私の愛しきご主人様

Safaia

マモルと遠足 前編(脚本)

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〇洋館の廊下
「いーやーだー!!」

〇城の会議室
ゼノ「坊ちゃま、いい加減にしてください」
ゼノ「グラタンの一つも平らげられないようでは立派な魔族になれませんよ」
マモル「嫌なものは嫌なの。ほうれん草嫌いなの」
マモル「他は全部食べたんだからもういいでしょ? ゼノが食べてよぉ・・・」
ゼノ「私はただのメイドです、お気になされる必要はありません」
ゼノ「さぁ坊ちゃま、口を開けてくださいな」
マモル「嫌だ嫌だ!」
サタ「まぁまぁゼノ、少し落ち着きなさい」
サタ「そんなに無理強いを通したら、食べられないものが余計に食べられなくなるだろう?」
ゼノ「しかし、それでは坊ちゃまの為にはなりません」
ラモーレ「そうよアナタ、そうやって何時もマモルを甘やかして」
ラモーレ「一魔王ともいう御方がそれでは他の魔族たちの示しになりません」
サタ「そうは言うがねラモーレ。マモルも立派な魔族の一員であるからね」
サタ「僕と君が作った大切な・・・ね?」
ラモーレ「もぉ、アナタったら・・・・・・」
ゼノ「お二方、子供の前ですよ」
「す、すみませんっ!」
ゼノ「さぁお坊ちゃま。早くほうれん草を口に」
マモル「えーっ? ゼノが食べてよ」
ゼノ「そこまで言うのならゼノが食べさせるまでです」
  ゼノはマモルが皿の上に乗っかったスプーンを手に取ると、ほうれん草を掬ってマモルの方によせる。
マモル「!」
ゼノ「さぁ坊ちゃま、口を、アーンしてください」
マモル「そ、そっちの方が嫌だ!」
ゼノ「そうですか。 ではご自分でどうぞ」
マモル「うん・・・」
  マモルはゼノからスプーンを受け取り、つばの上に残ったほうれん草を口に頬張る。
マモル(うぅ、青臭くてドロドロとして・・・苦い)
ゼノ「坊ちゃま、20回は噛みしめてから飲み込んでくださいね」
マモル「わ、分かってるよぉっ!」
ゼノ「・・・坊ちゃま・・・」

〇カラフル
ゼノ(はぁぁ・・・坊ちゃまがほうれん草を食べている)
ゼノ(嫌と思っていても必死にほうれん草を食べる坊ちゃま。素敵♡)
ゼノ「スプーンであーんしてあげれなかったのは少々痛いが、ほうれん草は中に入ったので結果オーライとしよう」
  しゃく、しゃく・・・。
ゼノ「それにしても坊ちゃま。あんなに真剣な顔でほうれん草を咀嚼して・・・」
ゼノ「はっ! いけない! 駄目よ、ゼノ。それ以上は駄目・・・!」
ゼノ(私は坊ちゃまのメイド。そう、メイドそのものなのだから!)
  しゃく、しゃく・・・ごっくん!
ゼノ(あぁ、それにしてもいい音~。 唾液もあんなに垂らして・・・癖になるぅ~♡)

〇城の会議室
ゼノ「坊ちゃま、よだれが・・・」
マモル「こ、これぐらい自分で出来るよ」
ゼノ「なりません。私は坊ちゃまのメイドですから」
ゼノ「それにほうれん草はまだ残ってますよ」
マモル「分かってる。今食べる」
  マモルはゼノの手を払い除けた後、再度スプーンでグラタンのほうれん草を掬い上げ、口の中に入れた。
サタ「そう言えばマモル。明日は遠足の日だったよね?」
サタ「場所は確かシダネの森だったか」
マモル「うん。一応準備はしてる」
ラモーレ「でも大丈夫なの?」
ラモーレ「シダネの森って、最近オーガの動きが活発になっているという話じゃない」
サタ「そうらしいね」
サタ「でも、あの森は人間もお散歩コースに使っているぐらいだし、オーガだって理由が無けりゃ他人を襲ったりしないだろう」
サタ「大した根拠はないけど、マモルなら大丈夫だよ」
ラモーレ「でも・・・」
マモル「心配いらないよママ」
マモル「僕一人で森に入る訳じゃないし、皆も一緒だから」
マモル「それにもし何かあった時は僕がなんとかするよ」
マモル「マモルという字は『皆を守る』のマモルだからね」
ゼノ(坊ちゃま・・・)
ゼノ「ほうれん草も食べられぬ軟弱者がよく言えたものですね」
マモル「な、なんだと!?」
サタ「まぁまぁ二人共その辺に・・・」
サタ「それよりマモル、ほうれん草残ってるよ」
マモル「わわ、分かってるよぉ!」
  ひょい、パクッ・・・!
ゼノ(坊ちゃま。坊ちゃまがほうれん草を食べてる)
ゼノ(あぁ、私。あのほうれん草になりたい・・・)
マモル(ゼノ、よだれ出てる。なんで?)

〇中東の街

〇洋館の廊下
ゼノ(坊ちゃまとの湯あみ・・・)
ゼノ(う、駄目だ。また頭によからぬ煩悩が・・・)
ゼノ(今から坊ちゃまと混浴というだけでよからぬ思考がめぐんでくる・・・!)
ゼノ(落ち着け、落ち着くんだゼノ)
ゼノ(相手は主人、私はメイド)
ゼノ(それ以上の事を考えては駄目だ!)
  コン、コン、コン・・・。
「誰?」
ゼノ「坊ちゃま、ゼノです。 少しよろしいでしょうか?」
「・・・いいよ、入って」
ゼノ「失礼します」

〇銭湯の脱衣所
マモル「それでゼノ、一体どうしたの?」
ゼノ「はい、坊ちゃまの湯あみのお手伝いをと・・・」
マモル「えぇっ!? 良いよそれぐらい自分一人で出来る」
ゼノ「そうは参りません。坊ちゃまのお世話は私の務めですし」
ゼノ「それに坊ちゃまの私の体など見飽きてるではないですか?」
マモル「卑猥な事言わないで!」
マモル「それにそれは過去の話でしょう?」
マモル「今の僕を見てよ今の」
ゼノ「今をどんなに生きようとも過去は変えられないと?」
マモル「誰がそんな哲学的なこと言った?」
マモル「僕の言葉だからってそんな深く解釈しないで!」
ゼノ「兎も角、坊ちゃまの汚れを掃うのも私の務めです」
ゼノ「それに坊ちゃまは自分で髪を洗えない愚か者ではないですか」
マモル「上げといて落とすってこういう事!?」
マモル「でも、髪洗えないのは事実だから否定できないっ!」
ゼノ「さぁ坊ちゃま、私と共に風呂場へと参りましょう」
  シュルシュル・・・。
マモル「わー! わー! ここでいきなり脱ぐなぁ!」
マモル「というか何故にゼノはそんな躊躇ってのが無いんだよ?」
ゼノ「自分はただのメイドです。坊ちゃまの生活を守るのが私の務め」
ゼノ「それに女の裸体一つでたじろぐくらいなら立派な魔族になれません」
マモル「な、なれなくてもいいもん!」
マモル「それにそんなことをするなら、僕はゼノと一緒に居たくない!」
マモル「・・・・・・あ」
ゼノ「坊ちゃま」
マモル「いや、違うんだゼノ。僕は・・・」
ゼノ「では、おやすみなさいませ。マモル坊ちゃま」
マモル「・・・ゼノ・・・」
マモル(やっちゃった。いくら辱めを受けるのが怖いからと言って、うぅ・・・)
マモル(ゼノ、絶対怒ってるよな。明日なんて言い訳しよう?)

〇洋館の廊下
ゼノ(き、嫌われた。・・・坊ちゃまに嫌われた)
ゼノ(私はただ、メイドとして職務を果たそうとしただけなのに。・・・それなのに)
セーニャ「ゼノ様、如何なされたんですか?」
ゼノ「セーニャか」
ゼノ「すまない。少し溜息が出てしまった」
ゼノ「悪いが、今日はもう休ませてもらう」
セーニャ「ゼノ様・・・」
セーニャ(ゼノ様のあんな表情見たことない)
セーニャ(いったい、浴場で何が遭ったというの?)

〇空
  翌朝。

〇貴族の部屋
ゼノ(昨日は殆ど眠れなかった)
ゼノ(朝起きた時には既に坊ちゃまは城を出ていたので、お見送りも出来なかった)
ゼノ(魔王様たちはその事について咎めはしなかったが、メイドとして何かと心残りが・・・)
ゼノ(いかん。職務の間に私情を挟むなど、私は何をやっているのだ!?)
ゼノ「兎に角、今はメイドとして坊ちゃまの部屋の掃除を・・・」
「ぜ、ゼノ様―――!」
ゼノ「セーニャか」
ゼノ「メイドであろうものが城中を爆走とは、一体どういうつもりだ?」
セーニャ「申し訳ありません。ただ、どうしてお伝えせねばならぬ事がございまして」
ゼノ「これは、弁当袋か?」
ゼノ「それにこの柄は坊ちゃまの・・・」
セーニャ「はい、実は先ほど給仕係から通達がありまして」
セーニャ「あちらのミスで、坊ちゃまのリュックに入れ忘れてしまったらしいのです」
ゼノ「なんだと!? それでは今の坊ちゃまのリュックの中は」
  セーニャは無言で頷いた。
ゼノ(折角の遠足なのに弁当無し?)
ゼノ(なんてことだ。もしもそんなことになったら・・・坊ちゃまは)

〇モヤモヤ
クラスメイトA「あれ、マモルの弁当は~?」
マモル「そ、それが・・・」
クラスメイトA「えぇ~? マモル弁当無しなのかよぉ」
クラスメイトA「無いわ~。遠足に来ておいてそれは無いわ~」
クラスメイトB「ほんとだよな。一体何しに来たんだよって話」
「ぎゃはははははは・・・!!」
マモル「ひ、酷い。皆僕を馬鹿にして・・・」
マモル「こうなったら全員かっ捌いて血祭りにあげてやるぅぅぅっ!」
マモルだったもの「フハハハハハハ!」

〇貴族の部屋
ゼノ(マズい。それだけは絶対にマズい!)
セーニャ「あの、ゼノ様?」
ゼノ「セーニャ、ここは任せたぞ」
ゼノ「私は坊ちゃまの元に行ってくる!」
セーニャ「えぇっ! ゼノ様!?」

〇林道
キズチ「全員揃いましたか~?」
「はーい!」
キズチ「それでは出発しまーす」
「はーい!」
畑中(はたなか)「いやぁ、遂に始まったな。遠足」
畑中(はたなか)「俺、興奮して夜まで眠れなかったぞぉ」
スズキ「開幕早々意味わかんねぇこと言うなよ」
スズキ「俺なんか散歩コースとしてよく通ってるから、雰囲気が何時もと変わんねぇわ」
畑中(はたなか)「だって、こんなに大勢で一緒に歩く事なんてそうそうねぇだろう」
畑中(はたなか)「普段一緒に居る学校の皆と同じ場所探検するなんて何だかワクワクしねぇか?」
スズキ「それは・・・・・・否定しねぇが」
畑中(はたなか)「なぁマモル、お前もそう思うだろう?」
マモル「う、うん・・・」
畑中(はたなか)「なんだよぉ、割とテンション低いな」
畑中(はたなか)「お前も寝不足か?」
マモル「ま、まぁそんな所」
マモル(事実、ゼノを突っぱねた後の記憶が殆んどない)
マモル(ゼノ、まだ怒ってるのかな? 朝、傍に居なかったから話す事も出来なかったけど)
マモル(ちゃんと仕事出来てる?)
ゼノ(どうにか遠足とやらには間に合ったようだな)
ゼノ(後は坊ちゃまに如何にして弁当を届けるというところだが・・・)
ゼノ(しまった。あまりにも慌ててた所為でその辺の事を考えてなかった!)
ゼノ(坊ちゃまも列の中に入っているし、あの状況で弁当を渡してもろくに目立つだけ)
ゼノ(一体どうしたものか・・・?)
畑中(はたなか)「それにしても、今日は晴れてんなぁ」
畑中(はたなか)「この分だと明日どしゃ降りか?」
スズキ「根拠のない答えだな。全く」
畑中(はたなか)「分からないよ? 良い朝の後は悪い朝が来るって聞いたことあるし」
スズキ「それ、誰に聞いた?」
畑中(はたなか)「昨晩見た夢の中に出てきたオジさん」
スズキ「あてにならないな。そんなもん」
畑中(はたなか)「分からないって言ってるじゃん!!」
畑中(はたなか)「もしかしたら降るのは普通の雨じゃなくて血の雨だったりしてね」
スズキ「何、不気味なこと言い出すんだよ」
マモル「あはは・・・」
ゼノ「何の変哲もない会話だな」
ゼノ「坊ちゃまのテンションダダ下りじゃないか」
ゼノ「こんなペースで遠足など出来るのか・・・?」
畑中(はたなか)「そう言えばさ、マモル」
マモル「なに?」
畑中(はたなか)「お前って本当に魔王様の息子なのか?」
マモル「えぇっ!? 突然何を言い出すんだよ?」
スズキ「あ~、それ俺も思った」
スズキ「お前と同じ学舎に通い始めて随分経つけど、お前が魔王様の息子だって言う威厳を感じた所なんて見たことないな」
スズキ「テストの点数も中の上ぐらいだし、給食の配膳の時には順列を譲ってくれるし」
スズキ「これと言って皇太子という感じに見えなくないというか・・・」
畑中(はたなか)「もしかして影武者なんじゃねぇの?」
畑中(はたなか)「第一、魔王様のご子息ともあろうお方がそんなひょろひょろな訳ないもの」
  は、死ねよ
スズキ「おいマモル、いくらなんでも『死ね』は無いんじゃないか?」
マモル「えぇっ!? 誰もそんな事言ってないよ」
スズキ「お前以外、誰が言ったんだよ」
マモル「だから・・・」
ゼノ「いけない。私としたことがつい本音が・・・」
ゼノ「耐えるのよゼノ、 今坊ちゃまに存在を知られるわけにはいかないのだから」
ゼノ「私はただ坊ちゃんのリュックにそっと弁当を入れ、そっとその場を立ち去るだけ」
ゼノ「ただそれだけなんだから・・・」

〇森の中の小屋
  しかしゼノのそんな思いも空しく・・・。
  ついにこの時がやって来てしまった。
キズチ「はぁい、皆さん。お昼休みにしましょう」
キズチ「昼食はあのログハウスで行いまーす」
「はーい!」
畑中(はたなか)「やっと昼食だぁ」
畑中(はたなか)「僕お腹ペコペコだよ~」
スズキ「俺はまだいけるぞ。 何しろ“歩いてない”からな」
畑中(はたなか)「皮肉って奴か、タメになるな」
キズチ「はいそこ、集中!」
キズチ「ログハウスに入ってからが休憩ですよ」
「はーい・・・」
ゼノ(くっ、そうこうしている内に昼食の時間になってしまった)
ゼノ(坊ちゃまは・・・・・・まだリュックに手をつけてないようだな)
ゼノ「仕方ない、此処は目立つのを覚悟で飛び込むか」

〇銭湯の脱衣所
マモル「良いよそれぐらい自分一人で出来る」

〇森の中の小屋
ゼノ「・・・っ」
ゼノ(落ち着け、私はメイド。私はメイド・・・)
ゼノ(例え坊ちゃまに嫌われていても責務を全うするまで)

〇銭湯の脱衣所
マモル「僕はゼノと一緒に居たくない!」

〇森の中の小屋
ゼノ「・・・・・・」
ゼノ「私は、どうしたら・・・」
キズチ「それでは早速ログハウスの主人に挨拶しましょう」
キズチ「すみません。ダンマ学園の者ですけど・・・」
オーガ「はい?」
キズチ「・・・」
オーガ「・・・」
キズチ「・・・き」
キズチ「きゃあああああああ・・・なんですか貴方はぁ!」
  遠足、どうなる?
  後半へ続く・・・。

次のエピソード:マモルと遠足 後編

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