〇渋谷の雑踏
　　ここ数ヵ月、渋谷では様々な事件が頻繁に発生するようになった
　　治安が悪くなっただけだという見解が大半を占める中、そこに疑問を抱いている男がいた
　　それが、フリーライターの後藤直道である

〇店の事務室
　　後藤は頻繁に事件が発生するようになってからの容疑者に共通点がないか調べていた
後藤直道「共通点はほとんどないな・・・渋谷の治安が本当にただ悪くなってきただけか？」
三咲静香「きっとそうですよ！深く考え過ぎですって」
三咲静香「そんな事よりもっとお金になりそうな仕事探しましょうよー！」
後藤直道「金の匂いがしたんだけどなぁ・・・」
三咲静香「あっ、メール」
三咲静香「・・・えっ」
三咲静香「後藤さん！これ読んでください！」
後藤直道「ん？」
　　件名：渋谷の事件について
　　
　　容疑者の共通点を見つけました
　　
　　それは──・・・
後藤直道「・・・なんだって!?」
後藤直道「三咲、行くぞ！」
三咲静香「えっ？あっ、はい！」

〇渋谷のスクランブル交差点
　　渋谷スクランブル交差点
　　メールによると容疑者の共通点は毎日スクランブル交差点のモニターを見ていた人らしい
後藤直道「毎日ここを通ってモニターを見ていると事件を起こす──」
後藤直道「って、そんな事あるか？」
三咲静香「来てからそれ言います!?」
三咲静香「匿名のメールなのに疑いもせず・・・」
後藤直道「でもまぁ何かあるかもしれないし」
　　後藤は視界に入っていたモニターに微かな違和感を感じた
後藤直道「ん？なんだ今の？」
三咲静香「どうかしました？」
　　後藤はモニターを見つめる

〇渋谷のスクランブル交差点
　　しばらくモニターを眺め続けた
後藤直道「・・・あっ、一瞬何か見えた！」
三咲静香「えっ!?」
後藤直道「まさか・・・」

〇渋谷のスクランブル交差点
後藤直道「サブリミナル効果か・・・？」
三咲静香「サブリミナル効果？」
後藤直道「潜在意識に影響を与えようとするそういう方法があるんだけど」
三咲静香「・・・どういう事ですか？」
後藤直道「そうだな・・・」
後藤直道「例えば、三咲が観に行った映画の中にコーラが一瞬だけ映る映像があったとしよう」
後藤直道「しかもそれが定期的に何回もだ」
三咲静香「何ですかその映画・・・」
後藤直道「だから例えばの話だって」
後藤直道「三咲はコーラが何回も映ってる事なんて気付かずに映画を観てたとしても」
後藤直道「映画を観終わった頃、無意識にコーラが飲みたい気分になっているんだよ」
三咲静香「えっ、それ怖くないですか？洗脳みたいで」
後藤直道「まぁ・・・実際にそんな影響があるのかは立証されてないらしいんだけどさ」
三咲静香「それがここのモニターで使われてるんですか!?」
後藤直道「どうだろ？一瞬だったし、俺の勘違いかもしれないけど」
三咲静香「もしかしてそこに事件を多発させている原因があったりして？」
後藤直道「かもな！モニターを録画して確認してみるか」
三咲静香「はい！カメラ準備しますね」
？？？「・・・」
　　二人の行動を監視していた人物が不敵な笑みを浮かべた

〇渋谷のスクランブル交差点
三咲静香「準備完了！」
後藤直道「よしっ、録画開始」

〇渋谷のスクランブル交差点
　　モニターの録画を開始した

〇店の事務室
　　録画が終わり事務所へ戻る
後藤直道「よしっ、見てみよう」
三咲静香「いきまーす」
　　何かが映るのを待つ二人
後藤直道「あっ！そこ！」
三咲静香「はいっ！戻してスロー再生しますね」
後藤直道「・・・」
後藤直道「ここだ！」
　　一瞬だけ映るカットで動画を停止させた
後藤直道「これは・・・」
三咲静香「なんですかこれ・・・」
　　そこには五文字のひらがなが映っていた

〇白
　　またきてね

〇店の事務室
後藤直道「それだけかよ!!」
三咲静香「もー！何なんですかこれ！」
三咲静香「事件とは何も関係なさそうですよ・・・」
　　無表情でじーっと見つめる三咲
三咲静香「これをどうやって記事にするんですかぁ～？」
後藤直道「えっ!?あっ・・・」
後藤直道「ん～」
後藤直道「あっそうか！これをそのまま記事にすればいいんじゃないか?!」
後藤直道「あのモニターにこんな仕掛けがあったなんてけっこう話題になりそうじゃない？」
三咲静香「あぁ、確かに・・・」
三咲静香「良いかもしれませんね！」
後藤直道「よし！早速書くわ」
三咲静香「お願いします！コーヒー入れますね」
後藤直道「サンキュー！」
　　そして、後藤はスクランブル交差点の大型モニターに映る『またきてね』
　　その仕掛けに関しての記事を作成し公開した

〇渋谷の雑踏
　　記事公開から数日後
　　その記事が話題となり普段より多くの通行人がモニターを意識するようになった
「あっ見えたかも！」
「読めないけど『またきてね』なんでしょ？」
「またきまーす！」
「もう洗脳されてるよっ！」
　　サブリミナル効果のお陰かスクランブル交差点の利用者の数も増えていった

〇渋谷のスクランブル交差点
　　そんな通行人を眺める人物がいる
？？？「作戦は成功した。モニターを見ている人数が何倍にも増えている」
？？？「フェイクは残したまま、またアレを差し込んでくれ」
電話の相手「了解」

〇渋谷の雑踏
　　その後、渋谷では様々な事件がさらに多発するようになっていた。そして──
　　未だに疑問を抱えている男がいた。

〇店の事務室
　　フリーライターの後藤直道だ
後藤直道「ずっと考えてたんだけどさ」
三咲静香「なんですか？」
後藤直道「あのメールの送り主はモニターの仕掛けの事を知ってたのかな？」
三咲静香「どうなんでしょうね？」
三咲静香「もしも知ってたとしたら？」
後藤直道「知ってたとしたら・・・」
後藤直道「あっ・・・そうか、そういう事か！」
三咲静香「えっ？」
後藤直道「俺はあの記事を書くために利用されたんだ」
三咲静香「どういう事ですか？」
後藤直道「渋谷に人を集める手伝いをさせられてたって事だよ」
三咲静香「まさかあのモニターを見る人数を増やす為に？何でそんな事を・・・」
後藤直道「理由は分からないけど──」
後藤直道「やっぱりあのモニターには何かあるって事さ」
後藤直道（金の匂いがプンプンするぜ）

〇渋谷の雑踏
　　渋谷スクランブル交差点 ライブカメラ
　　『またきてね』ってやつ知ってる？
　　なにそれ？
　　またきてねってモニターに一瞬だけ映るらしいよ
　　マジか！見てみたいな
　　じゃあ見つけてスクショしてあげるよ
　　おお！楽しみ
　　ちょっと待ってね・・・
　　うん

〇渋谷の雑踏
　　あっ・・・あったよ。でもこれ違う・・・『またきてね』じゃない
　　えっ？何なに!?
　　これ・・・ヤばｲやtか喪
　　何が映ったの？
　　死#？ゾ◎&@□れ×邏▲