大好きな君といっしょにいたいだけなのに(脚本)
〇星
美久「私さ、結婚するんだ」
美久「顔はビミョーだけど、そこそこいいヤツ」
そう言って美久は笑った。
明日は大切な式なのに、縁側でビールをかっ喰らっている。
美久「きっとテラも、あいつのこと好きになるよ」
テラ「・・・」
美久の胸元のペンダントが揺れる。
まだ美久が幼かった頃、かけっこで一等賞になれなくてもらえなかった星のメダル。
人一倍負けん気の強かった美久は、なんでも星形にしたがっていた。
大人になった今でも続いているのか、美久の持ち物には星が付いていることが多い。
あの星のメダルを模したような星形のチャームが、ちらちらと揺れている。
テラ「クァウ・・・」
美久「なぁに? 寂しいの?」
寂しいよ。置いていかないで。
そう心の中で返事をして、僕は美久の首元に顔を埋めた。
美久「・・・テラと初めて会った時、あんなに小さかったのにね」
テラ「クゥン・・・」
そうだよ、美久。
僕たちずっと一緒だったでしょう?
僕がおじいちゃんになって死ぬまでいっしょにいるって約束したじゃない。
テラ「ワゥ・・・」
美久「んー? なに?」
美久はちょっと困った顔で微笑んでいる。
でも決して、「やっぱやめた」とは言わなかった。
テラ「・・・」
美久「・・・」
美久「・・・ごめんね」
テラ「・・・ワゥ」
美久は僕の心を読んだように、ぽつんと謝った。
テラ「・・・」
どこか幸せそうな美久を、これ以上引き留めることは出来なかった。
だったらせめて、君が2番目に大事にしているものが欲しい。
美久を想って、美久の代わりに大事にするから。
僕は美久を傷つけないように、ネックレスの鎖を噛んだ。
美久「テラ?」
美久「・・・これ、欲しい?」
テラ「ワン」
美久「・・・そっか。ちょっと待って」
美久はネックレスを外して、星型のチャームを鎖から抜き取る。
小さな星は、僕の首輪にパチリとつけられた。
美久「・・・うん。似合うよ」
美久「・・・」
美久「・・・私の大事な星、テラに預けるね」
テラ「クゥン・・・」
美久の手が、僕の頭のあたりをわしゃわしゃと撫でる。
ねぇ美久。
いま預けるって言ったよね?
絶対いつか取りに帰ってきてね?
必ずだよ?
美久「・・・」
僕の想いが届いたのか、美久は一層困った顔で笑って、僕の首元にぎゅうと抱きついた。
〇結婚式場の前
翌日。
美久はあの男とお揃いの白いドレスを着て歩いている。
美久「ね、そこそこでしょ?」
美久はイタズラっぽく笑った。
テラ「・・・」
僕の方が美久を知ってるし、
誰より美久のことを大事に思っているよ。
でも、美久の笑顔があんまり幸せそうで眩しいから。
テラ「・・・わん」
僕はそう返事をするしかなかったや。
種族が異なる故に想いを伝えられないテラの葛藤が伝わってきますね……。😑