あの日から変わらないもの(脚本)
〇水の中
冬の訪れ──
晴れた空、光る星たち
俺は帰り道、歩きながら空を見つめていた
主人公「また、この季節がきたか── 今日は見えるかな、一番星」
子供のように一番星をさがす好奇心と、大人になってしまった自分が入り乱れて複雑な思いとなっていく──
主人公「分かってるよ。もういないことなんて──」
誰に言うわけでもなく、微かに放った言葉は白い吐息とともに消えていった
初めて好きになった人。
幼馴染みで、『みっちゃん』だということしか覚えていない。
あの頃は、全てがキラキラして見えた。
ほんの日常さえも毎日が楽しかった。
主人公「みっちゃん、可愛かったなぁ・・・」
あまりにも昔のことだから、思い出が美化されている部分も多々あるはずだ。
それでも俺はあの日の出来事を忘れない。
主人公「『私、お嫁さんになる!』だっけ・・・」
いつも幼稚園では、人見知りで独りだった。
誰かと遊ぶわけでもなく、黙々と砂場で遊ぶ俺。
みっちゃん「一緒に遊ぼうよ!」
そう言って唯一、俺を遊びに誘ってくれたのが『みっちゃん』だった。
主人公「仲良くなったら、すぐ『お嫁さんになる!』だもんなぁ・・・ドキドキしたなぁ」
照れて赤くなる顔を必死に隠し、そっけないふりもしたような気がする。
主人公「あのとき、ちゃんと思いを伝えておければなにかが変わったのかな──」
幼かった自分を責める。
そうすることでしか、気持ちは晴れなかった。
みっちゃん「私、引っ越すことになっちゃったの」
みっちゃん「もう会えないってママに言われたの。 でも絶対お嫁さんになるからね!」
よくある話だろう、一期一会ってやつだ。
だけど、俺の心から離れないあの笑顔とあの言葉。
主人公「俺はいつまで思い続けるんだろう・・・」
もう会えないことなんて分かっているのに、それでも俺は空を見上げる度に探していた。
手が届かない一番星に、思いを込めて願う
主人公「どうか、彼女が元気で幸せな生活を送っていますように ──」
そしてまた、寒空の下を歩みを始めた。