秘密(脚本)
〇教室
歌がチョキ、丹羽がグーだった。
22 久山 亜悠「ふぅ」
22 久山 亜悠「じゃあ、時間も時間だから明日ねー」
丹羽「うわ、もやもやする」
〇明るいリビング
家に帰り、家族に報告する事になった。
22 久山 亜悠「お父さん、お母さん、ごめんなさい。実は私、いじめられていました」
「え!?」
22 久山 亜悠「で、その・・・・・・お姉ちゃんとお兄ちゃんと一緒に復讐することになったんだけど・・・・・・」
久山 優子「大丈夫。だけど怪我しないでね」
久山 和之「早く言ってくれれば良かったのに」
22 久山 亜悠「ごめんなさい。でも、必ず成功させる」
「分かった」
私には家族に感謝しかない。
私の家族は本当は
いない。
〇白
私が産まれた直後、事故で亡くなった。
祖父母も事故で亡くなったので、
おじの所で暮らしていたが、暴力をふるわれ、家出した。
〇川に架かる橋
その日は雨だった。
雨の中、傘を差さずに走った。
濡れるけど気にせず走った。
とにかく逃げる為。
すると、私は転んでしまった。
上から「大丈夫?」という声が聞こえた。
見上げると優しいそうなおじさんだった。
おじさん「迷子?」
亜悠「・・・・・・違う。家出」
おじさん「おじさんの家に来る?いっぱい美味しいご飯を食べさせてあげるよ」
私は怖く感じた。その人が、誘拐犯だと分かったからだ。
久山 優子「やめなさい。私はこの子の母親」
おじさん「ごめんなさい!悪気は無かった!」
久山 優子「大丈夫?」
亜悠「うん」
久山 優子「お母さんは?」
亜悠「家族・・・・・・いない・・・・・・」
久山 優子「そっか・・・」
久山 和之「優子!」
久山 優子「和之さん!」
久山 和之「えっと・・・・・・その子は?」
久山 優子「家族がいないらしい。誘拐犯に連れて行かれそうになったから・・・・・・一緒にいたの」
久山 和之「そっか。家、来る?」
私は恐怖に満ちた。
また同じ事になるかもしれない・・・・・・そんな思いが頭の中で駆け巡った。
久山 優子「急に言われたら驚いちゃうじゃん」
久山 和之「そうだな」
2人はあははと笑う。
何故か分からないけれど温かさを感じた。
本物の──。
亜悠「あの・・・・・・」
亜悠「家に・・・・・・行きたい・・・・・・です・・・・・・」
私は決意したが、最後は力なく言った。
「いいよ」
私はその場で泣き崩れた。
こんなにも優しい人がいたなんて。
2人は私を抱きしめてくれた。
〇飾りの多い玄関
「ただいまー」
亜悠「お、お邪魔します」
〇明るいリビング
リビングに行くと、怖そうな男の人と、綺麗な女の人がいた。
その2人はびしょびしょな私を見て、怪訝な顔をした。
久山 有也「ほら」
男の人は、わしゃわしゃと頭を拭いてくれた。
亜悠「あ、ありがとうございます・・・・・・」
久山 菜奈恵「はい、着替え。私のだからちょっと大きいけど・・・・・・」
亜悠「ありがとうございます」
久山 菜奈恵「紹介するの忘れたね。こっちは兄の有也で、私は菜奈恵。よろしくね。えっと・・・・・・名前は?」
亜悠「名前は、特にありません。家族、私が産まれた直後、亡くなって・・・・・・名前も分からないんです」
遺品を探しても私関係の物は手がかりになるものは無かった。
久山 菜奈恵「そっか。じゃあ、私達が決めてもいい?」
亜悠「いいんですか!?」
久山 菜奈恵「ええ」
亜悠「ありがとうございます!」
〇明るいリビング
数日後──
久山 菜奈恵「名前!決まったよ!」
そこには大きく“亜悠”と書いてあった。
久山 優子「どうしても菜奈恵が“亜”という漢字を入れたくて・・・・・・ね。嫌だったら他にも考えるけど・・・・・・」
久山 菜奈恵「違う!アジアを漢字で表す時って“亜細亜”って書くじゃん。アジアって6つの州の中で1番広いの」
久山 菜奈恵「だからこの広い世界で争いせずに平和に生きて欲しいという願いで、」
久山 菜奈恵「悠は優しいイメージだから優しい人になって欲しいっていう願いがあるの」
私は名前の由来を聞いて涙が溢れた。
久山 菜奈恵「ごめん、嫌だった?」
亜悠「いや、嬉しいんです」
と私は涙を拭きながら言った。
それは、私にとって宝物であった。