読切(脚本)
〇学校の校舎
学生時代の僕は周囲のみんなを笑わせるのが好きだった。
きっと家で両親が喧嘩ばかりしていたせいだと思う。
卒業式が終わるとすぐに手紙を貰った。
同じ部活の一つ後輩の安西さんからだ。
彼女は、ギャグを言っても反応が薄い子だったので、もしかして嫌われているのかも、と思っていた。
安西さん「・・・・・・」
〇男の子の一人部屋
だが手紙には、
「ずっと先輩が好きでした。返事がなかったら諦めます」とあった。
頭が真っ白になった。
〇古い大学
大学の準備の慌ただしさに紛れて結局返事は出さずじまいだった。
でも少し余裕が出てくると、あの手紙を思い出して、返事を書けば良かったと後悔した。
〇渋谷フクラス
人並の学生生活を送り、就職した。
〇空
勉強や仕事に精一杯で恋愛とは無縁だった僕はときどき、安西さんの事を考えた。
〇一人部屋
そして社会人になって3年目の春。突然安西さんからまた手紙が届いた。
〇空
○○先輩へ
お久しぶりです。高校の時はごめんなさい。あんな手紙をいきなり貰ったらびっくりしちゃいましたよね。
でもあの時は私もまだ高校二年で、親友にも背中を押されて思い切って告白しちゃいました。それで吹っ切れて受験に集中出来た。
だから先輩、もし気にしていたら大丈夫ですよ。あれから私も普通に恋愛をしたし(別れちゃったけど)。
〇空
でね、この手紙が先輩に届く頃にはきっと私はこの世にいません。
また驚かせちゃいましたよね。あれからずっと先輩が好きでした。先輩の前だといつも楽しくて笑顔になれて。
でも先輩は誰に対しても優しくて。だから私、独り占めしたくなったんだと思う。ずるいよね。
〇空
今も、最期に先輩に思い出して欲しくて、忘れて欲しくなくて、こんな手紙を書いてるの。
死ぬのは怖いけど、先輩の事を想うと少しマシになる。不思議だよね。
〇空
先輩、来世では両想いになってよね。いつまでも大好きだよ。
〇通学路
高校の時の名簿を取り出して彼女の家に連絡をした。
やはり彼女は亡くなっていた。
〇マンション群
彼女の家に行き、線香を上げ、彼女のお母さんと話をした。
大学を卒業して就職して1年目、すでに助からない病気だとわかったそうだ。
〇土手
僕「どうして僕なんかを・・・」
帰り道、涙が溢れるのを止められず、夜空を見上げた。
安西さん。遅くなってしまったけど・・・
・・・僕と付き合って下さい。
これまでの分もいっぱい笑わせたい。いつも笑っていて欲しい。
もう一度君に会いたいです・・・・・・
〇空
安西さん「やっと返事が貰えた。ありがとう、先輩」
そう言って笑う彼女の声が聞こえた気がした。
読みました~
取っ付きやすいショートショートでしたし、終盤のフワッと舞うエフェクトと、儚げな笑顔が印象的でした!