第100話 命とは(脚本)
〇研究所の中
2021年 オレゴン州 ポートランド 国立霊長類研究センター B棟 研究室内
斎王は空気と一体化し、フェードは異次元の開口を作り出し、鸞は自身を雀の姿に変え侵入に成功する
斎王幽羅「とりあえず侵入成功だね。人質の場所わかんないけど、こういう時どうするの?」
そう聞くと鸞はその場で『音返しの術』で部屋の外の様子を目視せず確認すると
鸞「警備員だけがいる、人数は2人だ。いけるか?」
フェード「没问题(問題ない)」
斎王は2人の様子を見て不思議に思っていると、鸞がドア付近で大きめのノックをして直ぐに近くの棚の上に乗る
斎王も慌てて空気と一体化し、まもなく警備員が2人入ってくると
フェードは棚に身を潜め後続の警備員の後ろに現れ、肩をポンポンと叩く
驚いた警備員は振り返ろうとするが、瞬間フェードは警備員の肩と肘を掴み
振り返る動作を利用し、そのまま壁に叩きつける。無論その音に前にいた警備員は気づいて振り返るが
フェードはまるで散歩でもするかのように悠々と歩を進め、向けられた銃口に対して
軽く掌底を行い銃口を逸らさせ、その瞬間警備員の腹部に拳を当てる。本来なら防弾ジャケットで効かないはずだが
フェードが行ったパンチによって警備員は腹部を抑えながら銃を落とし、その場に跪く
そしてフェードが2人を縛り上げた後、2人に出てきていいぞ。と伝える
斎王幽羅「すごいねフェード、武器無しで2人を無傷で制圧しちゃった···」
鸞「さっきのパンチ···『透勁』か?」
透勁とは物体を無視して別の物質を攻撃する中国拳法の技である。実際演武では並べられたレンガを
3なら三番目、7なら7番目の場所をその場から動かず、透勁で破壊する演武が存在する。
斎王幽羅「そんな技あるんだ!へぇーすごいなー···」
鸞「さて···尋問だが···どうする?俺がやるか?」
フェード「頼む。私がやると少なからず傷をつけてしまう」
すると鸞は1人の警備員を椅子に座らせ、その辺にあったタオルで視界を塞ぐと懐から小さな『小瓶』を取り出した
鸞「幻術『怨み鴉』」
警備員は小瓶から溢れた匂いを嗅ぎ始めると、次第に恐怖を表に出し始めた
鸞の声から発せられるあまりにリアルなカラスの『声真似』と瓶から香る『腐敗臭』により、警備員は次第に追い込まれる
警備員「カラスが···カラスがいる!助けてくれ···死臭に寄ってきたんだ!逃がしてくれ!」
フェード(こいつ···日本語を話すのか?幹部のセルゲイはロシア人なのに···?)
鸞はそんな警備員の声には耳を傾けず、釘を三本取り出すと
1本でつついたり、三本で軽く刺しながら声真似を続けた。
警備員「ひぃ···!突くな、やめろ!なぁいるんだろ!?頼む、カラスを追い払ってくれ!」
そして鸞は引き続き続けながら合間に言葉を差し込む
鸞「『人質の場所を教えろ』」
警備員「わかった!教える、教えるから···カラス共を襲わせないでくれ!」
警備員「A棟1階の奥だ!そこにいる!」
そう言うと鸞は目隠しを乱雑にとる。警備員は周りの光景を見て唖然とする中、鸞は近くにあった館内マップを広げて見せた
鸞「これを見てくれ。今現在がB棟のここで···A棟の1階が···ここ」
フェード「A棟とB棟を繋ぐのはここの『連絡通路』の2つ、他は外から回るしかない」
斎王幽羅「鸞どうする···?俺とフェードはどうにかできるけど···」
鸞は少し考えた後『策はある···』と言い、ひとまずそれぞれがA棟1階へ向かうことになった
〇地下室
A棟 一時保管室
キング「普通に捕まったな。まぁ当たり前だろうが···」
キング「まさか正面から堂々と行って『かかってこい!』って言うと思わなかったぜ」
シャルル「捕まるのが目的だし。それより···」
シャルルが周りを見ると、一人の男が近づいてきた
ステファノ神父「シスター・カール···どうしてここに···?」
シャルル「ボスの命令でステファノ神父、ルカ神父、ジャン神父を救出しに」
シャルル「···ルカ神父とジャン神父は?」
ステファノ神父「ふたりとも連れていかれったっきりです。恐らく拷問にあってるのかと···」
キング達は焦る様子を見せる一方、シャルルは至って冷静に話した
シャルル「ならステファノ神父、貴方だけ脱出させる」
キング「はァ!?テメェ二人はどうすんだ!まさか見捨てるつもりじゃねぇだろうな?」
シャルル「そのつもりだけど?」
するとキングはシャルルを掴みあげると、睨みつけながら言葉を発した
キング「テメェ···人の命をなんだと思ってる···お前の部下はお前の駒じゃねぇんだぞ」
キング「一人一人生きてんだよッ!心もって、命もって生きてんだよッ!」
シャルル「組織の命と数人の人間の命、選べと言われれば組織を選ぶのが妥当」
シャルル「ランスロットやクーフーリン、孔明だってそうしたはず」
シャルル「キング···感情的になっても改善はしない。それに私達変化武器だってパパに捨てられた『駒』でしょ?」
キング「違ェ!俺ら変化武器は『飛鮫司』と『夏目柊』の子供だ!駒なんかじゃねェ!」
キング「お前は···一度でも···一度でも炉郷荘での日々で自分が『駒』だと思った日があるのか!?」
シャルルはその言葉を受け止めきれず、キングから顔を逸らす中牢の外から男が話しかけた
セルゲイ・ライノヴィッチ「『思い込みが強い力になるぞ』シャルル」
キング「口出してくんな···ブン殴るぞテメェ···」
セルゲイ・ライノヴィッチ「檻の中から檻の外の人間にどうやってだ?まぁそれよりもだ···シャルル、チャンスをやろう」
セルゲイ・ライノヴィッチ「実はな···代表が今日来ててな、それで代表は斎王幽羅の身柄を欲しがってる」
セルゲイ・ライノヴィッチ「人質のひとりは既に殺してあるが、もうひとりはまだ拷問中だ。だから人質を解放させ安全に帰らせるかわりに」
セルゲイ・ライノヴィッチ「『斎王幽羅を寄越せ』」
To Be Continued··· ··· ···