読切(脚本)
〇遊園地の広場
主人公「文芸部?」
バイト中、犬の着ぐるみを着ているにも関わらず大きな声を出してしまった。
親友の恋がそういう事に興味があるとは初耳だったからだ。
恋も猫の着ぐるみのまま答えた。
夏の陽射しが着ぐるみの汚れと埃っぽさを浮き立たせている。
恋「そうそう分鯨舞」
主人公「創作ってことだよね?」
恋「んー、まあ創作だね」
主人公「ジャンルは?」
恋「縄文系かな」
主人公「え?」
縄文時代の小説ってことか。
恋「縄文人て鯨を捕まえた時に神様に感謝の気持ちを表してたんだって」
主人公「へえ」
恋「みんなで舞を奉納してたらしいよ」
主人公「じゃあそういうの書いてるんだ?」
恋「描いてる・・・まあ自然の恵みと命に感謝している気持ちを精神世界的に描いていると言えなくもないね」
なんか変だぞ。いつもだけど。
主人公「なんか難しそうだね」
恋「そうでもないよ。見せようか?」
主人公「え? 今?」
恋「うん、今」
そういうと恋は猫の着ぐるみのまま、腕を青空に向けて高く広げた。
次に小刻みに足をぱたぱたさせながら横に移動した。
同時に高く上げた腕を空に向かってやはり小刻みに、何かを叩くような真似をしていた。
主人公「何それ?」
恋「大きな鯨を切り分けているところだよ」
小説はどうした?
恋はいつでもマイペースだな。
空に浮かんだ大きな鯨を切り分けている親友を横目に、そう言えば昔、空飛ぶ親子の鯨のCMがあったなと思い出す。
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)