鳥居のそばでキスをして

にゃぴょう

第1話 転校生と狐の嫁入り(脚本)

鳥居のそばでキスをして

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〇山並み
  新幹線の窓から見え始めたのは、こんもりとした緑の山、山、山。
  これまでいた場所とは全く違う。
  ──いや、結局同じことだ。
  なんの期待もするまいと、僕は揺れる座席に身を任せて目を閉じた──。

〇新幹線の座席
車内アナウンス「まもなく、京都です──」
車内アナウンス「We will soon make a brief at Kyoto station──」
父「乃亜、降りるで」
英田 乃亜(あいだ のあ)「わかった」

〇広い改札
母「どう? 久々の地元は」
父「この蒸し暑さ、懐かしいなぁ」
母「たしかに、成田空港より空気がムワッとしてる」
母「ねぇ、乃亜?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「そうだね」
母「みんな観光客? さすが京都」
観光客「Excuse me! 〈すいませーん!〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「Yes? 〈なんでしょう?〉」
観光客「〈この神社に行きたいんですけど、どの電車に乗り換えればいいかわからなくって〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈ごめんなさい、僕も全然知らないんです〉」
父「〈あぁ、奥の改札を出てすぐ手前のホームから乗れば──〉」
観光客「〈ねぇねぇ!〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈ん?〉」
観光客「〈これからおっきな神社に行くんだよ! きつねがいーっぱいいるんだって!〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈狐が? 面白そうなところだね〉」
観光客「〈きつねだけじゃなくってね、京都には「ようかい」もいるんだって〉」
観光客「〈モンスターだよ!!〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「へ、へぇ」
観光客「〈お兄ちゃんはどこ遊びに行くの?〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈僕は・・・どこだろう〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈旅行で来たわけじゃないから〉」
観光客「〈旅行じゃないの!? じゃあ何、冒険!?〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈はは・・・冒険だったら楽しそうだね〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈引っ越しして来たんだよ。ここに住むんだ〉」
観光客「〈日本に住むの!? いーなー!!〉」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈いい、のかな〉」
母「〈それじゃ、いい旅を!〉」
観光客「〈お兄ちゃん、ばいばーい!〉」
母「まだ路線も地理も全く分かんないわー。 早く慣れなきゃね」
父「乃亜も、京都のこと知っていかなあかんな」
英田 乃亜(あいだ のあ)「〈知ったところで、どうせ・・・〉」
父「ん?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「なんでもない・・・」

〇和風
  鳥居のそばでキスをして
  第1話
  転校生と狐の嫁入り

〇学校の校舎

〇教室
英田 乃亜(あいだ のあ)「雨・・・」
担任「お、空は晴れてるのに雨やね。狐の嫁入りやな」
英田 乃亜(あいだ のあ)「きつねのよめいり?」
担任「ほんなら、新学期1回目のホームルーム始めるでー」
担任「みんな、夏休みの宿題ちゃんとやったか?」
同級生「最初の1週間で終わらせましたー!」
同級生「いやいや、さっき大急ぎで俺の書き写してたやんけ!」
担任「元気そうでなによりや」
担任「今日から、クラスに新しい仲間が増えます」
担任「英田(あいだ)くん、自己紹介してくれはる?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「は、はい」
英田 乃亜(あいだ のあ)「初めまして、英田乃亜です」
英田 乃亜(あいだ のあ)「よろしくお願いします」
英田 乃亜(あいだ のあ)「・・・・・・」
担任「せっかくやし、何かあらへん? 趣味とか、好きなもんとか」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えっと・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「趣味は、あー・・・チェスです」
英田 乃亜(あいだ のあ)「え、えっと・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あの!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ、英田乃亜です、ノアと呼んでくださいッ!8月28日生まれの17歳です、5人家族です、姉と弟がいます、そして、」
英田 乃亜(あいだ のあ)「猫を2匹買っています、種類はアメリカンショートヘアーとノルウェージャンフォレストキャットです、人懐っこくていたずら好きで」
英田 乃亜(あいだ のあ)「昼寝をするのが好きです。好きな食べ物はチョコレート、好きな色はグレー、好きな言葉は『ちりも積もれば山となる』──」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ、さっきのは猫のじゃなくて、僕の好きなものですよ! ハハ・・・」
担任「ありがとうね。そしたら席に──」
  最悪だ・・・
  でも、どうせまたすぐに──
  どこかへ行くんだから
英田 乃亜(あいだ のあ)「!!」

〇教室の教壇

〇教室
英田 乃亜(あいだ のあ)「窓から・・・!?」
荒木 煌一(あらき こういち)「急に雨降ってきて、めっちゃ濡れたわ」
同級生「ちょお、水飛ばすなや」
同級生「髪色どうしてん、カッコよ!」
荒木 煌一(あらき こういち)「ええやろ」
担任「荒木(あらき)くん、はよ席つき」
荒木 煌一(あらき こういち)「はーい」
荒木 煌一(あらき こういち)「その前に・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「先生、オレも自己紹介してええ?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えっ・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「荒木煌一です。コウイチでもコウでもコウちゃんでも好きに呼んでください。4月3日生まれの17歳、4人家族です」
荒木 煌一(あらき こういち)「スズメを大量に飼っています。あと、猿とイノシシもいるかも。めっちゃ人懐っこくていたずら好きです」
荒木 煌一(あらき こういち)「あとはなー、そや、身体動かすのが好きです。好きな食べ物は油あげ、好きな色は赤、好きな言葉は──」
荒木 煌一(あらき こういち)「『今日は自習です』」
「自習て!!」
荒木 煌一(あらき こういち)「あ、めっちゃ人懐っこくていたずら好きなんは、オレのことな」
英田 乃亜(あいだ のあ)「へっ・・・」
同級生「先生、僕も自己紹介したなってきたー」
同級生「俺も俺も!」
担任「そりゃええわ。みんなひとりずつ自己紹介してこか──」

〇学校の廊下
担任「ホームルーム終わり! 今日はこれで解散や」

〇渡り廊下
英田 乃亜(あいだ のあ)「雨、止んだな・・・」
同級生「お、転校生くんや」
同級生「これからよろしくなー」
英田 乃亜(あいだ のあ)「よ、よろしく」
荒木 煌一(あらき こういち)「〜♪」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ・・・」

〇学校の下駄箱
英田 乃亜(あいだ のあ)「あのっ」
荒木 煌一(あらき こういち)「ん?」
荒木 煌一(あらき こういち)「ノアやん! 転校初日おつかれー!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ノア・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「どうしたん、めっちゃ走ってきて」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えっと、さっきはありがとうございました」
荒木 煌一(あらき こういち)「なにが?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「自己紹介のときに、助けてくれたから」
荒木 煌一(あらき こういち)「助けたぁ? あー、ちゃうちゃう」
荒木 煌一(あらき こういち)「なんや面白そうなことやってるなて思て、真似してみただけ」
英田 乃亜(あいだ のあ)「そ、そっか」
英田 乃亜(あいだ のあ)「アラキくんが話すと、教室の雰囲気が変わって」
英田 乃亜(あいだ のあ)「なんというか・・・まるで、魔法みたいだった」
荒木 煌一(あらき こういち)「まほう、か」
荒木 煌一(あらき こういち)「せやな・・・なんでか知りたい?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「え?」
荒木 煌一(あらき こういち)「オレがなんで、魔法使えるんか」
英田 乃亜(あいだ のあ)「え、魔法って、本当に──」
荒木 煌一(あらき こういち)「教えたるわ、ついてきぃ!」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ちょっ・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「ほら、はよ靴履いて! 行くで!」

〇学校脇の道

〇空き地

〇川沿いの道

〇神社の出店
英田 乃亜(あいだ のあ)「ハァ、ちょっと待っ・・・」
松尾のじいちゃん「煌ぼん、おかえりやす」
松尾のじいちゃん「えらい早いなあ」
荒木 煌一(あらき こういち)「始業式やからはよ終わってん。サボりちゃうで」
観光客「すいませーん、これ一串」
松尾のじいちゃん「はいよ、180円です」
英田 乃亜(あいだ のあ)「すずめの、串焼き・・・!?」
荒木 煌一(あらき こういち)「名物やねん。食べる?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「た、食べない・・・」
松尾のじいちゃん「おおきに!」
松尾のじいちゃん「煌ぼん、新しい友達か?」
荒木 煌一(あらき こういち)「せやで、英田ノアくん」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あ、よろしくお願いします・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「ほな行こか」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えっ、ちょっ・・・」
松尾のじいちゃん「気ぃつけて!」

〇神社の石段

〇神社の本殿

〇神社の本殿
英田 乃亜(あいだ のあ)「わぁ・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ここって・・・神社、ってところですか?」
荒木 煌一(あらき こういち)「そうやで。もしかして、初めて?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「うん」
荒木 煌一(あらき こういち)「じゃあここ、なんていう神社か知らん?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「え、うん」
荒木 煌一(あらき こういち)「ほんまに!?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「うん・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「そんな人、いるんや・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ごめん! 僕、京都のこと何も知らなくて」
荒木 煌一(あらき こういち)「ちゃうちゃう! ええねん、ええねん!」
荒木 煌一(あらき こういち)「むしろ、嬉しいっていうか」
英田 乃亜(あいだ のあ)「?」
荒木 煌一(あらき こういち)「なんでもない」
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア! こっちの山、登ってみーひん?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えっ、まだ行くの・・・」

〇山道
英田 乃亜(あいだ のあ)「はぁ、はぁ・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「足元きいつけや、雨のあとで滑りやすなってるわ」
英田 乃亜(あいだ のあ)「キツネの像がたくさん・・・どうして?」
荒木 煌一(あらき こういち)「ほんまに知らんのやな」
荒木 煌一(あらき こういち)「狐はな、神さまのお使いなんやで」
英田 乃亜(あいだ のあ)「へえ、だからこんなにたくさん・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「神様っていそがしいんだね」
荒木 煌一(あらき こういち)「ほんまやな! 神様は狐使いが荒いんや」
英田 乃亜(あいだ のあ)「キツネズカイ?」
英田 乃亜(あいだ のあ)「あぁ、「人使いが荒い」をキツネに言い換えてるのか!」
荒木 煌一(あらき こういち)「分析されると、なんか恥ずかしいな・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「しょーもないボケやで、気にせんといて」
英田 乃亜(あいだ のあ)「いや、狐使いって・・・はは」
荒木 煌一(あらき こういち)「なんや、笑うんや・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ん?」
荒木 煌一(あらき こういち)「いや・・・お、着いたで!」
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、ここくぐってみ──」

〇村に続くトンネル

〇森の中

〇森の中
荒木 煌一(あらき こういち)「俺の秘密の場所や」
英田 乃亜(あいだ のあ)「ここだけ、葉っぱが赤い・・・!」
荒木 煌一(あらき こういち)「不思議やろ。9月は紅葉にはまだ早いけど」
荒木 煌一(あらき こういち)「ここだけは毎年、早いねん」
英田 乃亜(あいだ のあ)「なんだか・・・現実じゃないみたい」
荒木 煌一(あらき こういち)「そうかもしれへんな」
英田 乃亜(あいだ のあ)「え?」
荒木 煌一(あらき こういち)「さっきの、なんで魔法使えるんかって話」
荒木 煌一(あらき こういち)「理由教えたるわ。あんな・・・」
英田 乃亜(あいだ のあ)「えっ、なに?」
荒木 煌一(あらき こういち)「オレな、実は・・・」
荒木 煌一(あらき こういち)「狐やねん」

次のエピソード:第2話 季節はずれの紅葉狩り

コメント

  • 京都の風を感じました。🍃
    自己紹介で困惑していた乃亜くんを助けてくれた煌一くん。
    不思議な彼が最後、乃亜くんに語った正体は狐。果たして真実か否か。🦊

    次回はスチルがあるということで楽しみですね。😄

  • 小さい頃、転校が多かったので乃亜の気持ちがとてもよく分かりました! 一見明るいけど何か抱えてそうな煌一。これからの二人がどう心を通わせ、変わっていくのか、楽しみにしています^^
    離れた地元を舞台にした物語、私も書いたことあるんですが、方言が合ってるか心配になりますよね。引っ越しを重ねると、混ざってしまい何が何やら…笑

  • 雰囲気や方言、シーンたっぷり使って京都独特の雰囲気出す感じが良いですね!エセ関西弁orノットエセ関西弁なのかは全然分からない民なんですけど、とりあえず京都感はヒシヒシ伝わってます😂

    『ノアくんは帰国子女だから流暢な英語で観光客とやり取り出来るぜ!』って最初の場面で、メイン絵師の大福さんのキャラ達で画面占有無双してて大笑いしました😂😂
    これからのノアくん&コウイチくんの進展に期待してます🙌

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