてからのお楽しみさ」
そう言っておばあちゃんは、また軽やかに歩き出す。
〇草原
俺は少しだけ戸惑いながらも、歩調を合わせる。
???(でも、この辺り、ちょっと薄暗くなってきたな)
???(おばあちゃん、平気なのか...??)
おばあちゃん「あれ、見て!」
突然、おばあちゃんが小さな声で叫んだ。
俺は驚いて振り向くと、遠くに黒い影が見えた。
少しずつ近づいてきている。それは、何かの影。
???「な、なんだ?」
おばあちゃん「狼だよ。気をつけて!」
おばあちゃんがさっと背後に身をひるがえ、杖を構えた。
???(────狼?)
???(まさか、本当に出てきたのか!?)
心臓がドクンと跳ね上がる。
黒い影は、どんどんこちらに迫ってきた。
見たことのある、狼の姿だ。
大きな体、鋭い牙、そして凶暴そうな眼光。
考えてる余地も無く、狼は飛びかかってきた。
???(うわ、やばい!)
???「おばあちゃん、危ない!」
俺は急いで前に出ようとした。が──
おばあちゃん「待ちな」
おばあちゃんが止めた。
おばあちゃん「じっとしてて。これくらい、あたしに任せなさい」
おばあちゃんは杖を力強く地面に突き立る。まるで魔法のようにその場の空気を変えた。
びくっと肩を震わせる俺。
???(まさか、このおばあちゃん、魔法使い!??)
狼が迫る。
おばあちゃんの杖の先端から、ひゅんと風が吹き出した。
それは、ほんの微かな風だった。
まるで微風が草を揺らすように──しかし、それがまるで何かを呼び覚ましたかのように。
一瞬の後、風のように流れる何かが視界に見えた。
???「なんだ、これは...?」
俺が思わず呟くと、狼がその場で急に立ち止まり、尻尾を巻きながら後退し始めた。
おばあちゃん「これが、私の力さ」
おばあちゃんは、ゆっくりと微笑んで言った。
その後ろでは、狼がもうすっかり逃げて行くのが見えた。
???(え、えええ!?何が起こったんだ!?)
おばあちゃん「あぁ。あれは私が“風”を使ったんだよ。 微風でも、相手にはちょっとだけ恐ろしい力になる」
???「微風?...それって、俺と同じスキル...?」
俺の言葉におばあちゃんはクスクスと笑って、肩をポンポンと叩いてくれた。
おばあちゃん「そうだよ。君と同じ、微風。それを使うには、少し工夫がいるけれどね」
???「でも、どうして狼があんなにすぐに引き下がったんだ?」
おばあちゃん「ふふ、実はね、あたし、長年の経験で微風をうまく使うコツを知ってるんだよ」
おばあちゃん「それに、狼だって、多少は怖がるんだよ。強い者には」
おばあちゃんがにっこりと笑った。
俺はその言葉を聞いて、少しだけ安心した。
???(なるほど...微風を使うには、やっぱり技術が必要なんだな)
おばあちゃん「さあ、行こうか。お使いも、もう少しだよ」
おばあちゃんがもう一度歩き出すと、俺も後ろからついて行った。
でも──
???(この調子で、また危険なものに遭遇したら...)
次に、どんなモンスターが現れるのか、
俺は少しだけ、胸が高鳴るのを感じていた──。