最弱スキルで転生した俺、気づけば英雄になっていた。

翡翠。(最垢)

最弱スキルで転生した俺、護衛の次はオトドケモノを頼まれる(脚本)

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〇草原
???「そういえば、おばあちゃん、秘密のお使いって...」
おばあちゃん「ふふふ。もうすぐさ」
  おばあちゃんはへにゃりと笑った。
猫「にゃーん」
  目的地へと歩きだそうとした、その瞬間。俺とおばあちゃんの前に、子猫が立ちはだかった。
  その猫はただならぬ雰囲気を醸し出していた。
???「猫...?ごめんな。俺達急いでるんだ。この先行っていいか?」
猫「...にゃーん」
  猫...。子猫は鳴くだけだった。俺とおばあちゃんは仕方なく、黒猫を無視して先に行くとにした。
おばあちゃん「待ちな。若いの」
???「え?」
  おばあちゃんは杖で俺の背中をツンツンと突き呼び止めた。
化け猫「なーん」
  猫の声。たしかに猫の声だった。しかしさっきの猫より、ドスがきいた鳴き声だった。
  俺は振り返るのを拒んだ。怖かった。もしこの猫がモンスターだったら。敵だったら。襲ってきたら。強かったら。色々と考えた。
おばあちゃん「化け猫さ。若いの、あんたが倒しな」
???「え、お、俺が?!」
???(いやいやいや...おばあちゃん!俺微風だけしか使えないんだぞ!それにおばあちゃんみたいに上手く微風を操れないんだぞ!)
  またまた心のなかで総ツッコミ。
  でも、俺は知っている。
  ここで諦めたら、後で後悔するって――。
  でも、一体どうやってスキルを使えばよいのだろうか。
  スキルなんて一回も...。いや、一回使ったことがある。転生したばっかの時、森で一度スキルを発動した。その時は確か...。

〇霧の立ち込める森
???「スキル、発動!」

〇草原
  俺は化け猫に手のひらを向けた。
  最弱スキル【微風】。
  これが戦いに役立つのかわからない。けれどやってみる価値はある!
  やらない後悔よりやって大成k...((((
  と、とにかく!やらなくて後悔するより、やって後悔したほうがいいに決まってる!座右の銘で合ったはずだ。
  フワァ。
  相変わらずの微風だ。
  しかし、その微風を放ったときだった。
化け猫「フーッ、シャーッ!!」
  化け猫はこちらを見るなり威嚇し、去っていった。
???「勝った...のか...?」
おばあちゃん「若いの。あんたにはただならぬオーラが出てる。あの化け猫のようにね」
  おばあちゃんは半分睨んで半分笑っているような、不気味な笑い方で言った。おばあちゃんはこう続けた。
おばあちゃん「けどあの化け猫は悪心のオーラだ。憎しみ、悲しみ。殺気。すべての悪心が詰まったオーラ」
おばあちゃん「けど、あんたのオーラは少しだけ違う。良心のオーラだ」
おばあちゃん「勝ちたい。助けたい。楽しませたい。幸せにしたい。その気持であんたのオーラは出来ている」
おばあちゃん「あの化け猫はきっとあんたのオーラにビビって逃げたんだろうな」
???(なんだ...。スキルで勝ったんじゃないのか...)
  力が抜け俺はへなへなと地べたに座り込む。
おばあちゃん「若いの。お使いまであとちょっとだよ」
  おばあちゃんはそう言うと杖を差し出してきた。
  このおばあちゃんは護衛の依頼者。なのにこんな見ず知らずの護衛者の俺に優しくしてくれる。改めて優しさを心に感じた。

〇森の中の小屋
  数分歩いた。するとそこには小さなメルヘンチック(?)な小屋が合った。
おばあちゃん「アベル。あれ、貰いに来たよ」
  ドアを開けると、そこには白い髪の少女が居た。
アベル・ウォーカー「イトおばあちゃん!待ってたんだよ〜!!一人で大丈夫だったの?」
  白い髪の少女はパタパタとおばあちゃんに駆け寄った。
おばあちゃん「あぁそれなら心配いらないよ。この若いのといっしょに来たからねぇ」
  そうおばあちゃんが言うと少女はパッとこちらを見た。
アベル・ウォーカー「若いの...?さん!おばあちゃんがお世話になりましたっ!!えっと、私アベル!貴方のお名前は...?」
  少女は太陽のような笑顔でこちらを見た。
???「えっと、名前......」
  思い出せない。思い出そうとすると頭が痛む。おかしい。その他のことは思い出せてたのに名前だけは思い出せない。
  しどろもどろになっている俺をおばあちゃんと少女は気の毒そうに見つめる。
アベル・ウォーカー「思い出せないのなら私付けてあげる!」
アベル・ウォーカー「そうね...。貴方白みたいに純粋だから、クレム!クレム・ブランカ!どっちも白を強調させる名前なのよ!」
  クレム。クレム・ブランカ。
  俺は今日からそう名乗る。名付け親のアベルによって名付けられた名前
  これからこの名前で。この街でやっていきたいと、もう一度心に誓った。
???「な、なんだ、これ?!」
クレム・ブランカ「こ、これ...」
アベル・ウォーカー「クレム君、見た目が...」
おばあちゃん「ほぅ...。これは珍しい。アベル、お前が名付けたことでこの世界がこいつを受け入れたんだ」
クレム・ブランカ「受け入れ...た?」
おばあちゃん「あぁ、そうさ。お前はこの世界に認められたんだ」
  認められた。その言葉が胸に刺さった。嬉しかった。
クレム・ブランカ「あ、そういえば、秘密のって...」
おばあちゃん「あぁそういえば言ってなかったね。これだよ」
  おばあちゃんはにへと笑い木箱を差し出してきた。
クレム・ブランカ「木箱...?」
  おばあちゃんが差し出してきた木箱の中には──
  ・謎のハーブ束
  ・干からびた魔獣の角
  ・小瓶に詰められた紫色の液体
  ・カラカラ音を立てる何かの骨
  ――と、どう考えてもヤバいものばっかり詰め込まれていた。
  おばあちゃんはニコニコしながら言った。
おばあちゃん「それを、森の向こうの“薬師ルド婆さん”に届けておくれ」
クレム・ブランカ(え、え、)
クレム・ブランカ「えぇぇぇぇぇ?!」
  やっと護衛が終わったと思ったら、お届け物か。随分、ハチャメチャな一日だな...。
おばあちゃん「お使いに期限はない。落ち着いた時にでも届けておくれ」
クレム・ブランカ(...落ち着いた時、ね)
  俺は、重たい木箱を見下ろして、小さくため息をついた。
  カラカラと、また骨みたいな音が鳴る。
  ──はたして、俺にそんな「落ち着いた時」なんて、来るんだろうか。

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