プロフェティック・ドリーム

坂道月兎

#6 アリスを救え(脚本)

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〇教室
百瀬涼平(これは・・・夢だな)
  携帯で日時を確認する。三日後の昼休みだ。
  目の前には八神。
  結衣は友達とお弁当を広げていたが、アリスの姿は見当たらない。
百瀬涼平「なあ、八神。アリスはどうした?」
八神直志「あいつは来てない。 メッセージも既読スルーだ」
百瀬涼平「なんで? 体調でも崩してるのか?」
八神直志「いや・・・教室でもずっと孤立してたからな・・・」
八神直志「女子に聞いてみたんだけど、アリスの評判サイアク」
八神直志「オレのせいもあるけど」
百瀬涼平「え? なんで?」
八神直志「ほら、お前と恋人認定されないように、オレも結構アリスと一緒にいただろ?」
  女子に絶大な人気を誇る八神が、女子とはまったくしゃべらない美少女と仲がいい。
  女子から反感を買うのには十分な理由だ。
百瀬涼平「・・・俺、自分のことばっかでアリスのこと、何も考えてなかった」
八神直志「けど、今はオレらが動けば動くほど、アリスの立場が悪くなるぞ」
百瀬涼平「・・・じゃあ、どうすれば・・・!?」
  その時、ガラリとドアが開く。
数学教師「クラス委員!」
数学教師「笹島の机に置いてあるもの、まとめて職員室に持ってこい」
八神直志「先生、笹島さん、どうかしたんですか?」
数学教師「退学すると言ってきた」
数学教師「ったく、転校してきたばっかりだってのに、面倒なことを・・・」
百瀬涼平「・・・!?」

〇男の子の一人部屋
  俺は飛び起きた。アリスが・・・退学!?
  俺がアリスと恋人認定されることを避けるため行動したことで、アリスにとって悪い結果が訪れてしまったのだ。
  俺にふりかかる災いは払えても、その災いを他の誰かが別の形で被ることになるなら意味はない。
百瀬涼平(このままじゃ、駄目だ・・・まだ間に合うはずだ)
  アリスが学校を去ってしまう前に、なんとかしなければ。

〇教室
  翌日。授業が始まってもアリスは登校してこなかった。
  正夢のことを話しておいた八神も気がかりなようでチラチラと俺に目配せしてきていた。
百瀬涼平「メッセージ送ってみたけど、反応ナシだな・・・」
八神直志「とにかく、アリスの様子を見に行ってみよう・・・学校のやつらにはバレないように」
百瀬涼平「ああ・・・」
花ノ木結衣「りょうくん」
百瀬涼平「どうした、結衣?」
花ノ木結衣「・・・笹島さんの家に行くんだよね?」
八神直志「ああ。 メッセージにも反応ないし、心配だからさ」
花ノ木結衣「私も・・・行っていいかな?」
百瀬涼平「え・・・」
  結衣を紹介するのを嫌がったアリスの姿を思い出す。
八神直志「ああ、一緒に行こう」
百瀬涼平「え!? 八神!」
  八神は小声で耳打ちしてくる。
八神直志「行動を変えたほうがいいだろ」
八神直志「普通に行動してたら、アリスも嫌がってたし断るところだ」
八神直志「けど今はあえて逆の方法を選ぼう」
百瀬涼平「・・・・・・」
  八神の言う通りだ。
  普通に対応してしまったら、未来を変えることはできない。
  それに、結衣が誰かに意地悪したり、悪口を言っているような場面は見たことがない。
  アリスの能力を知っても、怖がったり気味悪がったりするようなことはないだろう。
百瀬涼平「そうだな・・・一緒に行こう」
  結衣は笑って頷いた。

〇一戸建て
八神直志「出てこないな・・・」
百瀬涼平「出かけてるのかな」
八神直志「あいつは自分の能力を嫌がってるんだから、こういう時外に出たりはしないだろ」
  何度かメッセージを送ったが、返信はない。
  すると──
花ノ木結衣「笹島さーん! アリスちゃん!!」
  結衣が家に向かって大声で叫んだのだ。
百瀬涼平「ちょ、結衣」
花ノ木結衣「クラスメイトの花ノ木です! ちょっとだけお話しさせてー!!」
  結衣の高い声が、家の中まで聞こえたらしい。
  ガラっと二階の窓が開いた。
笹島アリス「ウルサイ」
花ノ木結衣「あ、アリスちゃん!」
花ノ木結衣「こんにちは、クラスメイトの花ノ木結衣です」
笹島アリス「・・・・・・」

〇一戸建て
  無邪気な結衣に毒気を抜かれたのか、アリスは黙って玄関のドアを開けた。
花ノ木結衣「ねえ、アリスちゃん」
花ノ木結衣「近くに美味しいタピオカ屋さんがあるの。 一緒に行かない?」
  結衣の勢いに、うまく断る術がなかったようで、アリスはしぶしぶ頷いた。
笹島アリス「・・・いいけど」
  アリスのぎこちない返事も気にせず、結衣はにっこりと笑った。

〇公園のベンチ
  結衣が皆の分を注文してくれている間に、アリスが口を開いた。
笹島アリス「・・・あの子に何も話してないんだ」
八神直志「話すわけないだろ」
百瀬涼平「なんで学校に来ないんだ?」
笹島アリス「・・・皆私のことをウザがってる」
笹島アリス「来なきゃいい、いなくなればいい・・・そんな感情ばっかり聞こえてくる」
笹島アリス「もう疲れた」
百瀬涼平「・・・・・・」
笹島アリス「この上能力のことまでバレたら・・・やってけないでしょ」
  想像しただけでもゾッとする。
  アリスはこれまでもずっと、そんな状況に耐えてきたのだろうか。
花ノ木結衣「お待たせ、アリスちゃん。 りょうくんと八神くんも、どうぞ~」
  結衣は飲み物を配ると、自然にアリスの隣に腰掛けた。
花ノ木結衣「どう? おいしい?」
  アリスは結衣をじっと見ていた。
笹島アリス「・・・あなた、変わってる」
花ノ木結衣「そう? そうかなあ」
笹島アリス「私と・・・仲良くなりたいの?」
花ノ木結衣「すごい! なんでわかったの?」
花ノ木結衣「私の考えてることごわかるなんて、アリスちゃんってエスパー!?」
  ニコニコ笑いながら言う結衣は無邪気で、つられるようにアリスの表情がゆるんだ気がした。
笹島アリス「・・・そうだって言ったらどうする?」
花ノ木結衣「えっ、ほんとにエスパーなの?」
笹島アリス「・・・うん。人の心が読める」
花ノ木結衣「・・・かっこいい」
笹島アリス「・・・え?」

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