エピローグ 「ヒーロー」(脚本)
〇広い河川敷
九条 醒夜(くじょう せいや)「兵どもが夢の跡・・・か」
〇広い河川敷
醒夜の父「遅い遅い! 波に足取られとるやんか」
醒夜の父「メジャーリーガーは水上走れるんやぞ!」
九条醒夜(少年時代)「うおおおおっーー!」
〇広い河川敷
九条 醒夜(くじょう せいや)「ホンマ、夢みたいやったなぁ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「プロになって、ヒーローとも戦って」
九条 醒夜(くじょう せいや)「これ以上はバチ当たるわ」
少年「すみませーん、拾ってくれますかー?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「・・・ああ、ええで」
少年「ありがとうございます!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「新しい夢、探さんとな」
エピローグ 「ヒーロー」
〇オフィスビル
九条 醒夜(くじょう せいや)「困ったときはーー原点やな」
〇オフィスのフロア
部長「ずいぶん世間を騒がせてたわね」
部長「それで今日は? 引退の真相を話しに?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「いや、そうや無くてですね・・・」
部長「ウソウソ。就職希望ってことよね?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「都合のいい話やと思ってます」
九条 醒夜(くじょう せいや)「前の時も急に辞めたわけやし」
部長「いいのよ、その分独占取材させてくれたし」
部長「今でもウインウインだったと思ってる」
部長「またうちで働いてくれるなら、私は大歓迎」
九条 醒夜(くじょう せいや)「ホ、ホンマですか!」
部長「ただし。新規雇用扱いね」
部長「給与はさほど出せないわよ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「構いません! ありがとうございます!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「雑用でも何でも喜んでやりますんで!」
部長「じゃ、明日からまたよろしくね」
九条 醒夜(くじょう せいや)「はい、失礼します!」
雑誌社 社員「あーあ。嫌だ嫌だ」
雑誌社 社員「金持ちが道楽で記者ですか」
部長「言葉が過ぎるわよ」
部長「以前も彼は一生懸命働いてくれていたわ」
雑誌社 社員「だって投げれば億稼げる九条ですよ?」
部長「果たしてそうかしら」
部長(彼は書類を利き手の逆で書いていた)
部長(おまけにあの目)
〇オフィスのフロア
九条 醒夜(くじょう せいや)「雑用でも何でも喜んでやりますんで!」
〇オフィスのフロア
部長(前と同じなのよね)
部長(彼がかつて肩を壊した時の目と)
〇オフィスビル
〇オフィスのフロア
九条 醒夜(くじょう せいや)「おはようございます!」
部長「おはよう九条くん。早速だけど仕事よ」
部長「来月のメジャー対日本戦、知ってるわね?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「日米オールスター戦ですね!」
部長「ええ。それに関するイベントが今度あるの」
部長「日米スタープレイヤーへの取材よ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「インタビューさせてくれへんかな〜」
雑誌社 社員「どの雑誌社も狙ってるイベントですよ」
雑誌社 社員「どうせ大手に取られちゃいますって」
部長「そ・れ・が、うちが取れたのよね〜」
雑誌社 社員「ママママジっすか!?」
雑誌社 社員「俺、俺行かせて下さい!」
部長「残念だけど、これは九条くんの仕事よ」
部長「彼の名前を出したらからOKが取れたの」
九条 醒夜(くじょう せいや)「僕ですか? どうして・・・」
部長「きっと行けばわかるわ」
〇お台場
〇撮影スタジオのセット
大谷 イチロー「こっちだ、九条くん!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「ご無沙汰してます、大谷さん」
大谷 イチロー「現役を引退したと聞いたときは驚いたよ」
大谷 イチロー「スポーツ記者に戻ったんだってね」
九条 醒夜(くじょう せいや)「選手やと見えん景色がありますから」
大谷 イチロー「少し残念だよ。また君と野球がしたかった」
九条 醒夜(くじょう せいや)「すみません」
大谷 イチロー「いや、君の人生だ。余計なことを言ったな」
大谷 イチロー「会えて嬉しいよ。今日はよろしく」
九条 醒夜(くじょう せいや)「こちらこそ──」
大谷 イチロー「九条くん!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「痛てて・・・」
カイガイ・ノア・テウマ「いま、何か当たったか?」
カイガイ・ノア・テウマ「誰かと思えば野球から逃げ出した奴か」
九条 醒夜(くじょう せいや)「・・・なんやと」
カイガイ・ノア・テウマ「メジャーが怖かったんだろ。無理もない」
九条 醒夜(くじょう せいや)「そうやない、僕は──」
大谷 イチロー「テウマ選手、そのくらいで」
大谷 イチロー「彼は今日、記者として来ているんだ」
カイガイ・ノア・テウマ「ふっ。逃げても野球への未練だけは一流か」
カイガイ・ノア・テウマ「せいぜい、いい記事にしてくれよ」
大谷 イチロー「すまない、九条くん。彼は──」
九条 醒夜(くじょう せいや)「大丈夫です。気にしてません」
九条 醒夜(くじょう せいや)「いい記事にしますんで、期待して下さいね」
〇お台場
九条 醒夜(くじょう せいや)「インタビューは以上になります」
〇撮影スタジオ
九条 醒夜(くじょう せいや)「本日はありがとうございました」
九条 醒夜(くじょう せいや)「最後に並んでお写真を1枚・・・」
テウマの妻「あなた!」
カイガイ・ノア・テウマ「なんだ、まだ仕事中だぞ」
テウマの妻「ジュニアが・・・目を離した隙に」
〇屋上のヘリポート
誘拐犯「300万ドル用意しろ」
誘拐犯「さもなくば、このガキは殺す」
テウマの息子「ダディ!」
カイガイ・ノア・テウマ「ジュニア! どうして・・・」
誘拐犯「アメリカからずっと張ってたんだ」
誘拐犯「海外出張を狙って正解だったな」
テウマの妻「ジュニア!」
カイガイ・ノア・テウマ「君、話し合おう」
カイガイ・ノア・テウマ「まずは銃を降ろしてくれ、な?」
誘拐犯「おっと。動けばこいつの頭が吹き飛ぶぜ」
誘拐犯「警察に連絡するのもなしだ」
カイガイ・ノア・テウマ「しかし300万ドルなんて大金、すぐには」
誘拐犯「俺を甘く見るなよ」
誘拐犯「お前、日本で別荘を買う予定だったろ?」
誘拐犯「その金を日本に持ってきているはずだ」
カイガイ・ノア・テウマ「なぜそれを・・・!」
カイガイ・ノア・テウマ「一本電話を入れさせてくれ」
カイガイ・ノア・テウマ「マネージャーに持ってこさせる」
誘拐犯「いいだろう。だが妙な真似をしたら」
カイガイ・ノア・テウマ「大丈夫だ。少し待ってろ」
九条 醒夜(くじょう せいや)(筋肉の動きを見とったらわかる)
九条 醒夜(くじょう せいや)(あの男・・・ホンマに撃つ気や)
カイガイ・ノア・テウマ「調子に乗るなよ。クズが」
〇広いベランダ
日本に来る時に雇った非公式の護衛
頼めば誰でも抹殺する危ない連中だが
〇屋上のヘリポート
カイガイ・ノア・テウマ「こんな時に使わない手はねぇってな」
カイガイ・ノア・テウマ「・・・もしもし。俺だが」
誘拐犯「ああ、良く聞こえるよ。テウマ」
誘拐犯「実に残念だよ」
誘拐犯「我が子より金を優先するとはな」
カイガイ・ノア・テウマ「なっ・・・この番号は!」
誘拐犯「そう、君が注文した非合法なSPさ」
誘拐犯「・・・まあ、俺なんだがね」
カイガイ・ノア・テウマ「なぜ・・・そんなはずが」
誘拐犯「お前はメジャーに残る為に色々やってるな」
誘拐犯「それが誰かの恨みを買ってたってわけさ」
テウマの息子「ダディ! 助けて!」
カイガイ・ノア・テウマ「止めろ! 息子には何の罪もないだろう!」
誘拐犯「お前に蹴落とされた選手もそう思ったさ」
誘拐犯「じゃあ、交渉決裂ということで」
九条 醒夜(くじょう せいや)(あかん・・・あかんあかん!)
九条 醒夜(くじょう せいや)(くそっ、前の僕ならあんな奴一球で)
もし、全力投球したらどないなります?
〇病院の診察室
奥平医師「肩の腱が断裂し、再接続不可能になります」
九条醒夜(高校時代)「それは・・・つまり」
奥平医師「右腕は人並みには使えなくなるでしょう」
奥平医師「日常生活も不自由になると思われます」
奥平医師「ですから、絶対に止めてくださいね」
〇屋上のヘリポート
九条 醒夜(くじょう せいや)(人の命と腕一本、比べるまでもない)
九条 醒夜(くじょう せいや)(わかっとるはずやのに・・・なんでや)
九条 醒夜(くじょう せいや)「なんで身体、震えてんねん」
九条 醒夜(くじょう せいや)「──!」
〇病院の診察室
奥平医師「プロは諦めてください」
〇狭い畳部屋
九条醒夜(高校時代)「僕、野球選手なれへんみたいやわ」
〇屋上のヘリポート
九条 醒夜(くじょう せいや)(そうか・・・僕、怖いんや)
九条 醒夜(くじょう せいや)「でも、このままやとあの子が──」
???「九条くん」
大谷 イチロー「何をする気だい。動けば撃たれるぞ」
九条 醒夜(くじょう せいや)「止めんといて下さい、僕は──」
大谷 イチロー「今の君の状態でちゃんと投げられるのかい」
九条 醒夜(くじょう せいや)「──!」
大谷 イチロー「それに、根気よくリハビリを続ければ」
大谷 イチロー「またマウンドに戻れるかもしれないだろ?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「気付いてはったんですか」
大谷 イチロー「君が右肩を庇っているのは明らかだ」
大谷 イチロー「だからその役は──僕が代わる!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「あかん! 大谷さん!」
大谷 イチロー「うおおおおっ!」
誘拐犯「馬鹿が。弾の無駄遣いさせんじゃねぇ!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「──!」
〇撮影スタジオのセット
大谷 イチロー「また君と野球がしたかった」
そうやった、僕は──
〇屋上のヘリポート
大谷 イチロー「うおおおおっ!」
この人みたいな"ヒーロー"になる為に
九条 醒夜(くじょう せいや)「300メートル・・・」
プロ野球選手を目指したんや!
九条 醒夜(くじょう せいや)「ストレートッ!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「うおおおりゃあっ!」
〇屋上のヘリポート
届け、届け、届け──
〇屋上のヘリポート
誘拐犯「ふぐあっ」
大谷 イチロー「九条くん!?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「はは・・・やってもうた」
九条 醒夜(くじょう せいや)「九条醒夜、最後のストレートです」
テウマの息子「ダディ! マミィ!」
テウマの妻「ジュニア・・・よかった。本当に」
九条 醒夜(くじょう せいや)「・・・良かったな」
大谷 イチロー「なんて無茶を。すぐ病院へ行こう」
大谷 イチロー「どこか痛むところはないかい?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「ええんです。もう──」
九条 醒夜(くじょう せいや)「あれっ・・・」
大谷 イチロー「まさか、感覚も・・・?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「えっと、それがその──」
〇総合病院
〇病院の診察室
奥平医師「えーと、結論から言いますと」
奥平医師「もう肩は問題ありません」
九条 醒夜(くじょう せいや)「なんやと!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「だって、腱が断裂寸前で──」
奥平医師「以前はそうでしたが状態が変わりました」
奥平医師「正直、私も信じられません」
奥平医師「何か特殊な訓練とかされましたか?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「特殊な訓練・・・?」
奥平医師「MRIを確認しました」
奥平医師「腱の周囲を筋繊維が覆っているんです」
奥平医師「まるで、足りない組織を補うように」
九条 醒夜(くじょう せいや)「せやったら、僕の肩は・・・」
奥平医師「ちょっとやそっとじゃ壊れませんね」
九条 醒夜(くじょう せいや)「・・・」
〇総合病院
九条 醒夜(くじょう せいや)「なんてことや・・・」
???「結果は聞けたか」
九条 醒夜(くじょう せいや)「明闇・・・なんでここに」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「耳だけは早くてね」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「完治おめでとうってことでいいのかな」
九条 醒夜(くじょう せいや)「個人情報保護どないなってんねん」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「九条くん。俺が会いに来たのは──」
九条 醒夜(くじょう せいや)「大丈夫や。約束は守る。選手には戻らへん」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「頭が硬い男だな」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「約束は仲間を裏切らないことだろう?」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「君がいま野球選手に戻って誰が困る?」
九条 醒夜(くじょう せいや)「そやけど──」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「君がいま裏切るべきではないのはね」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「九条醒夜という選手を待っている──」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「ファンの期待じゃあないかな」
九条 醒夜(くじょう せいや)「はい、九条ですが」
九条 醒夜(くじょう せいや)「ええ? ホンマですか?」
〇古いアパート
磯村 月人(いそむら つきと)「兄ちゃん、早くテレビ! テレビ付けて」
〇大きな箪笥のある和室
磯村 新太(いそむら しんた)「何だよ、みたいアニメでもあんのか」
次のニュースです
日米戦のゲスト選手が発表されました
〇野球場
アナウンサー「選ばれたのはなんとあの・・・」
アナウンサー「先日引退宣言を行った、九条選手です!」
〇大きな箪笥のある和室
磯村 月人(いそむら つきと)「復活したんだ、僕らのヒーローが!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「この場でみんなに誓う」
〇野球場
九条 醒夜(くじょう せいや)「もう二度と、野球辞めるなんて言わへん」
九条 醒夜(くじょう せいや)「命ある限り、ヒーローやったるわ!」
〇大きな箪笥のある和室
磯村 月人(いそむら つきと)「九条ーー!」
磯村 星乃(いそむら ほしの)「ずっと応援してるよーー!」
〇野球場
九条 醒夜(くじょう せいや)「お待たせしてすみません」
大谷 イチロー「本当にね」
大谷 イチロー「じゃあ行くか、九条くん」
大谷 イチロー「アメリカを倒しに!」
九条 醒夜(くじょう せいや)「はいっ!」
これからも夢は続いていく
ずっと・・・この命が終わるまで
エピローグ「ヒーロー」 完
〇黒
次回予告
〇墓石
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「・・・」
住職「ようこそお参り下さいました」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「ずいぶんご無沙汰してしまいました」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「表立って来るのが難しくなったもので」
住職「故人はいつ来てもらっても嬉しいものです」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「ずいぶん綺麗に清掃されてますね」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「献花まで。これは住職が?」
住職「いえ。女性の方ですよ」
住職「毎年欠かさず、お参りにいらっしゃいます」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「女性・・・」
〇白
暁仁!
〇墓石
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「そうですか・・・ありがとうございます」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「失礼します」
明闇 暁仁
享年 2018年
〇霊園の入口
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「7年も経てば大丈夫だと思ったが」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「しばらくここには来ないほうがいいな」
〇車内
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「安心して休め。約束は守る」
明闇 暁仁(みょうあん あきひと)「必ずHASHIBAを世界一の企業に」
〇開けた高速道路
〇大企業のオフィスビル
羽柴 総一郎(はしば そういちろう)「ふう・・・」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「社長〜〜!」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「社用車も使わないでまた外出して!」
羽柴 総一郎(はしば そういちろう)「まあまあ、色々やることがあってね」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「社内にもやることが沢山あるんですよ!」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「もう少し代表としての自覚をですねっ」
羽柴 総一郎(はしば そういちろう)「ははは。わかったわかった」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「・・・全くもう」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)(お香の・・・匂い?)
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「まさか・・・そんなわけない、よね」
秘書 木崎 都(きざき みやこ)「社長はあの人のことなんてもう・・・」
エピローグ「影武者の最期」
えええー!! まさかの完治!!!
さすがのスーパーハッピーエンドです!!🎉
大谷イチローも偉人感溢れててすごいですが、カイガイノアテウマさんが勝てなさそうすぎて気になりました🤣
そしてお香の香りはほろ苦い予感?次回も気になりますね……!
正にヒーローですね✨☺️
肩がまさかの完治!!これからも野球の中でヒーローを続けることができること…本当に良かったです!!✨
そして大谷イチローという贅沢てんこ盛り野球選手さんのことも気になっちゃいました😂
次回も楽しみにしています✨