54面 返心(脚本)
〇体育館の舞台
・・・おめでとう、折中さん
俺は認識するよ
かやく(?)だもんね
──卒業式みたいに、横一列に並んで
九宝さんが折中さんの前に、
折中さんは先生?と一言あり、
ハグまではいかんかあって
九宝さんは神妙な面持ち。
折中さんはまわりの雰囲気に添いつつ、
湿ってはないか。
〇レンタルショップの店内
ツルハシがレンタルショップにいると、
センターが、背の高い若手実業家っぽい
優男と一緒に入ってくる。
ツルハシ(ああ、やっぱりねー そりゃそうでしょ)
ツルハシはさっさと店を出ていく
(かかわらず)
と、センターは彼と別れて
ツルハシを追っていく。
〇街中の道路
ツルハシ(歯の隙間に詰まったもやしひげ)
ツルハシ((指を口の中に入れて つまみ取る、ビローン))
駅ビルの階段下りて
外に出て横断歩道渡ったところで
ツルハシに追いついて
スルーでいいのに
自分からいくなんて、ね
〇風
青風は自信を持っていた
考えてみたら全部『自分のこと』に
自分のことになっていた
今までのことが全部
『自分のつくったこと』になっていた
ちょっと怖いくらい
他の関わる人、先に向かう
青風と同行する者からすると
青風の確信に近い
決断と行動は未知のことだけど
ある種の確信をもって、
すすめていく、こうなるはず。
〇タワーマンション
上野さな「・・・泣き出すと うち、止まんなくなるから」
上野さな「手、痛なるから」
マンションの出入り口のガラス張りを
バンバン平手で一発一発叩き始めるので
間に入り、自分を叩かせると、
胸辺りを少し叩いてから
抱きついてくるので、
そのままこちらも手をまわす
うん、うん・・・
さな、少し太ったかな
全体的にマルッとして、身長も
ちょっと低くなったように感じる
白のワンピース
腰のところを細いベルトでしぼった
わりとフォーマルな格好。
〇タワーマンション
俺がこのマンションの上階の女性に、
会って気持ちを伝えようかというところ
上野さなが出てきたのかな
マンションの内側から。
出入り口、階段登ったところで会って、
上野さな「いってきたらぁ?」
って、京都弁の「あ」の
母音の間のびする、さならしい感じ。
上野さな「気持ち、ため込んでるより その方がええよ、いいんじゃない?」
うん、みんな、疲れてるんだよな
気持ち押し付けにいったって・・・
と思ってると、さながそうなって、
抱きしめる資格なんてないけど
だからギュッとはしないけど
手を後ろに添えるように包んで
(二の腕に触れるくらい、肩の後ろ)
〇撮影スタジオ
──さっきドラマの撮影で会ったけど、
みんな戦隊ものの、6人6色くらいの
ノースリーブに肘隠れるくらいの
手袋したような格好で、
さなは紫のコスチューム着るんだって
ドラマでちゃんと役者としてメインどころ
張れるようになって、えらいな。
さなから話しかけてきてくれたのかな
とにかくそこで二、三会話してくれて
そうやって仕事増えても
変わらず接してくれて
いい子だな、何にもないけど・・・
〇タワーマンション
でも、さなだって大変なんだ
俺はどうしたらいいんだろう
〇勉強机のある部屋
──折中珠未さんから
透明ビニールの封書が届く。
(横長の、真ん中に
宛名シール、中にチラシかな)
ライブイベントがあって、
それに出るのかな?
江藤鉱(あれ?『折中珠未』って名前はともかく 住所と電話番号も書いてある)
江藤鉱((いいの?俺に知られて))
江藤鉱(0044‐・・・)
江藤鉱(04っていうのは 市外局番でいいのかな?)
その番号にかけてみると、
「あ、はい・・・」
男性の40代から
50代くらいの方が電話に出て、
「用件は?」
江藤鉱「あ、あの、イベントのチケットを・・・」
江藤鉱(2回、昼夜であるのかな どっちにしよう、早い方、両方?)
江藤鉱(どっちにしても当日そこに行けば 折中さんに会えるのか)
江藤鉱(待ち伏せとか嫌だけど)
江藤鉱(ていうか送られてきてるんだもんな)
江藤鉱(ライブイベントに参加するんだろうか ソロで歌うのか、バンドかな)
江藤鉱(でも何でこんなの送ってきたのか・・・)
江藤鉱(あ、原稿送ったからか)
江藤鉱(俺の書いた原稿 読んでくれて、そのお返し?)
江藤鉱(折中さんの電話番号書いてあったら)
江藤鉱(しちゃっていいのかな 住所まであったら・・・)
江藤鉱(何か思ってくれたんだろうか 俺の原稿読んで・・・)
江藤鉱(・・・直接電話かけて 会えますかって言ったら)
江藤鉱(「はい」って 言ってくれるんだろうか、折中さん)
〇ライブハウスのステージ
『破滅のセックス』ってタイトルで
バンドメンバーが突然倒れたり
おばあさんが色々
やってくれるけどもう駄目だとか
しんどくなるのは当たり前だよな
精力だって
エネルギーだし、無限じゃない