延長ヒキツギ

たくひあい

ちいさなてんしたち。(脚本)

延長ヒキツギ

たくひあい

今すぐ読む

延長ヒキツギ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇病室のベッド
  先の事、未来の事など何も分からないまま、時間が過ぎてゆく。
?「あんた、またバイト中に怪我したんだって?」
村田紗香「うん・・・」
?「馬ッッ鹿ね!本当にいつも鈍臭いんだから」
  目覚めてすぐ、彼女の説教を聞き流しながら、それでもあの
  腕時計男の話はすべきでないと感じ、黙っていた。
村田紗香「・・・・・・」
?「で、どうするの?  遊んでないで早く次見つけなさいよ?」
村田紗香「・・・・・・」
?「あんたはいつもそう、大して熱がなくても倒れて、大して怪我してなくても倒れて。大袈裟なんだから」
?「今度は、バイト先で金銭トラブルで突き飛ばされて転んだ? なんですぐそうなんだろ」
村田紗香「私も、知りたい・・・」
?「本当に情けない。 まともにバイトすら出来ないなんて、」
  何も、答えられない。
  いや、答えたら余計に引っ掻き回すタイプの彼女に何か言いたくはなかった。
村田紗香(悪化しか、しないからなあ)
?「早く次見つけなさい。 わかったわね? 本当は、入院費も払って貰いたいんだけど・・・・・・」
村田紗香「あ、うん。ありがとう・・・」
  だけど、わかった事がある。
  多分・・・・・・
  条件次第では、思っていた以上に目立ててしまうんだ。
  だから、最初から、
  
  結果を出さないように仕組まれている──
村田紗香(仕組みの外・・・・・・ モデル以外を探さなきゃ潰しにかかる気なんだ)
  いや・・・・・・潰しにっていうか、
  
  殺そうとしてるよね
?「じゃ、もう行くから」
村田紗香「・・・・・・」
  何をしても、殺そうとまでされるもんなのか。
村田紗香(バイトすら、ちゃんと出来ない、目立てば殺そうとされる・・・・・・)
  それでも、私の自己責任。
  わかっていても、やり切れない。
  自分が自分自身として目立つことが死を願われる程のもので、
  その場所に同じような誰かが立つことは、
  同じリスクを伴わないなんて。
  それはただ労働でそこそこ疲れる、程度ならマシに思えてしまう理不尽だった。
村田紗香「・・・・・・」
村田紗香「おいおい、この沼深すぎんだけど。もう財布が涙目」
村田紗香「しかしここでつぎ込まないと現場で楽しみきれないのは分かってるんだ!くそー!ポチっ!!」

〇病室のベッド
看護師「村田さん。お食事です」
  推しのイベント物販をチェックしていたら急に声がかかり、ビクッと肩がふるえる。
村田紗香「うわあああ! あ、ありがとうございます!」
看護師「静かに・・・」
村田紗香「はい・・・・・・」
看護師「じゃ、また後で来るので。 何かあったらボタン押してくださいね」
村田紗香「はーい」
  病院食には、ご飯の他におかずと、味噌汁があった。
村田紗香「あ、味噌汁・・・・・・」
  村田家では、祝い事くらいしか味噌汁が出ない。
  母が、味噌汁が嫌いなのだ。
  理由を聞くと、小さいときに猫まんまを食べ過ぎたからだという。
  のだが、給食で三角食べを強いられて来た身としてはご飯、味噌汁、おかずのトライフォースは重要だ。
  なのにご飯とおかずしかないので、よくコンソメキューブとかを溶かして飲んでいた。
村田紗香「いや、まぁ自分で作ればいいんですけどね! 神の味噌汁を・・・」
  もぐもぐ。
  もぐもぐ。
  あー、暇だな・・・・・・
  本でも読もうかな・・・・・・

〇雑踏
  あなたも キョウ の仲間なんでしょう?
?「キョウは、  さなきゃ、いけないんだよ」
納二科寧音(なにかねね)「・・・・・・知らない。 なんて皆同じ!大嫌い!!」
?「・・・・・・は、・・・・・・・・・・・・さ、」
納二科寧音(なにかねね)「何で、そんな事・・・・・・あたしとあんたは違うよ」
納二科寧音(なにかねね)「あたしには、将来が無いもの。 ずっとここに繋がれて、延長されたままで生きていく」
納二科寧音(なにかねね)「だから、そんな無意味なもの、存在しない」
?「確かに、そう・・・・・・」
?「延長は必要だ」
納二科寧音(なにかねね)「ね? 選ばないと──」
?「でも・・・・・・」
納二科寧音(なにかねね)「あんたはただ、怒られたくないから総意を無視している」
納二科寧音(なにかねね)「あたしの言ってる事、わかるよね? 一時の感情で、制度を利用する皆に迷惑をかける」
納二科寧音(なにかねね)「感情に走っちゃ駄目だよ。 それは美しくもなんともない、延長をのぞむのに、偽善も望むなんて」

〇女性の部屋
納二科寧音(なにかねね)「ん・・・・・・」
納二科寧音(なにかねね)「朝・・・・・・」
  まだ怠さの残る身体を無理矢理起こしながら、あたしはベッドから出た。
  今日も学校・・・・・・
  なのだが、なんだか最近は早く目が覚めるので、まだ時間に余裕がある。
  制服に着替えながら、あたしは昨日の事を思い出した。
  昨日の部長の様子、なんだったんだろう?
納二科寧音(なにかねね)「部長の知り合い・・・・・・」
  どうしても想像してしまうのは、
  作家協会絡みの事。
  あの危なそうな人達。
  
  あの中に殺されたと言われている部長のお父さん――の知り合いくらい、いるんじゃないか
納二科寧音(なにかねね)「なんて、あたしの口から言えないしなぁ・・・」
  どう転ぶかわからないし、もし本当にああいう繋がりがあったと知っても「だから?」という話である。
  それに、村田さんの行方も気がかりだ。
  あのハゲみたいなのが何度も追い回すという可能性はある。
納二科寧音(なにかねね)「うー・・・・・・考える事が多すぎる・・・・・・」
  部長とは、「個人情報は最低限にする」と話していたけれど、
  あたしの身内が小説家にいるかも、というだけの話じゃ、だんだんとなくなっている。
納二科寧音(なにかねね)「あのハゲも、素人を買いあさってたっぽいし、ああいうとこに出入りするのかなぁ」
納二科寧音(なにかねね)「・・・・・・結構想像できるかも」
  だって、個人情報を破棄するどころか明らかに濫用してるし
  
  「落ちて悔しくないのか」商法であんな事を言ってたし、
  あれはフツーに詐欺師のやり方だと思う。
  いや、まぁ確かめたところで、単身で乗り込むなんて無理だけれど。
  それでも身近で被害に合う可能性だってある以上は、気が抜けない。
納二科寧音(なにかねね)「企業が黙認しているのかどうかだけでも 確かめるか・・・」
  全体の話なのか、あの人たちの話なのかでも今後の戦略が変わって来る。
納二科寧音(なにかねね)「とりあえず、西峰はクロとして・・・・・・」

成分キーワード

ページTOPへ