A11番口(脚本)
〇未来の都会
─2122年─
渋谷区渋谷。
高層ビルやエンターテイメント施設が並び、街中にオートモビリティが走り、広場には人々が集う
─渋谷駅A11番口を出た─
???「面白そうな街だなぁ・・・」
〇カラフルな宇宙空間
彼の名はメグル
不思議な2つの力を使い
地球の各地を歩いている
”時空間移動”と”変身”
彼は1歩く毎に72時間分の
時間を”遡る”
コキッ
首をならすと”この姿”に変身する
この姿の彼は1歩く毎に72時間分の
時間を”未来へ進む”
彼は渋谷の街を行く
〇未来の都会
メグル(駅で随分迷ってしまった)
渋谷駅は地下と地上と上空の3層に別れる立体大迷宮
駅から出ることができたメグルは人通りの無い路地を探す。
〇ビルの裏通り
メグル「・・・」
─ぱんっぱんっ─
手を2回叩くと、
歩いたぶんの時間を”遡る”
〇渋谷駅前
─2022年─
メグルは100年の時を遡ってきた。
2122年ほど街には人がおらず、皆がマスクをしている不思議な光景が広がっていた。
メグル(結構戻ったみたいだ。 色んな所で工事をしている)
メグル(駅から少し離れたところに行こう)
〇渋谷の雑踏
駅を起点に、2022 年の渋谷の街を歩くことにしたメグル
〇公園通り
『A6c』を出た
代々木公園に繋がる”公園通り”を進むと
渋谷区役所がある
その向かいに”気になる”場所が
〇中庭
『SHBUYA KITAYA PARK』
メグル(落ち着いててキレイな広場だ)
メグル(あの木目調の建物は・・・ カフェか)
公園内のカフェでコーヒーを買い、外のベンチに腰を掛け、一服する。
メグル(陽が暖かい)
少しくつろぎ
『KITAYA PARK 』を後にした
〇渋谷の雑踏
駅に戻ったメグルは
『A2』に向かった。
〇SHIBUYA109
『A2』を出ると「渋谷109」がある
「文化村通り」の方へ行き
分岐の「松濤文化村ストリート」を進む
〇高級住宅街
進んでいくと
魅力的なギャラリーが並ぶ
『松濤美術館』や緑豊かな『松濤公園』がある
〇山中の川
─松濤公園内─
メグル(なんだろう あの木でできた建物は・・・ カフェ?待合室?)
メグル「!?」
〇清潔なトイレ
メグル(トイレだ)
公園内にある
複数の板で覆われた不思議な建造物は
有名な建築家が手掛けた建造物
『THE TOKYO TOILET 』だった
メグル(トイレだと思わなかったな)
〇渋谷の雑踏
松濤公園を一周し、また渋谷駅へと戻り、『C2』出た
〇ビジネス街
『C2』を出ると
渋谷ストリームがあり
明治通りの向かいに渋谷区警察署がそびえ立っている
渋谷ストリームの下には”渋谷川”が流れている
〇店の入口
川沿の店舗を見ながら歩き、明治通りに出て高架橋を渡り
直進すると、あるものが見えた
〇神社の本殿
─金王八幡宮─
メグル(渋谷にこんな立派な神社があったんだ)
かつて源義朝に仕えた「渋谷金王丸」を祀る神社である──
メグル(参拝していこう)
〇神社の本殿
メグル(二礼二拍手一礼・・・)
ペコ。ペコ。
パンッパンッ・・・
メグル「・・・」
メグル「あっ」
学生A「・・・!?」
学生A「いま見た?」
学生B「え、なにが?」
学生A「い、いま。前で参拝した人が・・・ 消えた・・・」
学生B「何言ってるの。 そんなわけ無いでしょ!」
学生A「でも・・・」
学生B「もう!変なこと言ってないで、お参りして、カヌレ買って、109行って、カフェ行って、SHIBUYA SKY登って~〜!」
学生B「行きたいところいっぱいあるんだから!」
学生A「は、はい・・・」
学生A(気のせいかなぁ・・・)
〇路面電車
メグル(しまった・・・人前でやってしまった)
メグル(また ずいぶん遡ってしまった)
─1922年─
『玉川電鉄線』が
渋谷から渋谷橋まで開通した年である。
メグル(周りには誰もいない・・・)
コキッ
メグル(これ以上過去に戻っちゃうといけない)
メグル(未来への時間を歩こう)
メグルは未来へ戻るため、大正〜昭和の渋谷を歩く
〇田舎駅の改札
─1925年─
メグル「イヌだ。 かわいい」
目に留まったそのイヌは『ハチ』と呼ばれていた
ハチはずっと駅を眺めていた。
メグル「誰かをまってるのかな」
〇田舎駅の改札
─1927年─
メグル「また居る」
ハチ「・・・」
〇田舎駅の改札
─1932年─
メグル(・・・)
メグルはハチを撫でようと試みる。
メグル「よしよし」
メグル「いい子だね」
しばらくハチとたわむれ、駅を後にする
ハチは再び駅の方を見つめはじめた
〇田舎駅の改札
─1935年─
メグル「ハチ。来てないんだ」
ハチの姿は無いが、イヌの銅像が置かれていることにメグルは気づいた。
メグル(・・・)
パンッパンッ
〇大きいデパート
─1951年─
メグル(ロープウェイ?)
渋谷にはかつて『ひばり号』というロープウェイがあった。
しかし、渋谷の急発展により、2年後に廃止されてしまう。
〇渋谷の雑踏
─1964年─
『東京五輪』開催の年
代々木公園でも競技が行われた
渋谷駅周辺もかなり開発が進み
にぎやかな光景が繰り広げられている
パンッパンッ
〇ハチ公前
─2022年─
メグル(やっと戻ってこれた)
メグル(次はどこへ行こうかな)
次の地点へ行くには、
歩いていくか
転送されてきた座標で手を合わせる必要がある
メグルは『A11番口』に戻ることにした
〇広い改札
メグル「あの・・・」
駅員「はーい」
メグル「A11番口に行きたいのですが」
駅員「A11番口ですねぇ〜」
駅員「えぇ〜のじゅういち?」
駅員「えーと」
駅員「あの~”A11番口”ってのは無くてですねぇ」
メグル「・・・」
メグル「わかりました。 ありがとうございました」
駅員「あっ、えっと、大丈夫でしたか?」
メグルはコクリと頷き、窓口を後にする。
駅員(不思議な子だなぁ・・・)
〇渋谷駅前
2022年に
『A11番口』は実在しなかった──
あるとすれば、
1年後なのか10年後なのか。
少なくとも、メグルが最初に渋谷を訪れた2122年には『A11番口』はあった。
メグル「・・・」
メグル「・・・」
メグル「もう少し渋谷を巡ってみようかな・・・」
地方出身で渋谷には縁遠い者ですが、こうして時代背景をみながら、いかに渋谷という場所が日本の代名詞の様な存在になったのか分かったような気がします。
神社で二礼二拍手一拝したところでくすっと笑わせていただきました。時間軸と空間軸との2つの視点から渋谷駅を多面的・多角的・総合的に捉えてある作品で,読み応えがありました。とても面白かったです。
時間軸に沿って街を見続ける本作、とても心温まるもので好きな設定です。ニ礼ニ拍手一礼で転移してしまうのには、驚きながら笑いました。