Labyrinth station『Shibuya』

AOI AO

読切(脚本)

Labyrinth station『Shibuya』

AOI AO

今すぐ読む

Labyrinth station『Shibuya』
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇地下街
尾頭橋直哉「渋谷駅? 降りた覚えは・・・」

〇地下街
ガイド「Labyrinth Station『Shibuya』へようこそ」
  なんだ? 誰だ? 会ったことないぞと俺は少しうろたえる。けれど、男はお構いなしだ。

〇地下街
ガイド「しくじりましたね」

〇地下街
  言われて、これまでのことが一気にフラッシュバックする。事の起こりは、六か月定期の三回目を使い始めた日だった。

〇電車の中
  目黒を発射するまでは異常なし。目黒を発車したとたん時空に異変が起きた。景色がぐにゃりと曲がり、あたりを静寂が包む。

〇電車の中
案内役「三回目の定期券購入おめでとう! さあ、二分間の小劇場の始まりだよ。これで、毎日が主人公。スポットライトがあなたを直撃♡」
  妖精? コスプレイヤー?
  目が爬虫類みたいだけど、こんなカラコンはやってるのか?

〇電車の中
案内役「ルールは簡単。車内でのイベントに対処すること。常識問題だからカンタン、カンタン。五回クリアでアイテムゲットね」

〇電車の中
案内役「クリアに失敗したら? それはその時のお楽しみということで💛 さあ、始まるよ。そうそう、リセットはご法度!」

〇電車の中
  電車は恵比寿を出る。渋谷まで二分。
  中年男性が女子高生に痴漢行為を働いている。これがイベント?

〇電車の中
  キツネにつままれた気分だが、正しく対処しろと言われているのだから、その線に沿って対処だ。まずはスマホで顛末を記録する。

〇電車の中
尾頭橋直哉「おっさん、鉄道警察に行こうぜ。とぼけてもムダ、撮らせてもらったから、証拠あるし」

〇電車の中
  がくんと衝撃があって電車が渋谷駅に止まる。乗客のざわめきが戻って、皆、普通に行動している。

〇時計
  夢かと思ったが、異変というかイベントは次の日からも続けられた。大きな事件はなかったが、いやな出来事が続いた。

〇時計
  痴漢、スリ、迷惑スマホ。それでも俺は無難に四日間を乗り切った。そして五日目、つまり五回目のイベントを迎えた。

〇電車の座席
  優先席に寝転がってたヤンキーを注意した高校生が、逆切れしたヤンキーに暴行を受けるというイベントだった。どうする?

〇電車の座席
  ヤンキーを止めることは可能だ。ただ、ボクシングジムに通う俺が手を上げたとなるとまずくないか。一瞬、迷った。

〇電車の座席
  だが、次の行動で俺はヤンキーの顔面にこぶしを叩き込んでいた。「アマチュア・ボクサー暴れる」とか書き立てられるのかなあ。

〇電車の座席
  気が付くと車内は平常に戻っている。
  そして例のあの少女が、ポイと丸いキャンディーのようなものを放ってよこした。

〇電車の座席
案内役「クリア、おめでとう。拝ご褒美のプチ・ボム。気を抜かずにこれからもファイト!」

〇電車の中
  六日目のイベントはでかかった。時空がゆがむとともに、隣の車両から幾人かの乗客が駆け込んできた。背後には刃物を持った男が!

〇電車の中
  俺は迷わず非常ボタンを押し、急ブレーキがかかった。途端、時空がゆがみ、少女のあきれ声が耳元で響く。

〇時計
案内役「止めてどうするの。援軍が来られないでしょ。どうしてアイテムを使わないかな。ため込むタイプなの、お兄さん」
  こうして俺は渋谷駅構内に放り出されることとなった。

〇地下街
ガイド「電車が山手線を一周してくる65分間で、次のイベントをクリアすること。構内を突っ切ってハチ公の鼻面をなでる」
  イケメンはこっちの気持ちなどお構いなしに、イベントの説明を始める。

〇時計
  馬鹿にしてんのか、そう思った。渋谷はホームじゃないけれど友達と何度も遊びに来ている。楽勝だ。

〇地下街
ガイド「簡単じゃないよ。電車が一駅進むごとに渋谷駅構内は細かなブロック移動を繰り返す。自分の位置が正確に把握できるかな」

〇地下街
ガイド「位置把握を失敗するとラビリンスにとらわれて失敗し、君は消える」

〇地下街
尾頭橋直哉「消える?」

〇地下街
ガイド「気を付けたまえよ。日本では年間約八万五千人が行方不明になっている。その一割くらいが渋谷で消えているんじゃないかな」

〇時計
  電車内マナーについて試されているだけだと思っていたのに、どうしてそうなる?消えるってなんだよ。行方不明って?

〇地下街
ガイド「プチ・ボム一つでは心細いだろうけれど、ファイトだ」

〇時計
  人間、唖然としすぎると、感情も言葉もなくしてしまうものらしい。いまの俺みたいに・・・。イケメンはお構いなしにこう続けた。

〇地下街
ガイド「では、始めよう。Ready go! リセットはご法度だ!」

〇電脳空間
  言葉に押し出されて俺は一歩を踏み出す。その刹那、構内の利用者が一斉に俺を振り返った。ぞっとする。目が爬虫類だ。敵か⁈

〇流れる血
  こいつらを蹴散らして、ブロック移動を繰り返す渋谷構内を駆け抜ける。
  制限時間65分。
  渋谷は今、サバゲ―会場になった!

〇電脳空間
  キャンディーみたいなプチ・ボムとスマホだけが俺の武器ってわけだ。
  なんてこった。
  けど、仕掛けられた罠は絶対に突破する。

〇電脳空間
  Ready Go!

コメント

  • 展開がめまぐるしくて楽しませてもらいました。突然このような世界となったら動転してしまいますよね。果たして主人公はラストのイベントを成功させることができたのか、気になりますね。

  • 楽しいストーリーでした。まさかのキャンディ(笑)急にこんな展開に置かれるとびっくりですよね、続きがあればもう少し読んでみたい気がします。

  • 舞台が渋谷のサバゲーですか!
    でもこれ、本当に命がかかってますよね!?
    どう見ても人間じゃなさげな人達が出てきて、さてどうなるんだろう?と楽しみに思いました。

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ