第2話☆この光が消えても~雪とイルミネーション物語③(脚本)
〇イルミネーションのある通り
彼「どれがいい?」
私「突然、何?」
彼「光、必要だろ」
私「えっ?」
彼「バイトが長引いたからさ・・・」
バイトが長引き、イルミネーションが点灯している時間に間に合わないと考え
思いついたのがイルミネーションが
消灯してしまったこの場所を
ライトで照らす作戦だったらしい。
バイトしているお店のすぐ近くにある100円ショップで
色んなライトを購入してきていた。
ツリー用の白いイルミネーションライト、それのカラフルバージョン
星の形したやつ、懐中電灯・・・
自撮り用のライトまでも。その数10個!
私「あっ、これがいい」
〇白
雪だるまの中にライトが入っていて、スイッチを押すと
ピカっとうっすら光る物を選び、手に取った。
〇イルミネーションのある通り
彼「やっぱりこれか。これ、最初にカゴに入れたんだ」
彼「でも光の量が足りないかなって思って」
彼「後から明るく光るやつ、どんどんカゴに入れていったらこんなに沢山になった」
私「そんなに買わなくても・・・」
私「むしろ連絡して欲しかったです」
彼「・・・ごめん」
私「今日の事もだけど」
私「考えてること、きちんと言葉にして私に伝えてください!」
私「もう、全部伝えて欲しい!」
私は、普段彼には見せないムスッとした顔をして
前から言いたかった事を言った。
彼「・・・」
彼「別れたくないってずっと考えてた」
予想外の言葉──。
私「・・・」
彼「光らせてみよっか」
彼は明るめの口調でそう言い空気を変えると
ライトと一緒に買ってきてくれた電池を雪だるまに入れてスイッチをONにした。
イルミネーションは消えてしまったけれど
雪明かりと雪だるまのふわっとしたあかりで
ほんのちょこっとだけどモニュメントの中は明るくなった
私「雪だるま持ちながらだと、両手繋げないな」
いきなり彼は、力強く抱きしめてきた。
彼「こうすればもっと仲良くいられるとおもう」
彼「ってか、約束守れなくて本当ごめん」
付き合ってから初めて彼から抱きしめてくれた。
いつもはこっちからだったから。
彼の体温がひしひしと伝わってくる。
大きな身体が私を包み込んでくれている。
その温もりは寒さを忘れる程、暖かい──
〇氷
空から落ちてきた雪は粉砂糖のように甘そうな味で
大好きなバニラの香りがしそうだった。
〇繁華な通り
その後、もう遅いからと私をタクシーに乗せ
タクシー代とバイト先で貰ったらしいケーキを座った私の膝の上に乗せて
彼は私を見送ってくれた。
少ない時間だったけど
心が暖かくて、とても満たされたクリスマスだった。
〇幻想
「もし10年後、僕たちがまだ仲良ければ
今度は点灯している時に来て手を繋ぎたい」
「イルミネーション、その時もやってた
ら良いよね。
ってか来年で良くない?」
「10年後が良いんだ。
それまでに、きちんとした大人になるから」
彼は私を見送る時、笑顔でそう言っていた。