第5話『さしすせそ』(脚本)
〇メイド喫茶
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
常連客「また来ますね」
月「んー」
あみーな「月ちゃん、どうかした?」
月「ご主人様のお相手をする時に 返答に詰まっちゃう時があって 困ってるんです」
あみーな「そうなんだ」
あみーな「だったらね、参考を教えてあげるよ」
月「本当ですか?」
あみーな「うん」
あみーな「『接客のさしすせそ』ってやつだよ」
月「さしすせそ?」
月「お料理のさしすせそは知ってますけど 接客にもあるんですか?」
あみーな「うん」
あみーな「ご主人様がいないうちに教えるね」
月「お願いします」
あみーな「まずは『さ』」
あみーな「『さすがですね』」
あみーな「相手を称えるの」
月「なるほど」
月「確かに、そう言われると気持ちいいですね」
あみーな「次は『し』」
あみーな「『知らなかったです』」
あみーな「これを言った後に 『もっと詳しく教えてください』とか 話を広げやすくなるんだよ」
月「自分の話に興味持ってもらえたら 嬉しいですね」
あみーな「そうそう」
あみーな「じゃあ、次は『す』」
あみーな「『凄いですね』 『素晴らしいです』 『素敵です』」
あみーな「これは『さ』と似ているね」
あみーな「これも相手を褒めるのに使えるね」
月「分かりました」
あみーな「次は『せ』」
あみーな「『センスいいですね』」
あみーな「相手が身につけているものや趣味とかにも 使えるからとっても便利だよ」
月「自分の服が『センスがいい』と言われて 悪い気持ちはしませんもんね」
あみーな「うんうん」
あみーな「最後は『そ』」
あみーな「『そうなんですね』」
あみーな「相槌として、万能な言葉だね」
月「そうなんですね」
あみーな「はははは、そうそう」
あみーな「こんな感じで覚えておくといいよ」
月「はーい」
月「ありがとうございます!」
あみーな「暇になっちゃったから」
あみーな「これから私はビラ配りに行くけど 月ちゃん1人で大丈夫?」
月「はい」
あみーな「じゃあ、お願いね」
あみーな「忙しくなったら連絡してね」
あみーな「最近は色々と物騒だから気をつけてね」
月「はい」
あみーな「いってきまーす」
月「お気を付けて」
月「よし、頑張るぞ」
〇電器街
あみーな「さーて、チラシ配り頑張ろう」
怪しいやつ「ふふふ」
怪しいやつ「あみーなが出てきたから どうやら、店はキャスト1人だけらしいな」
怪しいやつ「今がチャンスだ」
〇メイド喫茶
月「早く『さしすせそ』を使ってみたいなー」
月「誰かご帰宅してこないかなぁ」
月「あ、ご主人様だ」
怪しいやつ「ふふふ」
月「おかえりなさいませ ご主人様」
怪しいやつ「金を出せ!」
月(あれ、おもちゃだよね?)
月(おじいちゃんが 前に外国で本物見せてくれたけど)
月(質感が全然違う)
怪しいやつ「金を出せ!って言ってんだよ!」
月(そっか、そういうノリのご主人様なのかな?)
月「そうなんですね」
怪しいやつ「えっ?」
怪しいやつ(まったく動揺してないだと?)
怪しいやつ(モデルガンってバレたのか? いや、こんな女子高生に分かるわけがない)
怪しいやつ「これが見えねえのか!?」
月「センスがいいですね!」
怪しいやつ「お、おう、この良さ分かってくれるか」
月「はい」
怪しいやつ「はははは」
怪しいやつ「そうじゃねえよ!」
怪しいやつ「最近、この店が儲かってるってことは 調べてあるんだ!」
怪しいやつ「金がたんまりあるらしいな!」
月「知らなかったです」
怪しいやつ(どこまでも、馬鹿にしやがって!)
怪しいやつ「俺はな、こう見えて これまで仕事をしくじったことはないんだ!」
月「凄いですね!」
怪しいやつ(何がムカつくって、褒められて 悪い気はしないんだよな)
怪しいやつ(だが、そんな暇はねえ)
怪しいやつ「俺は仕事をこなしてみせる!」
月「さすがですね!」
怪しいやつ「そんな褒めるなって!」
星川天海「月ちゃーん、遊びに来たよ」
月「おじいちゃん、お帰りなさい」
怪しいやつ「・・・・・・」
怪しいやつ(しまった、人が来た)
怪しいやつ(だが、このじいさん、金は持ってそうだな)
星川天海「・・・・・・」
月「おじいちゃん?」
星川天海「それは何のつもりだ?」
怪しいやつ「見て分からねえのか!?」
怪しいやつ「銃だよ! 銃!」
怪しいやつ(こいつも動揺してねえだと?)
怪しいやつ(何なんだ? こいつらは?)
星川天海「どうした? 撃ってこないのか?」
月「おじいちゃん、ご主人様に失礼だよ」
怪しいやつ「う、うるせえ!」
怪しいやつ「本当に打つからな!」
星川天海「月ちゃん、大丈夫」
星川天海「すぐに終わらせるからね」
月「ん? ん? どういうこと?」
怪しいやつ「ば、バカにしやがって!」
星川天海「背中がガラ空きだぞ?」
怪しいやつ「しまった! 銃が!」
星川天海「若造」
星川天海「死ぬ覚悟はできてるんだろうな?」
怪しいやつ「えっ?」
星川天海「ワシにはともかく ワシの命よりも大事な孫に モデルガンとはいえ、銃口を向けた」
星川天海「それは宣戦布告と同意義だ」
月(あの顔、海外で強盗に襲われた時 返り討ちにした時の顔だ)
怪しいやつ(あ、やばい)
星川天海「最後に言い残すことは?」
怪しいやつ「ありません」
〇電器街
あみーな「ふれてんでーす」
あみーな「パトカーだ」
警官「強盗事件の現場はあっちか」
あみーな「お巡りさんが向かったのは もしかして・・・・・・」
〇メイド喫茶
怪しいやつ「・・・・・・」
警官「まさか、強盗を制圧するなんて」
警官「何者なんですか!?」
星川天海「大したことじゃありませんよ」
月「あのひと、本物の強盗だったんだ」
警官(そういえば、このメイドの子 前にも見たことあるな)
あみーな「事件現場って やっぱり、うちのお店だったの!?」
月「そうなんです」
月「すみません 強盗に入られちゃいました」
星川天海「せっかくなので制圧しておきました」
あみーな「さすがー、すごいですね」
あみーな(おそるべし、星川家)
あみーな(死人が出なくて良かった)
〇メイド喫茶
次回予告
強盗すら持ち前の天然ぶりで軽くいなす月
さらに、強盗を一瞬で制圧する天海
2人の活躍によって
血まみれの惨劇は免れたふれてんに
2人の客が久しぶりに来店する
次回『モンスター石井とサイトーさん』
月「おじいちゃんは なぜか、よく強盗に遭遇します」
月「そのたびに返り討ちにして表彰されてます」
月「次回も、もえもえてん」