エピソード4(脚本)
〇保健室
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「なあ・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──なんで、焼いた肉なんか食べた」
〇黒
生肉には、豊富なミネラルとビタミンが含まれていて、焼かずに食えば獣人に必要な栄養素を摂取できる
だが、焼いてしまった肉には本来取るはずだった栄養素が壊れ、食べても栄養失調を引き起こす不完全な食事となる
〇保健室
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「というか、前まで生でも食べていただろ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「唐突に食うものなんて変えれば、体にだって相当な負担がかかるし、」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──そんな生活を続けたら、最悪死ぬぞ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「そんな事、アンタが一番よく理解してんだろ」
ガラル・ライカ「─────」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「なんでこんなことをしたか俺には分からんが」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「アンタらは、わざわざ焼かなくても食べれんだから普通に食べろよ」
ガラル・ライカ「普通、か・・・・」
ガラル・ライカ「なあ、葛井・・・・」
ガラル・ライカ「君たちは生で肉を食べられると思うかい?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──いや、無理だろ」
ガラル・ライカ「そうだね、無理だ」
ガラル・ライカ「私たちは、強力な胃酸で生肉にいる菌を分解できるが、人はそれができない」
ガラル・ライカ「生肉なんて食べれば、含まれる菌によって体に深刻なダメージを与えてしまう」
ガラル・ライカ「──だからこそ、周りから見た私は気持ち悪い異物を食べる”バケモノ”なんだ」
ガラル・ライカ「同じものを食べていれば仲間意識こそ芽生えるが、」
ガラル・ライカ「違うもの・・・ましてや、食べれない物を 普通に食べていれば生物としては軽蔑する」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・要するに、他の奴らに合わせて食える物を変えていたと」
ガラル・ライカ「まあ正直、他の奴からどんな風に見られようとどうでもよかったのだが」
ガラル・ライカ「生徒会長となったいま、そういうわけにもいかない」
ガラル・ライカ「バケモノが生徒会長をやっていれば周りだって不安にもなるし、相談相手から本心を聞き出せなくなる」
ガラル・ライカ「──それは、私が生徒会長をやる上で一番避けなればいけない事態だ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・そこまでして、やる必要あんのかよ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「お前が言ってる奴らだって、悪口しか言わないような奴ばかりだったろうが」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「憎いと、そう感じるはずだ・・・」
ガラル・ライカ「憎いとは思うさ」
ガラル・ライカ「肉を食べるたびに人の顔をじろじろ見られるし、聞こえないであろう声で色々と言われる」
ガラル・ライカ「ライオンだから、むちゃくちゃ遠くまで聞こえるしな(約8キロ先まで聞こえる)」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「だったら───」
ガラル・ライカ「だが、言ってる人間もごく少数なんだ」
ガラル・ライカ「罵詈雑言ばかりが目につくが、実際はみんな思ってることはそれぞれ違う」
ガラル・ライカ「ちょっと言われたからって、投げやりに成ってしまうほどではないさ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・」
葛井 竜逸(くずい りゅういち)
──だが、助けてもらえなかった事実自体なにも変わらねえじゃねえか
葛井 竜逸(くずい りゅういち)
コイツが何を思おうと、環境が良い方へと
傾くわけじゃない
葛井 竜逸(くずい りゅういち)
ただ祈って天気が変わることがないように人の性根が気持ち一つで変わることはありえない
葛井 竜逸(くずい りゅういち)
腐った奴は腐ったままだし、何もしない奴は最後まで何もしない
葛井 竜逸(くずい りゅういち)
そういう奴らが堆積し、出来上がった環境が今の社会を作り上げたんだろうが・・・
ガラル・ライカ「だが、見てのとおり上手くはいってない...」
ガラル・ライカ「──やはり、君の力が必要らしい」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──!!!」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「な、なぜ俺が出てくる!!」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「アンタの話だと、人の食い物が食えないから関係を築きづらいってだけのことだろ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「わざわざ俺である意味が───」
ガラル・ライカ「確かに、私が栄養失調と労働過多でぶっ倒れることを除けば、いま君である必要性は理由ない」
ガラル・ライカ「──ただ、君は”獣人の見分けがつく”」
〇おしゃれな食堂
ガラル・ライカ
──初めて会った時、生肉を食べていたから肉食獣であることは分かるかもしれない
ガラル・ライカ
だが君は、私がライオンであることまでを
言い当ててしまった
ガラル・ライカ
まさか、ピンポイントで当てられるとは
正直驚かされたよ
〇保健室
ガラル・ライカ「獣人本人である私たちですら見分けることが困難だというのに、君はひと目見ただけで分かってしまった」
ガラル・ライカ「その力は、獣人だらけのこの世界において 種族を考慮せず寄り添い、支える」
ガラル・ライカ「──今後の活動で”必ず”必要とされる力だ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──────」
ガラル・ライカ「それに、君は獣人嫌いなわりに妙に動物に対する知識がある」
ガラル・ライカ「実際、どうやって見分けたんだい?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──食い方だよ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「ライオンは、群れで狩りをするから獲った 獲物は基本盗り合いになる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「その名残からなのか、大きめの肉を一口で 食べようとする癖がある」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「そして、アンタにはその傾向があった」
ガラル・ライカ「なるほどね」
ガラル・ライカ「やはり、葛井はいい目をしている」
ガラル・ライカ「私としては、君が生徒会に戻ってくることを願っている」
ガラル・ライカ「私一人だと、できないことも多いからね」
ガラル・ライカ「もちろん、君にその気があるならだけど」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「どうして、アンタは・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──”人を恨まない”」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「あれだけ言われて、誰もアンタを助けようとはしてくれなかった・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「なのになぜ!?そいつらを助けようと努力して、人である俺の力まで求めるんだ!!」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「あんな奴ら、見限れば全て上手くいく話だろうが!!」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「俺も過去に色々あったから獣人全般は嫌いだし、今でも獣人を”ぶっ殺してやりたい”と思っている」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──憎いとも感じてる、獣人を助けるなんて反吐が出る!!」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「そう感じながら、俺は生きてきた」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「─────」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──でも...」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「でも頼む・・・教えてくれ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「俺は一体どうすれば、この煮えたぎるような ”憎しみに”苦しまず済むんだ・・・」
ガラル・ライカ「・・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──ッ....」
ガラル・ライカ「・・・・・・」
ガラル・ライカ「言葉を返すようで悪いが・・・・」
ガラル・ライカ「──”君は、獣人を恨んでいないよ”」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──!!?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──あ、ありえない、そんなはずがない!!」
〇川に架かる橋の下
葛井 竜逸(くずい りゅういち)
”あんな事”までされて、恨んでねえわけ!!
〇保健室
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「だから俺は・・・・俺は!!」
ガラル・ライカ「・・・・・」
ガラル・ライカ「なにがあったのか私には分からない・・・」
ガラル・ライカ「──でも、間違いなく君は恨んでいない」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「───ッ」
ガラル・ライカ「でなければ、獣人である私を助けるはずがないんだ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・たった、それだけでか?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「ちょっと優しくされた程度でなにが分かる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「恨んでいても、信頼を得るためにやった可能性だって全然あるだろ」
ガラル・ライカ「ほおー」
ガラル・ライカ「君は、あの行為を”たった”で済ませてしまえるようなことだったのか」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・どういう意味だ」
〇おしゃれな食堂
ガラル・ライカ
あの状況であれだけ多くの人がいたのに、だれも動こうとはしなかった・・・
ガラル・ライカ
──それは、あの場の正解だったからだ
ガラル・ライカ
獣人が強さで正誤を判断するのであれば、人間は多数決で決める
ガラル・ライカ
あの場において、獣人を嫌う者が多数派だったから、誰も動こうとはしなかったんだ
ガラル・ライカ
周りを把握し、その場に適した行動を、集団で取ろうとする・・・・それが、人だ
ガラル・ライカ
もし恨んでいるのであれば、他の同士たちと決めた結果に満足し、一緒になって傍観していたことだろう
ガラル・ライカ
──だが、君は違った
ガラル・ライカ
みんなが出した答えに納得せず、行動を起こした・・・・
ガラル・ライカ
──”何も得られない”のにだ
ガラル・ライカ
確かに、助けた相手から信頼は得られるかもしれない
ガラル・ライカ
──だが同時に、あの集団においての信用を失う行為でもある
ガラル・ライカ
場合によっては、助けた相手と一緒に敵とみなされることだってある・・・・
〇保健室
ガラル・ライカ「でも君は、獣人が嫌いなはずなのに私を助けようと動いてくれた」
ガラル・ライカ「そうとしか、私には考えられなかった...」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・」
ガラル・ライカ「君がなんと言おうと....」
ガラル・ライカ「──あの瞬間、私は君に助けられたんだ」
ガラル・ライカ「だから、改めて礼を言わせてほしい」
ガラル・ライカ「”ありがとう、助けてくれて”」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──!!」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「礼なんて、はじめて言われたよ....」
ガラル・ライカ「一応、最初の方にも言ってるんだけどね...」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「社交辞令のだろ、いちいち覚えてらんねえよ」
ガラル・ライカ「はははッ!! 手厳しぃーな、葛井w」
ガラル・ライカ「まあ、君らしいっちゃ、君らしいけどな」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・それと、最初に助けようとしたのは、やどっ君であって俺じゃない」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「むしろ、止めようとした側だしな」
ガラル・ライカ「それでも構わんよ」
ガラル・ライカ「動いてくれたこと自体が嬉しいのだからな」
ガラル・ライカ「それに褒めて伸ばすのが、私の仕事のようなものだしな」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「いや、間違いを正してこそ、会長の役目だろ」
ガラル・ライカ「それは、方針の違いというものだ」
ガラル・ライカ「私は、私がされて嬉しいことをしたい」
ガラル・ライカ「この考え自体を曲げる気はないよ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「はあ・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「だったら、アンタのしたいようにしてくれ...」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「その心もとない部分を俺がどうにかしてやる」
ガラル・ライカ「!! それって──」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「だから、よろしく頼むわ.... ”会長”」
ガラル・ライカ「─────」
ガラル・ライカ「──ああ、」
ガラル・ライカ「──よろしくな、葛井」
──ガラガラッ
やどっ君「──先生、連れてきたよ」
保険の先生
ごめんなさい、少し席を外してしまっていて
ガラル・ライカ「いえ、時間を空けて少し落ち着きましたから」
保健の先生
──あらそう....?
保健の先生
一応、持ってきた栄養剤飲んで、少し休んでいきなさい
ガラル・ライカ「はい、ありがとうございます」
葛井 竜逸(くずい りゅういち)
なんだろう・・・
葛井 竜逸(くずい りゅういち)
こいつの猫かぶる姿を見てると、寒気が...
ガラル・ライカ「それと、やどっ君.... だっけ」
やどっ君「──は、はい!」
ガラル・ライカ「食堂で私が倒れていた時、君が先行して動いてくれたと聞いた」
ガラル・ライカ「私が力量不足だったばっかりに、迷惑をかけてしまい申し訳ない」
やどっ君「──いえいえ、全然気にせんと あっ方言!」
ガラル・ライカ「もし、困ったことがあれば生徒会に来てくれ」
ガラル・ライカ「その時は、私にできる限りを君に尽くすよ」
やどっ君「──気になさらなくて大丈夫ですよ」
やどっ君「とにかく、大事に至らなくて良かったです」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「じゃあ、俺らは授業があるのでこれで──」
ガラル・ライカ「──あ、そうだった 葛井」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「なんだよ? 会長」
ガラル・ライカ「”あの仕事”、まだ片付いてないから引継ぎで頼むよ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「まあ、そうだよな」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「やりかけた事が寝て起きたらきれいに片付いてたなんて、夢物語は存在しねえか・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「分かった....あとは俺がやっておく」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──それに、仕事をやり残すのはきらいだ」
ガラル・ライカ「そうか、あとは頼んだよ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「ああ、任された」
やどっ君「え、竜ちゃん?何を会長さんと約束したの」
やどっ君「なに?”やり残したこと”って」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「まあ、言うなれば・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「”けじめ”だな、ちょっとした」
〇まっすぐの廊下
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──いたいた、久しぶり ルミさん」
ツクヨ・ルミ「──先輩、お久しぶりです」
ツクヨ・ルミ「一週間も連絡がなかったから、心配してたんですよ~」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「ごめんごめん、ちょっと勉強が忙しくて」
ツクヨ・ルミ「そうなんだ、よかった〜」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「で、ちょっとルミさんにお願いが───」
ツクヨ・ルミ「さっきから気になったんだけど、呼び方 違くない?」
ツクヨ・ルミ「”ルミたん”で良いよ、いつも通り」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「じゃあ、ルミたん... ちょっと、お願いがあるんだけど」
〇田舎道
ツクヨ・ルミ「また、私の畑に来るなんて何か気がかりな事でもあるの?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「うーん、気がかりというか・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「ルミたんに伝えたい事があるから来たんだよ」
ツクヨ・ルミ「──!!」
ツクヨ・ルミ「な、なに・・・・」
──ボゴォッ
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──それは、”コイツだ”」
ツクヨ・ルミ「──ぎゃあああああ、ミミズゥ──!!」
ツクヨ・ルミ「──先輩、そんなの早くぺッして!ペッ!」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──おいやめろ!俺がミミズを口に放り込んだみたいだろうが」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「って違う、そうじゃなくて」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──コイツを畑から取り除かないでやってほしいんだ」
ツクヨ・ルミ「え〜!なんで〜!?」
ツクヨ・ルミ「うねうねしていて気持ち悪いし、あんまり うちの畑に入れたくないんだけど・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「まあ見た目が気持ち悪いのは俺も認める...」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「でも、コイツは土を良くする益虫なんだ」
ツクヨ・ルミ「えきちゅう?って、なんでしたっけ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「簡単に言うなら、利益を与える虫だ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「バッタやイモムシは、作物の葉をダメにするから害を与える"害虫"なんて言われるが、いくつか例外の虫もいる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「そのうちの一体がコイツだ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「ミミズは土しか食べないから作物を荒らしたりもしないし、土を柔らかくして水捌けまで良くする」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「それに、コイツが出したフンは畑の微生物を増やしてくれる」
ツクヨ・ルミ「でも、それって、あまり良くないんじゃ」
ツクヨ・ルミ「菌が増えたら、食べれなくなるんじゃ・・・」
ツクヨ・ルミ「人って、菌にすごく弱いって聞くし・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──!!」
〇テーブル席
ガラル・ライカ「──獣人たちは、人間にとっての美味い物が分からないってことかな」
ガラル・ライカ「そうやって大切なものを護っているんだよ」
〇田舎道
なるほど、どおりでか・・・・
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──大丈夫だ、土の中にいる菌はとった 野菜を洗えば落とせる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「それに菌たちがいないと、むしろ作物の味を悪くする」
ツクヨ・ルミ「どいうこと?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「古い土には、硝酸っていう化学物質が含まれていて、それらを吸収した野菜はエグ味が増して不味くなる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「でも、微生物が土の中の硝酸を分解するから、作物が硝酸を吸収するのを防いでくれる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──そういう意味で、ミミズも微生物も 畑にとってなくてはならない存在なんだ」
ツクヨ・ルミ「ふーん、そうなんだ・・・」
ツクヨ・ルミ「わかった、これからはそうするよ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「あと、これは俺のマガママになるんだが....」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「むやみに、生物の命を奪わないでくれると 助かる」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「アイツらも、必死に生きてここにいるから それを踏みつけにする行為はしたくない」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──もちろん、作物を荒らす虫はこっちが生きるために躊躇しなくていい」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「ただ、他の部分では同じ虫でも優しくしてくれると俺個人としては嬉しい・・・」
ツクヨ・ルミ「・・・・・・」
ツクヨ・ルミ「──分かった」
ツクヨ・ルミ「虫も出来る限り殺さないよう気をつけるね」
ツクヨ・ルミ「──ありがとう 先輩❤️」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・こちらこそ、ありがとうだ」
〇田舎道
ツクヨ・ルミ「先輩、今日はありがとうございました」
ツクヨ・ルミ「意外と先輩、面倒見がいいですよね」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「....もともと生徒会長やってた身だからな」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「これぐらいできて当たり前な感じはするが...」
ツクヨ・ルミ「そんなことはないですよ〜」
ツクヨ・ルミ「真っ当な大人でも人にあたる方、結構いますから」
ツクヨ・ルミ「その中で言えば、先輩はかなり良い人という事になるんじゃないですか?」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「そういう事になんのかね・・・」
ツクヨ・ルミ「な〜り〜ま〜す〜」
ツクヨ・ルミ「”先輩にも、きっといい人見つかりますよ”」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「いい人って、そんな───」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──”おい待て!それって”」
ツクヨ・ルミ「先輩...」
ツクヨ・ルミ「──”私と、別れてください”」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・・・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・そうか」
ツクヨ・ルミ「──実は、他に好きな人ができたんです」
ツクヨ・ルミ「私、その方を一途に思い続けるために先輩との関係を終わらせるべきだと思いました」
ツクヨ・ルミ「短い時間でしたが、ありがとうございました」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「─────」
ツクヨ・ルミ「”それとも、私のハーレムに入りますか?”」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「・・・いや、やめておくよ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「分かった、短い間だったが俺も楽しかったわ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「あと、不純異性には気をつけろよ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「うち学校、そういうの結構面倒くさいから」
ツクヨ・ルミ「わー、ぶしつけ〜」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──じゃあな」
ツクヨ・ルミ「─────」
〇まっすぐの廊下
ガラル・ライカ「お疲れ、葛井」
ガラル・ライカ「いやー、仕事をまかせてしまい申し訳ない」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「なんかフられたんだけど・・・・」
ガラル・ライカ「まあ、長く生きてさえいれば失恋の一つや 二つもするさ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「そういう、会長の恋愛経験は?」
ガラル・ライカ「──近寄りがたい美貌というのも罪だね(イケボ)」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「なんだ、同族か フッ──」
ガラル・ライカ「まあ、そんな話は置いといてだ...」
ガラル・ライカ「仕事をこなした今、君は正式な生徒会の仲間だ」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「なんか、長かったようで短かったな・・・」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「ちなみに生徒会メンバーは俺と会長だけか?」
ガラル・ライカ「いや、もう一人いる」
ガラル・ライカ「そいつは───」
───ガシャッ
〇生徒会室
ツクヨ・ルミ「──ハロハロー ❤️」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──ルミ!? なんでここにいんだよ」
ツクヨ・ルミ「──もう先輩、”ルミたん”ですよ!ちゃんと名前、呼んでください!!」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──ッ!! ”ルミ...たん”....」
ガラル・ライカ「へえー、彼女にはそんな呼び方するんだな」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「.....ああ、若気の至りでな(全て本の助言)」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──つうか、なんで居んだよ!俺より、いい男見つけたって、別れただろうが!」
ツクヨ・ルミ「──うん、好きな人は見つけたよ」
ツクヨ・ルミ「一週間、親身に私の話を聞いてもらって、 その...”好きに”なっちゃったんです....」
ツクヨ・ルミ「──”会長”のことが」
ガラル・ライカ「なんか話してたら意気投合してしまってねw」
ツクヨ・ルミ「だから、会長の傍にいたいんです」
──非常食として?
ガラル・ライカ「ということなんだ、葛井」
葛井 竜逸 (くずい りゅういち)「──いや、どういう事だ!説明してくれ」
ガラル・ライカ「──つまり私が会長、葛井が副会長、 ルミが・・・マスコットでいっか?」
ツクヨ・ルミ「いいねー、そうしよう!」
ガラル・ライカ「私たち三人で、頑張ろう!!」
ツクヨ・ルミ「お〜〜!!」
葛井 竜逸(くずい りゅういち)
やばい、こいつらとやっていけるか自信なくなってきた・・・
〇まっすぐの廊下
???
・・・・
???
やはり...あなたは邪魔ですね ”葛井会長”
???
──いずれ、あなたを消します