〇白いアパート
絹田茉優「智樹くん・・・」
吉岡智樹「・・・っ」

〇黒

〇シンプルな一人暮らしの部屋
吉岡智樹「蛍くんはこんなこと望んでない」
絹田茉優「・・・」
吉岡智樹「本当に子供ができて、 代わりに何か失ってしまったら──」
吉岡智樹「蛍くんは喜んでくれると思う？」
吉岡智樹「子供は好きだよ？」
吉岡智樹「だけど」
吉岡智樹「俺たちは今のままじゃいられないだろうし」
吉岡智樹「子供が生まれたって、 蛍くんの代わりにはなれない」
吉岡智樹「蛍くんはひとりしかいない」
吉岡智樹「蛍くんは」
吉岡智樹「俺たちがいつも通り仲良くしていれば それで充分なんじゃないのか？」
絹田茉優「・・・っ!!」

〇おしゃれな住宅街

〇けばけばしい部屋
有栖川蛍「忘れ物かい？」
絹田茉優「蛍ちゃん、私は──」
絹田茉優「子供が見たいっていう蛍ちゃんのお願いには応えられない」
吉岡智樹「・・・」
絹田茉優「とりあえず、今はね」
絹田茉優「将来のことは分からないよ？」
絹田茉優「30歳までお互いに相手がいなかったら結婚しよう とか、言ってるかも知れないし」
絹田茉優「でも！」
絹田茉優「私の中で二人が大切な存在なのは変わらない」
絹田茉優「嬉しいことがあったら真っ先に言うし」
絹田茉優「悲しいときは胸を貸りに来る」
絹田茉優「そのときは話を聞いてくれる？」
絹田茉優「私」
絹田茉優「愛してるから」
「二人のこと」

〇けばけばしい部屋

〇花火職人の作業場
絹田茉優「はい、もしもし？」
絹田茉優「はい、はい・・・」
絹田茉優「え？蛍ちゃんが!?」
吉岡智樹「何て？」
絹田茉優「それが・・・」
絹田茉優「様態が思わしくないから、 すぐ来て下さいって」
吉岡智樹「茉優ちゃん」
絹田茉優「うん」

〇立派な洋館
「蛍くん!! 蛍ちゃん!!」

〇洋館のバルコニー
絹田茉優「え・・・？」
吉岡智樹「えーっと・・・あれ？」
絹田茉優「蛍ちゃんは!?」
メイド「実は・・・」
メイド「あなたに電話をかけたあと、 いなくなってしまったのです」
「いなくなった!?」
メイド「はい」

〇洋館の廊下
メイド「入浴されたのは確認したのですが」
メイド「いつまでたっても お部屋に戻られることはなく・・・」
メイド「お薬やカード、靴なども 消えてしまっていました・・・」

〇洋館のバルコニー
メイド「まったくあの人は」
メイド「どこへ行かれたのでしょうか こんなときに・・・」
「・・・・・・」
メイド「行き先に心当たりはありませんか？」
絹田茉優「行き先・・・」
吉岡智樹「四国・・・？」
絹田茉優「蛍ちゃんなら どこでもあり得るね」
メイド「どこでも・・・」
絹田茉優「全国を旅行したいみたいなこと 言ってましたよ」
絹田茉優「どこかで 伝統陶芸品を見てるんじゃないですかね」
「・・・・・・」

〇空
「困った人ね・・・」
　　蛍ちゃんはどこへ行くんだろう
　　焼物の名所かな
　　すごい職人のいるところかな

〇洋館のバルコニー
絹田茉優「ねぇ、智樹くん」
絹田茉優「私たちも旅に出ない？」
吉岡智樹「旅・・・？」
絹田茉優「前に言ってたじゃない？」
絹田茉優「キャンピングカーを借りてさ、 日本中をまわろうよ」
絹田茉優「夏休みとか春休みの、長い休みにさ」
絹田茉優「有栖川蛍を探す旅に出ようよ！」
吉岡智樹「・・・蛍くんは病を患ってる」
吉岡智樹「負担じゃないか？」
絹田茉優「・・・」
吉岡智樹「きゃーーっ」
絹田茉優「気にしない」
絹田茉優「だって、あの蛍ちゃんだよ？」

〇蝶
「蛍ちゃんが、そう簡単にやられるかな？」
「どこかの町で、誰かの弟子になってるんじゃない？」
「今頃、真剣な顔でろくろ回してるよ」

〇洋館のバルコニー
絹田茉優「いつになるかな」
絹田茉優「そういう蛍ちゃんと会えるのは」
吉岡智樹「・・・気長に待とう」
吉岡智樹「時間はたっぷりあるし」
吉岡智樹「茉優ちゃん、そろそろ行こう」
絹田茉優「うん」
絹田茉優「行こっか」
絹田茉優「さようなら、蛍くん」
絹田茉優「絶対に見つけ出すから いい子で待っててね」
絹田茉優「またワイワイしようね、みんなで！」