#9 夢の代償(脚本)
〇応接室
花ノ木結衣「コンビニに行こうと思って、出かけたんだけど・・・」
花ノ木結衣「・・・ずっと誰かがつけているような気がして怖くて」
百瀬哲平「外を確認してくる」
すぐに兄が外に飛び出していった。
花ノ木結衣「ごめんなさい、お仕事中なのに」
生方千尋「とんでもない。怖い思いしたね」
百瀬涼平「ひょっとして早乙女か?」
八神直志「オレもそう思うな」
八神直志「結衣ちゃんに振られて、余計に執着したのかもしれない」
百瀬涼平「だったら、早めに対処しておこう。 ・・・最悪の事態になる前に」
花ノ木結衣「最悪の事態って・・・りょうくん大げさだな」
百瀬涼平「いや、その・・・それぐらい心配なんだ、結衣のことが」
花ノ木結衣「ごめんね、心配かけて」
百瀬涼平「結衣が謝ることじゃないだろ」
その時、ドアが開いて兄が戻ってきた。
百瀬哲平「ダメだ、逃げられた」
生方千尋「見たのか? どんなヤツだった?」
百瀬哲平「40ぐらいの男だ」
百瀬涼平「えっ、早乙女じゃないのか?」
八神直志「早乙女の家、金持ちだからな。 誰か雇ってるのかも」
笹島アリス「女の子の後をつけるのに、そこまでする?」
八神直志「わからないけど・・・何か別の理由があるとか?」
花ノ木結衣「・・・・・・」
俺は不安げな結衣の手を握った。
人の目があることなど、気にならなかった。
百瀬涼平「大丈夫だ。結衣のことは俺が守る」
花ノ木結衣「・・・うん、ありがとう」
誰かを雇ってまで結衣につきまとっているとしたら、結衣の死に早乙女が関わっている可能性が高くなる。
百瀬涼平(早乙女・・・いったい何を考えてるんだ?)
結衣のストーカーについては、兄が調べてくれることになった。
百瀬哲平「これが本職だからな、任せておけ」
生方千尋「結衣ちゃんの身辺も守る必要があるな・・・俺がボディーガードをするよ」
八神直志「え? 生方さんが?」
百瀬哲平「こいつ、こう見えて空手有段者だから」
八神直志「マジ!?」
生方さんはにっこり笑って頷いた。
〇教室
翌日、早乙女の様子を探ろうと思っていたが、最近はあまり学校に来ていないらしい。
八神直志「取り巻き連中に聞いてみたら、学校の成績が落ちたってことで親が休ませて塾に行かせてるらしい」
百瀬涼平「は? それで学校休んで?」
百瀬涼平「普通に学校で真面目に授業受けた方がいいんじゃないのか」
八神直志「金持ちの考えてることはイマイチわからんよな~」
そこへ、結衣が近づいてきた。
花ノ木結衣「りょうくん。 今日お弁当多めに作ってきたんだ」
花ノ木結衣「一緒に食べない?」
結衣が大きめのお弁当箱を掲げ見せた。
魅力的な誘いだったが、休み時間はできれば例の正夢の検証をしておきたい。
百瀬涼平「ごめん、ちょっと八神と話したいことあるから」
花ノ木結衣「そっか」
花ノ木結衣「ん、わかった。じゃあまた今度ね」
そう言って離れて行った結衣を見て、八神が言う。
八神直志「おいおい。ちゃんと後でフォローしとけよ」
八神直志「・・・てか、お前らつき合うことにしたんだよな」
百瀬涼平「な、なんで?」
八神直志「一目瞭然だよ、バカ。・・・良かったな」
百瀬涼平「・・・ああ」
八神直志「絶対に・・・助けよう」
百瀬涼平「もちろんだ」
百瀬涼平(絶対に回避して・・・何の憂いもなく結衣と一緒に過ごすんだ)
チラリと結衣の姿を見ると、ひとりでお弁当を広げて食べ始めていた。
百瀬涼平(わざわざ作ってきてくれたのに、悪かったかな・・・)
〇大きな木のある校舎
アリスとは、次に事務所に行ったタイミングでもう一度一緒に正夢に入り、もっと多くの情報を得ることにした。
結衣と連れ立って校門に向かいながら、あれこれと正夢のシミュレーションする。
花ノ木結衣「・・・りょうくん、りょうくんてば」
百瀬涼平「あ、悪い・・・何?」
花ノ木結衣「・・・りょうくん、調子悪いの?」
百瀬涼平「いや、そんなことはないけど」
そこへ、ボディーガードをかって出てくれた生方さんがやってきた。
生方千尋「お疲れ」
百瀬涼平「生方さん、ありがとうございます。 あの、結衣のことお願いしていいですか?」
生方千尋「え? ああ、それはもちろんいいけど」
花ノ木結衣「・・・りょうくん一緒に帰らないの?」
結衣が引き留めるように俺の腕に触れた。
百瀬涼平「ごめんな」
結衣の顔は見ず、俺はそのまま八神とアリスの待つ屋上へ向かった。
〇学校の屋上
笹島アリス「・・・本当に大丈夫なの?」
ここ数日、何度かアリスと正夢を見ようと試みていたが、それもうまくいかなかった。
俺はいら立ちを募らせたいた。
百瀬涼平「ああ」
笹島アリス「アンタのことじゃない。結衣よ。 最近あんまり一緒にいないみたいだけど」
百瀬涼平「大丈夫だろ。生方さんがいてくれるし」
結衣のことは生方さんが守ってくれているし、ストーカーについては兄が調べてくれている。
今のところすぐに危険が及ぶような状況ではないはずだ。
笹島アリス「・・・涼平って結構鈍い? アンタたちつきあってるんでしょ?」
百瀬涼平「え・・・?」
八神直志「オレも気になってた」
八神直志「結衣ちゃんは事情を知らないわけだし、ちゃんとマメにフォロー入れとかないと」
百瀬涼平「それは・・・」
たしかにここ数日、夢のことばかり気になって結衣とまともに話せていなかった。
八神直志「焦る気持ちはわかるけど、まだ時間はあるんだ」
八神直志「ちょっと落ち着いて結衣ちゃんと過ごす時間も作った方がいい」
百瀬涼平「いや、大丈夫だ。 結衣を助けさえすれば・・・」
百瀬涼平(ちゃんと解決したら、話そう。 その時はきっと笑い話になってるはずだ)
〇雑居ビルの入口
百瀬涼平(今日こそ、ちゃんと正夢を見るぞ。 生方さんの助言ももらって・・・)
探偵事務所に入ろうとドアを開ける。
そこにはアリスと結衣がいた。
緊迫した空気に、なぜか『マズイ』と思った俺は慌ててドアをギリギリまで閉め、隙間からそっと覗いてみた。
〇事務所
花ノ木結衣「最近のりょうくん、ずっと上の空なんだよね」
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