星を焼く

ちゅるちゅるめん

星を焼く(脚本)

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〇車内
  深夜1時頃、私は見知ったばかりの男性と車内にいた
  幼い頃から父から虐待を受けていた。母は家に帰ってこないので、誰にも言えずにいた
  そして今日、ついに父を殺した。何度も何度も包丁で刺した
  ただ罪悪感で死にたくなった。でも怖くて家を飛び出したときにこの人が「俺と死のう」と言ってくれたのだ
  その後彼は私に”ああ”言ったが、その意味がわからないまま彼と逃げ出すことを決めた
奈月「そうか、小夜ちゃんは17歳なんだね」
小夜「はい。奈月さんは27歳でしたよね?お若いんですね」
奈月「ふふ、君ほどじゃないよ」
小夜「あの、何故私と死んでくれるんですか?奈月さんまで死ぬことはないはず」
奈月「・・・僕はただ、人生に疲れてしまった。その時に小夜ちゃんを見つけて、一緒に死にたいと思った」
奈月「──こんなに小さくて幼い身体で、ずっと耐えてきたんだね。でももう、頑張らなくて良いんだよ」
小夜「奈月さん・・・」
  その一言は私の人生全てを肯定するようだった。この人は救われてほしいと思った
奈月「着いたよ」

〇山の展望台
小夜「星が綺麗・・・」
奈月「ね、今夜は特に」
小夜「そういえばあの言葉の意味って・・・」
奈月「犯罪は、普通の人から見たら遠く、てもよく見えるものだ。星も同じ。暗い夜空にあるからこそより輝いて見える」
奈月「暗闇の中で罪に溺れた君は、星のように綺麗だった。僕はそんな君に惚れたんだ」
小夜「奈月さん・・・」
  彼の真っ直ぐな言葉に心臓が跳ねた。
  私の答えも、決まっていた
小夜「私も、奈月さんが好きです。あなたと一緒に死にたい。奈月さんはこんな傷だらけの私を愛してくれる。すごく、嬉しい」
奈月「・・・小夜ちゃん」
奈月「抱き締めて、良い?」
  私は小さく頷いた

〇宇宙空間
「ようやく見つけた。小夜、僕だけの小さくて静かな美しい夜」
「奈月さん・・・私を照らす、大きくて暖かな優しい月」
  奈月さんの強い鼓動と、血の巡る暖かさを全身に感じた
「生まれ変わったら、夜空で君とずっと一緒にいるよ」
「私もあなたとずっと、この世の終わりまで一緒にいる」
  暫く見つめあった後、そっと口付けをした
  誰にも渡すはずのなかった、ファーストキス

〇車内
奈月「この薬を飲めばすぐ眠れるから」
小夜「ありがとう」
小夜「・・・おやすみなさい、奈月さん。愛してる」
奈月「おやすみ。僕も愛してるよ、小夜」
  眠る前の子供にするような、軽い口づけを額に落とされた
  私はそのまま眠りについた
  奈月はガムテープで窓や扉の縁を塞いでいき、小夜にかからないよう油を車内に撒いた

〇車内
  炎は2人を、優しく包み込んだ

〇車内
  その後、2人の男女の焼死体が駆けつけた消防隊により見つかった
  2人の遺体は手を結び、幸せそうに寄り添っていた

コメント

  • ペンネームにそぐわない凄い話ですね!!
    切ない美しい話というより、何だかオンタイムのリアルな話に感じました。
    「星を焼く」「罪に溺れた君は、星のように綺麗」など言葉に力があります。
    文章力とてもありますよ!! 曲はもう少し掛けても良かったですね😃
    作者コメントでも、これを選んだ人が辛い人生送ってないかと思いやれる余裕が凄い。
    中学生さんに励まされるとは思いませんでした💦 がんばりましょう💪

  • タイトルの「焼く」の意味が分かって愕然としました……。😨
    他に方法が無かったのか。悔やまれます。

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