〇住宅地の坂道
　　──ある日、
　　佐藤太一（さとうたいち）は
　　知り合いのような人物に声を掛けられた
？？？「よぉ！佐藤！」
佐藤太一（ん？）
佐藤太一（誰っ？）
？？？「こんなところで会うなんて奇遇だね」
佐藤太一「あ・・・あぁ」
佐藤太一（誰だっけ・・・）
佐藤太一（この人、俺の事は知ってるのか・・・ 思い出せない──）
佐藤太一（とりあえず話を合わせてみるしかないよな）
佐藤太一「やぁ、久しぶりだね──」
？？？「あはは」
？？？「昨日会ったのに久しぶりかよ（笑）」
佐藤太一（昨日会った!?）
佐藤太一（誰だ・・・？）

〇黒背景
　　昨日──昨日・・・？
　　昨日何してたっけ・・・
　　ずっと家に居たと思うけど──
　　まさか・・・
　　新手の詐欺!?

〇住宅地の坂道
？？？「よぉ！佐藤！」

〇黒背景
　　・・・違うか
　　俺の名前知ってるもんな

〇住宅地の坂道
？？？「どうしたんだよ佐藤？」
佐藤太一「あ、いや・・・」
？？？「まさか俺の事分かってないのか!?」
佐藤太一「・・・そんな事ないって──」
？？？「あぁ！ごめんごめん」
？？？「俺、メガネしてると気付かれない時あるんだよね──」
　　誰だよ!!　
　　メガネ関係ねぇよ!!（心の声）
佐藤太一「ごめん──実は メガネかけてたから分かんなかったんだ」
？？？「あはは」
？？？「だと思ったよ」

〇黒背景
　　でも・・・
　　このままうまくやり過ごせるだろうか
　　具体的な話になったら終わりだよな

〇住宅地の坂道
？？？「そういえばあの後──」
？？？「朝倉とデートの約束したんだって？」
佐藤太一（朝倉・・・）
？？？「俺と磯田も狙ってたんだけどなぁ〜」
？？？「まぁ、俺達の分まで楽しんでくれよ」
佐藤太一「あ、ありがと」
佐藤太一（磯田って誰だよ・・・）

〇黒背景
　　この人と磯田って人が
　　朝倉って人を狙ってたのか・・・
　　誰と誰と誰だよ!!!!
　　俺、朝倉さんとデートするのか・・・
　　朝倉さんって誰だよ！

〇住宅地の坂道
？？？「あんまり嬉しそうじゃないな？」
？？？「昨日はあんなに亀島に自慢してたのに──」
佐藤太一（亀島・・・）
？？？「亀島は柏木に夢中だったから何とも思ってなかったけど──」
佐藤太一（柏木・・・？）
？？？「ま、柏木も柏木で山本と小野 どっちにしようとか言ってたし──」
佐藤太一（山本と小野・・・）

〇黒背景
　　亀島が柏木を狙ってて・・・
　　その柏木は山本と小野で悩んでて・・・
　　朝倉、磯田、亀島、柏木、
　　山本、小野・・・
　　って全員誰だよ!!
　　そもそも何の集まりなんだ・・・
　　俺は本当に
　　そこに居たのか・・・？
　　あぁー訳わかんねぇー!!
　　もうダメだ──

〇住宅地の坂道
？？？「──でも長尾が飯沼に──」
佐藤太一（本当の事を言おう──）
？？？「──それで、井森が川瀬に怒っちゃって」
佐藤太一「あっ、ごめんなさい!!」
佐藤太一「実は昨日の事何も覚えてなくて・・・」
？？？「えっ!?」
佐藤太一「あなたの事も誰だか分からないんです」
？？？「そ・・・そうなんだ・・・」
佐藤太一「ほんとにごめんなさい」
？？？「あれ？」
？？？「君って佐藤君だよね？」
佐藤太一「はい、佐藤です」
？？？「佐藤優太（さとうゆうた）君？」
佐藤太一「佐藤太一です」
？？？「あれ？・・・すみません 人違いしてました・・・」

〇黒背景
　　人違い・・・
　　いやいやいやいや──
　　そんな事あるわけねぇだろ!!
　　佐藤優太と間違えてたってなんだよ
　　俺は佐藤優太のドッペルゲンガーかよ?!
　　どう考えても嘘じゃん・・・

〇住宅地の坂道
？？？「すみませんでした──」
？？？「実は──声をかけた後、すぐに 知らない方だと気付いたんですが・・・」
？？？「たまたま佐藤って名前だったから 魔が差したというか何というか・・・」
？？？「言い出せなくて・・・いつの間にか こんな事になっちゃってました」
佐藤太一（えっ!?声をかけた後 すぐに別人って気付いてたの!?）

〇住宅地の坂道
？？？「こんなところで会うなんて奇遇だね」
？？？「昨日会ったのに久しぶりかよ（笑）」
？？？「ごめんごめん」
？？？「俺、メガネしてると気付かれない時あるんだよね──」
？？？「朝倉とデートの約束したんだって？」
？？？「あれっ？君って 佐藤優太君？」
？？？「すみません・・・ 人違いしてました・・・」
　　・・・・・・

〇住宅地の坂道
　　──・・・
　　なんて人だ!!!（心の声）
？？？「本当にすみませんでした」
？？？「では、私はこれで失礼します──」
佐藤太一「あ、はい──」
　　・・・
佐藤太一（恥ずかしそうに逃げた・・・ ──だよな）
佐藤太一（嘘を重ね過ぎて、取り返し付かなく なってたもんなぁ）
佐藤太一「あっ」
佐藤太一「バスの時間過ぎてんじゃん！」
佐藤太一「もぉー」

〇空

〇ゆるやかな坂道
？？？「──はい」
？？？「佐藤は何も覚えてませんでした」
？？？「あれだけの事を覚えていないのですから、 薬はほぼ完成したのではないかと」
？？？「──はい、このまま記憶が戻らないか 監視を続けます」
？？？「分かりました── 失礼します」
？？？「実験台のまま生きるか、記憶を取り戻し 地獄を見るか・・・」
？？？「ま、どちらも地獄だな」

〇お台場
　　昨夜の事件、被害者の身元が
　　特定されました。
　　朝倉美沙さん──

〇二階建てアパート
　　磯田純也さん──

〇一人部屋（車いす無し）
　　山本陽介さん──
佐藤太一（昨日ヤバい事件があったんだ──）
佐藤太一「あー怖い怖い・・・」
佐藤太一（──シャワー浴びよっと）
　　佐藤優太さん──
　　プチッ
佐藤太一「佐藤・・・優太・・・？」
佐藤太一「どっかで聞いた名前だな──・・・」
佐藤太一「!?」
　　END